ゴジラ‐世紀の大怪獣‐
翌日、ここは東京都・あきる野市にある大手新聞企業「日東新聞株式会社」の本社ビル。
その中の一つの部署で、2人の男が激しい口論を繰り広げていた。
「だから、駄目だと言っているだろう!」
1人はこの部署のデスク。
やや厳格なその顔付きは、40過ぎくらいだろうか。
「なんでですか!こんな報道くらい、別に俺でも問題無いじゃないですか!」
デスクに突っ掛かるもう1人の男は、20代半ばの若者であった。
彼の名は、志真哲平。
半年前にこの日東新聞に入ってきた、新人ジャーナリストだ。
「まだ、お前には報道は早い!」
「凶悪犯立てこもりの報道くらい、俺にだって出来ますよ!」
「お前はまだまだ半人前なんだ!黙って言われた記事を書いていろ!」
「しかし!」
「志真!」
デスクが机を叩き、志真に怒鳴った。
今まで威勢良く突っ掛かっていた志真も、つい黙り込む。
「いいか志真。そうやってすぐ感情に流される奴が、現場で冷静に報道が出来ると思うのか?」
「・・・」
「分かったなら、早く戻れ。」
「・・・はい・・・」
志真は自分の机に戻り、記事を書き始めた。
だがあんな口論をした後で冷静に記事が書ける訳が無く、早くも文章に詰まってしまう。
「・・・うああぁ!やっぱし駄目だぁ!」
――・・・また、あそこへ行くか・・・
部屋を出た志真はすぐにビルの屋上へと向かい、そのまま寝転んだ。
――あーあ、またデスクに怒られちまった・・・
志真は大の字になり、空を眺める。
憂鬱になるとここで空を眺め、荒れた心を落ち着かせる。
それが、志真の習慣だった。
――確かに俺はすぐ熱くなっちゃうけどさ、そろそろ俺にも報道くらいさせてくれたっていいじゃんか・・・
しばらく志真はそうして空を眺めていたが、書き残していた記事の事を思い出し、自分の部署へ帰っていった。
「・・・俺の目標、まずデスクに俺の事を認めて貰う・・・!」
「志真!ちょっと来い。」
それから1時間、部署に戻った志真は黙って記事を書いていたが、突然デスクが志真を呼んだ。
志真は席を立ち、デスクの元に行く。
「何ですか?」
「お前にやって欲しい事がある。これだ。」
デスクは志真に一枚の紙を見せた。
それは昨日起こった神島爆発事件に関してのレポートだった。
「これが・・・やって欲しい事ですか?」
「ああ。これは只の爆発では無いらしいが、どうも分からない事が多くてな。そこでお前には明日調査隊に同行し、分かった事を記事にして来て欲しい。」
「また、同じようなやつじゃないですか・・・」
「何を言う。『日進月歩』とも言うんだ、半人前のお前にはぴったりな仕事だ。さぁ、早く仕度しに行け。」
「はい・・・」
志真は机に戻ると、荷物の準備を始めた。
その表情はとても不満気であったが、それをデスクに悟られない様に志真はデスクに背中を向けて準備をする。
――・・・待ってろ、デスク・・・!
絶対にスクープを物にして、俺の事を見直させてやるからな・・・!