ゴジラ7‐来襲・宇宙超怪獣‐
グウィウウウウウウン・・・
怒りが収まったバランは元の姿に戻り、力無く樹氷に倒れ込む。
それでなくてもあの時点で限界であったのに、怒りから無理矢理ブリザードの力を引き出したバランの身体は限界を越えていた。
しかしバランはまだ自分にはすべき事がある・・・と体を奮い立たせ、何処かへと向かって行く。
グウィウウウ・・・
やがて歩みを止めたバランの前にあったもの、それは雪に埋もれ、すっかり停止したむささびだった。
バランはむささびに付いた雪を払い、前部のハッチをこじ開けるとコクピットの中に手を伸ばし、意識の無い瞬を掴み出した。
グァルルル・・・
そのままバランは二本足で立ち上がり、山を降り始める。
それからバランは何度も両手に包み込んだ瞬の顔色を確認しながら、紋別市の郊外まで辿り着いた。
その頃、紋別市の人々は近隣の山々で巨大な闘いが繰り広げられている事に気付いていたが、この故郷を置いて逃げ出そうとする者は全くいなかった。
もちろん、ここ紋別市の郊外にある病院でも患者・職員達は中にいた。
「なぁなぁ、早く逃げないで大丈夫かな・・・」
「さっきのニュースじゃ日本に化け物は来ないみたいだから心配ないって。それに俺、おずおずとこの街を離れたくないよ。」
「そうだよなぁ・・・」
「大丈夫だよ、悪い怪獣が来てもみーんなゴジラがやっつけてくれるよ!」
「ゴジラか・・・こんな時に来てくれたら・・・」
ふと、窓を見つめていた患者は驚きの表情を見せた。
何か大きな怪獣がこちらへ向かって来ていたのだ。
「おっ、おい・・・窓見て見ろよ・・・」
「どうしたんだ?そんな顔して・・・」
「なになに?僕にも見せて!」
ベッドで雑談をしていた患者達が、続々と窓際に集まっていく。
その騒ぎに呼ばれ、60代程の老医師が部屋に入って来た。
「あ、ありゃあ・・・」
「どうしたんじゃ、みんなして窓に集まって・・・」
「あーっ!バランだー!」
「むっ?バラン?」
「おじい・・・ちょっと窓見て下さい。」
老医師が窓に近寄ってみると、ちょうどバランが窓際にまで来ている所だった。
バランが人類の敵でなくなった事は誰もが知っていたが、手にゴジラのソフビを持った小さい子供を除いてやはり動転は隠せない。
「おお、これはまたビッグな来客じゃな・・・」
「わーいわーい!やっぱりバランっておっきいやー!」
「そうですよね・・・もしかして向こうの山が騒がしかったのって・・・」
するとバランは半ば破壊しながら窓を開け、掌の瞬を人々に差し出す。
「うわっ、人だ!」
「何かこの人、テレビで見た事あるような・・・」
「・・・バランとやら、この若者を診て欲しいんか?」
老医者の質問に深く、何回も頷くバラン。
「そうか。うーん・・・意識は失っとるが、まだ息はある。とりあえずそこのベッドに寝かせて診てみようかの。」
老医者はそう言うと他の医者達を呼び、瞬を空いたベッドに寝かせた。
それを見て安心したバランは気が抜けたのか、辺りに地響きを立てて力無く病院の公園に倒れた。
「うわっと・・・」
「あいつも、相当怪我持ちだったようじゃな・・・」
「おじい、バラン大丈夫かな・・・?」
「なに、怪獣は簡単に死なんだろう。わしは怪獣科なんて専門外じゃが、顔を見る限りたぶん過労による一時的な休憩みたいな感じじゃろうな。」
「ふう、ならよかった!」
バランは浅いいびきを立て、その巨体を休めた。
ただ、人間達にとってはとても大きな騒音ではあったが。