ゴジラ7・5‐追憶‐







その頃、志真宅では実の親子が久しい対面を果たしていた。
が、その雰囲気はとても感動の対面とは言えず、むしろ若干険悪な感じすら漂っている。



「ねぇあなた、しばらく見ない内に哲平もすっかり大きく・・・」



と、その時志真が立ち上がったと同時に永次が志真の頬を平手で強く叩いた。
倒れるまではいかなかったが、その一発で志真は体勢を崩す。



「なっ、何て事するの!哲平は忙しい中、わざわざ帰って来てくれたのよ!」
「勝手に出ていった奴の事なんぞ知るか。」
「・・・そうだよな。自分の思い通りにならない奴なんて、いらないよな・・・」



志真はそう言いながら体を起こし、永次を見る。



「もう!久々の対面なのに何でそんな事しか言えないの!」
「お袋、心配しなくても俺は親父と殴り合いする為に帰ってきたんじゃない。ちょっと話したい事があったから帰って来たんだ。」
「ふん・・・」



蒸かしていた煙草を机の灰皿に起き、永次は座布団に座った。
その右横に恵が座り、志真と永次が顔を向け合う恰好となった。



「それで、何を言いに帰ってきた。」
「俺、この家飛び出した後、ずっと夢だったジャーナリストを目指して頑張ってた。一回落ちたけど、何とか入りたかった日東新聞に入れて、最初はよく上司に怒られたりしながら少しずつジャーナリストの勉強してた。それで今やっと夢が叶ったと思えて、それを報告する為に帰って来た。俺を叱ってくれた上司には本当に感謝してるし、どうやって知ったか分からないけど、こっそり俺に仕送りしてくれたお袋にも感謝してる。」
「哲平、貴方知らないかもしれないけど最近意外と有名人よ?」
「えっ、やっぱり?半年前もあんな事やっちゃったしな・・・」
「永次さんも見てたわよねぇ、哲平がテレビで喋ってたの!もう、本当に凛々しくなっちゃって、感動しちゃったわぁ~。」
「あんな未成年の主張もどきがな。」



恵が興奮しながら半年前の全世界一斉放送を話す一方で、永次は固い表情を崩さない。



「未成年の主張、か・・・あれ、俺の魂の叫びだったんだけどな。」
「くだらん。あんなので気取ってんなら、とっとと止めて俺の・・・」
「いつもそうだ。親父はいつも自分の言う事だけ従ってればいいって言って、俺の言葉なんて聞いてなかった・・・」
「当然だ。昔から半端者だったお前を、誰が構ってやったと思ってる。」
「自分好みにか?」
「何だと・・・?」
「小さい頃から俺はずっとあんたに縛られてた。ああするな、こうしろ。お前はこれだけしてればいい、って。だけど俺は、あんたの操り人形じゃない!俺は自由が欲しかった。だから俺は、家を出た!」
「知らんな、そんな事。子供ってのは、自分を産んでくれた親に従順なのが当たり前だ。そんな親への感謝の心も忘れた子供が、偉そうに言うな!」
「産んだのは厳密には腹痛めたお袋だろ・・・あんたは親の振りしたただの独裁者だったろ・・・」
「お前・・・!次舐めた口聞いたら、ただじゃ済まさないぞ!」
「やめてあなた!自分の子なのよ!哲平ももう・・・」
「そうだ、俺はお袋とあんたの子供だ・・・俺は、俺なんだッ!!」



志真は怒りのあまり、机に手を叩き付けて永次を牽制した。
志真に顔を向けず、志真の言葉に何の興味を示さなかった永次が、初めて志真を見た。
志真の目は永次が見た事が無い程に鋭く、威圧感のある目をしていた。
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