ゴジラ7・5‐追憶‐




――こいつ、こんな目だったか?
いや、あの時も確か・・・



永次は静かに、七年前の事を思い出していた。
そう、息子が家を飛び出した日の事を。






『まだジャーナリストになるとか夢見てんのか。そんなくだらない事を考えているなら、俺の言う通りに働け!』
『・・・嫌だって言ったら?』
『お前、最近また反抗的になったな?遅れて来た反抗期か?出来の悪い癖に、生意気な事は考えやがって・・・』
『ああそうさ、俺は出来の悪い息子さ。だったらそんな奴、いない方がいいよな?』
『何を言いたい?』
『俺は夢を追う・・・親父が何を言っても、何度殴られても!俺は、親父の敷いたレールになんか乗らない・・・俺は、俺なんだッ!!』






――そうだ、あの時の目と似ている・・・


「永次さん、昔から貴方は物事が上手くいかないと腹を立てる人だった。けれど哲平が産まれた時、貴方は『きっとこいつは俺思いの息子になる、俺もそう思われる父親になる』、って言っていたわ。けれど時が経つにつれて、貴方はそれを忘れてしまっていたんじゃない・・・?」
「・・・」
「親父、今になって思うんだ。俺が一番欲しかったものは自由じゃない、親父が俺を認めてくれるっていう、実感だったんだ。親父が親父である様に、俺は俺なんだ。
頼む、一度だけでいい。俺のわがままを聞いてくれ。俺はまだ、夢を追っていたいんだ・・・!」



そう言うと志真は丁寧に正座し、永次へ向かって深々と頭を下げた。
この光景もまた永次が見た事の無いものであり、永次は混乱を隠せなかった。



「永次さん。もう意地を張るのはやめて、正直になりましょ。」



永次の心に突き刺さる、妻と息子・・・哲平の言葉。
永次はしばらくの間顔を下げていたが、ポケットから新しい煙草を取り出して火を付けると、小さくこう言った。



「・・・勝手にしろ。このバカ息子。」
「親父・・・!」



心の底から最も欲しかった言葉を聞き、頭を上げる志真。
その瞳は濡れ、頬には一筋の涙が伝っていた。



「その代わり・・・たまには連絡してこい。お前が馬鹿やらないか、不安だからな・・・」
「ああ、分かってる。」



志真と永次は両方+の磁石の様に顔を背けあっていたが、2人の顔はとてもすがすがしい顔をしていた。
蟠りと言う鎖から解放された、楽な表情だ。
そしてそれを目の当たりにする恵の表情も、朗らかとしていた。



――何年掛かったか分からないけど、やっと本当の家族が帰って来たのね・・・
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