ゴジラ7‐来襲・宇宙超怪獣‐
同じ頃、キングギドラが引力吸収を止めた事により月は再び引力を取り出し、少しずつ地球から離れつつあった。
地球の天文台でもその動きは観察されており、世界中の人々は希望に沸いた。
その一方で、月のある岩の中では悲しみに暮れる存在がいた。
ギュウウウウン・・・
そう、チャイルドだ。
キングギドラに連れ去られたチャイルドは上に見える空洞からこの岩の中に落とされ、閉じ込められていた。
この岩はちょうどインファント島の広場と構造が似ており、唯一の出入口である上からしか出られないようになっている「天然の牢獄」だった。
チャイルドもただ閉じ込められているだけではなく、何度も牢獄から出ようと試みたが、跳んでみても空洞には届かず、いくら岩壁を叩いても壊れず仕舞いだ。
ギュウウウ・・・
岩壁にもたれ、自分の力の無さを悔やむチャイルド。
今まで暮らしていた地球と何か違う、こんな知らない所にまでゴジラは助けに来ない・・・
そんな事はチャイルドにも分かっていたが、数日経つと体の衰弱と共にゴジラがいないこの状況への不安に何度も襲われ、その度に心を痛めていた。
・・・オオオン・・・
と、その時少し遠い所から爆発が起こったのをチャイルドは感じた。
それまで何度か地震が起こっているのは分かったが、自分を連れ去った怪獣が暴れているのだろうとしか感じていなかった。
しかし、今回は違った。
爆発の前に、心の底で待ち望んでいた、あの声が聞こえた気がしたのだ。
ギュオオオオン・・・
意を決したチャイルドは立ち上がり、その小さな背鰭を白く光らせる。
この岩壁を壊せるのは、熱線しかない。
チャイルドは口を開き、熱線を吐こうとしたが、出てくるのは熱線ではなく煙であった。
それでも諦めず、チャイルドは何度も熱線を出そうと頑張った。
だが、それでも熱線が出る事はなかった。
ギュウウウ・・・
目を瞑り、頭を抱えて涙を流すチャイルド。
それまでゴジラの様に熱線が出せない事へのコンプレックスは痛いくらいに感じていたが、今ほど自分を情けなく感じた事はない。
そして頭の中を駆け巡るのは、ゴジラとの思い出。
いつでも自分を心配し、自分を守り、自分を思ってくれたゴジラ。
そんなゴジラに、何も出来ない事がチャイルドは悔しくてたまらなかった。
その思いはチャイルドの体内に流れ、力となって一点に集まり、小さな背鰭を青く光らせた。
チャイルドの口内に青い炎が溢れ、待ちわびていた「力」が使えるようになった事をはっきりと理解したチャイルドは丸めた背中を凛とさせ、眼前の岩壁に向かって口を広げた。
シュピイイイイ・・・
と、口からは勢い良くゴジラの熱線より少し淡い熱線「淡射熱線」が発射され、岩壁を見事に破壊した。
目をぱちくりとさせ、まず熱線が出せた驚き、次に感動を感じたチャイルドは思わずその場で狂喜乱舞する。
しばらくして落ち着いたチャイルドは自分が作った穴から牢獄を抜け、爆発が聞こえた方向へと走って行った。