ゴジラ7‐来襲・宇宙超怪獣‐




・・・しかし、バランの眼はまだ朽ちてはいなかった。
自分の目の前で大切なものを失った悲しみ、自分から大切なものを奪った侵略者への怒り、大切なものを守れなかった、自分への激しい感情・・・



グウィウウウウウウン・・・!



その全ての感情はバランに恐るべき力を与え、カイザーギドラがバランに噛み付いたその瞬間、解き放たれた。
バランの瞳が見開かれたと同時にバランのエネルギーがカイザーギドラに逆流し、カイザーギドラを昏倒させる。
バランは立ち上がるとその体から永久凍度の冷気を放出させ、赤茶色の皮膚を白く染めていく。
それに応じて肥大化した全身は氷の様に鋭く、冷たくなっていき、瞳は翠色に変わった。
おぞましい程の冷気を感じ、辺りに溢れる濃霧の先にカイザーギドラが見た物、それは今さっきまで地面にひれ伏していた怪獣と似ても似つかないまでに変貌した怪獣、「ブリザードバラン」であった。



グウィアアアアアアウウン・・・



邪すら感じるブリザードバランの咆吼にカイザーギドラは一瞬怯むが、帝王としての威厳をかけてブリザードバランに向かった。
静止したままのブリザードバランに接近し、カイザーギドラは蹴りを浴びせようとする・・・が、ブリザードバランは怒りの形相をカイザーギドラに向け、カイザーギドラの足を力強く掴んだ。
絶対零度に等しいブリザードバランの冷気はカイザーギドラの足を氷で包み、みるみる腐食させる。



ギィアアアアアン・・・

グァウウウウウウ・・・



突き刺す冷気にカイザーギドラはすぐ足を離すが、著しく腐食した足は使い物にならなくなった。
カイザーギドラは翼を広げて飛ぶと、今度は空中からデストロイド・カイザーをブリザードバランに放射した。
しかしバランは反重力光線を避ける事もせず、冷気を放ちながら皮膜を広げ、空中のカイザーギドラに猛念吹雪を浴びせる。
凍気の台風は瞬く間にカイザーギドラへ向かい、反重力光線がブリザードバランに届く前にカイザーギドラの全身を反重力光線を放つ体勢のまま氷付けにした。
カイザーギドラはそのまま地面に落下し、その衝撃でカイザーギドラの氷は砕けたが、これによりカイザーギドラは全身にダメージを受け、それまでの優勢が嘘の様に弱々しく立ち上がるしか出来なかった。



グウィアアアアアアウン・・・



だが、怒りに満ちたブリザードバランがここで終わらせるわけがなく、辺りの空気を急激に口内へ吸収し、激しく渦巻く真空の弾丸に冷気を込める。
そしてブリザードバランはカイザーギドラへ極零圧弾を発射した。



ギィアアアアアン・・・

グァウウウウウウ・・・



絶凍の弾丸はカイザーギドラを撃ち抜き、悲鳴と共にカイザーギドラを跡形も無く粉砕した。
紋別の山々は日本の北端である北海道すら見た事がない厚い氷に覆われ、さながら南極の様な風景を醸し出した。
29/44ページ
スキ