ゴジラ‐世紀の大怪獣‐






その日の夕方、仮眠室では志真が寝言を言いながら相変わらず眠りについていた。



「うーん・・・これじゃあ日進月歩じゃ無くて月進年歩だって・・・」



と、その時浜が仮眠室に来たかと思うと、部屋中に響くくらい大きな声で叫んだ。



「志真さーん!島に着きましたー!」
「・・・うーん、着いたか・・・」



志真は目を覚まし、一伸びすると浜と共に仮眠室を出た。
頭を抱えつつ志真は船の出入り口に向かうと、そこでは隊員が雨具の合羽の様な黄色い服を着込んでいる所だった。



「浜さん、あれは?」
「放射能避けの服です。志真さんも着て下さい。」
「はい・・・」



志真は素早く服を着ると、隊員達と船を出る。



「・・・これは・・・!」



彼の目に飛込んで来たのは、まさに焦土と化した神島の姿だった。
今まで写真でしか見た事の無い光景に、志真はただ唖然とするしか出来ない。



――・・・原爆でも、落ちたのか・・・?


「・・・はっ、こうしてる場合じゃない。早く取材取材・・・」



慌てて周りを見渡す志真。
何処も多くの隊員達が放射能測定機を使い、放射能濃度を測定している。
志真は早速、1人の隊員に話しかけた。



「どうも。放射能の濃度はどうですか?」
「はい、凄いですよ・・・約6000Sv。」
「6000Sv!?」
「ええ。これを着ていなければ、間違い無く死亡します。」
「そうですか・・・それは恐ろしい・・・」
「今の世界はまだ睨み合いを続けている状態ですが、一度やる気になればこんな光景、簡単に作れるのかもしれませんね・・・」
「・・・そう思います。」





やがて志真は浜と合流し、島の奥に向かった。
相変わらず辺りは焦土で、木々は数十本程立っているのみだ。



「ここも以前は緑溢れる所だったと聞きます。」
「なんだか、信じられないですね・・・」
「同感です・・・あと、この先に『手炎山』と言う山があったそうですが、その山すら全く見えませんね・・・」


――山が無くなるなんて・・・これから、核戦争でも起こるのか?



更に10分程歩いていると、大きく開けた所に出た。
しかし、よく周りを見てみると鉄柱の様な物がいくつか立っている。
浜はすかさず腕のポケットから折り畳まれた島の地図を取りだし、位置を確認した。



「えっと・・・ここは、手炎山のふもとです。」
「ここが!?」
「はい。確かに・・・」



2人は早速辺りの調査を始めたが、浜が放射能測定機の電源を入れた瞬間、測定機が煙を上げて壊れた。



「うわっ・・・!」
「ど、どうしました!?」
「ここの放射能を測定しようとして測定機の電源を入れたのですが、その瞬間測定不能で壊れました・・・」
「測定不能・・・?」
「この測定器は10000Svまで測定できます。つまり、それほど強力な放射能がここに充満していると言う事です。」


――・・・核じゃない。
絶対、ここで何かが起こったんだ・・・
よく見ると、ここは何か施設があったみたいにも見えるし・・・



何か確証を掴んだ志真は浜から少し離れ、再び辺りを調査し始めた。



「こういうのを見ていると、何だかチェルノブイリやスリーマイルの原発事故を思い出して・・・志真さん?」



浜は志真に問掛けてみたが、何故か志真から返事は来なかった。



「志真さん、聞いてます?」



再び問掛けてみるも、やはり返事は無い。
三度呼びかけようとしたその時、遠くの方で地面にうずくまる志真の姿を見つけた。



「何だ志真さん、そんな所に・・・どうしたのですか?」
「あぁ、浜さん。これを見つけたんですよ。」



ようやく浜に気付いた志真は、手に持った冊子を浜に見せる。
今にも崩れ落ちそうな、黒焦げた冊子だ。



「冊子、みたいですね・・・」
「僕はここをなんとなく研究所の跡地と考えているのですが、だとするとこれは研究所の資料ではないかと・・・」
「・・・それは重要な資料じゃないですか!流石はジャーナリスト!」
「いやぁ、まだ新人ですって・・・」



志真は顔を赤らめ、頭を掻いた。
口ではそう言っているが、どうやら満更でも無いらしい。



「・・・んっ、何か英語で書いてありますね。」
「・・・すみません、英語はどうも分からなくて・・・」
「少し読みにくいですが、読んでみますね。えっと・・・Godzilla・・・project・・・」
「『ゴジラプロジェクト』?」
「・・・何でしょう?」
「うーん・・・何を指しているのか、全く分かりませんね・・・」
「しかし、これは重要ですよ。もうこの辺りには特に何も無さそうですし。さて、そろそろ帰る時間ですね。」
「はい。」





浜は冊子を放射線避けケースにしまうと、志真と共にその場を後にした。
その道中、浜が志真にある話を切り出した。



「あっ、そういえば志真さんに一つ言っておく事がありました。」
「何ですか?」
「その取材用具ですが、しばらくこちらで預からせて頂きます。」
「え、ええっ!?」



志真は大声を出して驚いた理由、それは昨日デスクから現場で発見した証拠一式も提出するように・・・と言われていたからだ。



「一応、放射能汚染もありますので・・・」
「・・・そうですか・・・」


――・・・はぁ。
こりゃ、この事を記事にするのにも時間がかかりそうだなぁ・・・



それから30分、1人落胆する志真を乗せてあかつきは神島を去った。
もうじき、日が暮れる所であった。
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