ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐







――・・・こえる?わた・・・声が。
私は・・・私の話・・・聞いて・・・いの。



それと同時に今まで爪を振り回し、三体を牽制していたアンギラスが突如動きを停止した。
バランとモスラは機会とばかりにアンギラスに近付き、前足を抑え込む。
だが、やはりゴジラがアンギラスに向かう事はなかった。






――聞こえるよ・・・
貴方は誰?



――やっと繋がった・・・
私は遥。切也君、貴方に話があるの・・・もう、こんな事はやめて。



――やめて・・・?
貴女に、僕の何がわかるの?
ゴジラによってみんなぐちゃぐちゃにされた、僕の気持ちが。



――・・・あの時、ゴジラは貴方の生活を壊す為に暴れていたんじゃない。止められない力を抑え切れずに暴走してしまっていて、決して悪意があった訳じゃ無くて・・・



――悪意がなかったら、何をしてもいいの?



――違うわ。
ゴジラは、みんなを守る為に必死で闘っていたの。暴走する事が分かっていても、バランを止める為にあの姿になって、これ以上誰かの命が奪われない為に・・・




――・・・そうだ。ゴジラは僕の友達は、先生の事は守ってくれなかった!
守ってくれなかったんだ!!



――待って、話を・・・



――僕は、絶対にゴジラを許さない・・・!
ゴジラも僕の苦しみを、憎しみを味わって・・・死ねばいいんだ!!



その時、遥の声は切也によって拒まれ、弾かれてしまった。
しかし遥は弾かれる直前、微かだが、もう一つの切也の声を聞いた。





――・・・いや・・・だ・・・






更にその瞬間、止まっていたアンギラスが再び動きだした。
アンギラスは凄まじい力でバランとモスラを振り払うと、眼前のゴジラへ向かって行く。
ゴジラは熱線を放ち、アンギラスを遠ざけようとするもアンギラスには効かず、アンギラスの接近を許してしまう。
そしてアンギラスは後足で立ち上がると、ゴジラを押し潰さんと前足を勢い良く降り下ろした。
何とか手で前足を受け止めたゴジラだが、力の差は歴然で、足は段々と地面にめり込んでいく。



「大丈夫か!?遥ちゃん!」
「はい・・・でも、もう一度切也君に、伝えないと・・・」
「無茶をするな。まずは、気持ちを落ち着かせる事が大切だ。」
「でも切也君が、ゴジラが・・・」
「遥ちゃん、ゴジラなら大丈夫だ。あいつは絶対、こんな事で屈しない。」



バランとモスラも再びアンギラスへ向かい、モスラはゴジラの頭上からアンギラスに突風を浴びせ、バランはゴジラの左横からアンギラスの前足を掴み、引き離そうとする。
だが、形勢は変わりそうにない。



「私・・・もう一度行きます。アンギラスを倒すには、切也君を解放するには、私が頑張らないと・・・それに切也君、きっと心の底ではゴジラの事、憎んでいないから・・・」
「・・・分かった。遥ちゃん、気を付けてな。」
「だが妃羽菜、無茶だけはするな。誰1人欠けてはいけないんだ。」
「・・・はい!」



2人の心配を払う様に遥はにっこりと笑うと、ペンダントを握り・・・再び、切也へ語りかけた。






――・・・切也君。
お願い、私の話を聞いて。



――また貴女・・・
もう、僕に構わないでよ・・・!



――いえ、そんなわけにはいかないの。
切也君、なんでゴジラはさっきから戦いを避けていると思う?
・・・切也君の事、守りたいからだよ。



――・・・そんな事、信じない!



――ゴジラだって苦しんでるの。自分の力を抑えられなかったばかりに、貴方の心を傷付けてしまったから。
貴方のいる角から貴方の記憶を見て、貴方の苦しみと悲しみが分かったから。
今度こそ、ゴジラは貴方を救いたいの。
でも切也君がこのままじゃ、アンギラスの中にいたままじゃ、何も変わらないの・・・!



――・・・うるさい!!
いいから、何処かに行ってよぉ!!



――・・・切也君、まだ幼い貴方にこんな事だけはしたくなかったけど・・・!



すると、遥は頭の中に別のイメージを浮かべた。
それは志真の同僚達が捉えた、アンギラス・・・切也によって日常を壊された人々の姿。
ある子供は突然の別れに泣き叫び、ある男の人は今は無き我が家の前で悲しみに暮れ、ある女の人は瀕死の状態でベッドに倒れている。



ーーあ・・・あっ・・・!



その光景は切也の心を激しく揺さぶり、同時にある事をフラッシュバックさせた。






ーーは・・・うう・・・!こわい・・・こわいよぉ・・・!おかあさぁん・・・おとうさぁん・・・たすけ・・・て・・・!



名古屋に現れた際、偶然目に入った1人の少年。
それはまるで、半年前の自分を見ているようだった。
だが、アンギラスは・・・切也はその少年を、何の躊躇いも無く踏み付けた。






――は・・・はっ・・・!!
僕は、僕はっ・・・僕は・・・!!



――憎しみは、悲しみしか生まない。
でも貴方はゴジラへの憎しみを隠れ蓑にして、その事実から・・・過ちから、ずっと逃げていた。
でも、人間は過ちから目を逸らしたらいけないの・・・また、過ちを繰り返さない為に・・・明日を優しく生きて行く為に・・・



――ううっ・・・!
ぐううううっ・・・!!



――貴方だって、本当はゴジラの事を憎んでなんかいない・・・むしろ、大好きだったはず。
心の底では、自分で自分の首を絞める思いだったはず・・・だからもう、こんな悲しくて辛いだけの事をするのをやめて。
貴方の心が壊れてしまう前に、どうか思い出して・・・貴方が大好きだった、ゴジラの事を・・・!
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