ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐







――・・・ねぇアンギラス、やっとゴジラが来るみたいだね・・・






――モスラとバランを連れてるみたいだけど、僕の憎しみには勝てやしないさ・・・






――ゴジラ、もっと怒ってよ。
そうじゃないと・・・僕が待つ意味がないんだ・・・!






日も西の空へ沈みかけた頃、ゴジラは左の掌に志真を乗せゆっくりと、だが確実に滋賀県・蓬莱山の山道を歩いていた。
志真の方はと言うと、久々に味わうこの体験に懐かしさを覚えていた。
2年半前、初めてゴジラと出会った時以来だ。



「こうしてお前の掌に乗るのも、久しぶりだなぁ・・・最近モスラやチャイルドには乗ったけどさ。」



ゴジラもまた、志真と出会った時の事を思い出していた。
今まで逃げられてばかりだった自分から逃げなかった存在、初めて自分を必要としてくれた存在、常に放っておけなかった存在・・・
そう、彼らは固い絆で結ばれているのだ。






「わぁー!きれーい!」



その頃、モスラは遥を頭に乗せて鳴門海峡上空を飛翔していた。
夕日の光に照らされた海面は橙に輝き、その上を水鳥達が群を成して飛んでいる。
そんな光景を特等席から見ている遥の顔は、とても至福そうだ。



「ねぇモスラ、貴方はここに来る時、いつもこんな景色を見ているの?」



遥の質問に頭を振って答えるわけにもいかないモスラはペンダントを介し、直接遥の頭に答えた。
その証拠に遥のペンダントは白い光を放っている。



「・・・やっぱり?こんな景色がいつも見られるなんて、羨ましいな~。あっ、それでね・・・」



モスラとの会話に話が弾む遥。
彼女達もまた、切れない絆で結ばれていた。




「・・・」



一方、そんな二組とは裏腹に全く正反対な者達がいた。
瞬とバランだ。
瞬がむささびに搭乗しているのもあるが、一度も会話や交流を交わす事も無いまま、数時間この状態である。
互いに寡黙である為、この空気も当然と言えば当然だった。



「・・・」



黙々とむささびを操縦する瞬。
バランもまた、瞬の事など全く気に掛けていないらしい。
無言の空気は続き、長野県・乗鞍岳上空を通過する頃、瞬はある事に気付いた。
あれほど仲良く戯れていた動物達が、バランが来たと同時に一目散に逃げ出していったのだ。
それは怪獣達にとっては何ら変わりの無い、日常的な光景ではあるのだが、瞬には何故か違う様に見えた。



――・・・やはり、逃げて行くか。
それも当然だな。これだけ強大な存在が来たんだ、自分が到底及ばない存在が来れば避けて行くのも・・・存在?



瞬の脳裏に、何かが引っ掛かかった。
瞬は考え、そして辿り着いた答え。
そう、動物達はバランを避けているだけでは無く、「拒んで」いたのだ。
その光景は更に瞬の脳裏にある過去の記憶を呼び起こした。
類稀な才能から、仲間達に忌み嫌われていた頃の自分。
強さ故に、周りから求められなかった自分。
そして瞬は隣の怪獣もまた、自分と同じ境遇であると悟った。



――・・・そうか。
奴も、俺に近しい境遇なのか・・・



瞬は自分でも何故ここまでバランを放っておけないのか、はっきりとした要因を言葉に出来ずにいたが、今ようやくその理由を知った。
そう・・・瞬とバランは共振する個性を感じ、必然的に一緒になったのだと。
瞬は速度を落とし、コクピットを開くとバランに話掛けた。



「・・・バランよ!孤独には、うんざりしているのか!」



グウィウウウウウン・・・



バランもまた飛ぶ速度を落として瞬と合わせると、ゆっくりと首を縦に振り答えた。



「・・・そうか!ならば、俺と一緒だな!」



珍しく、瞬が笑った。
いつしか彼らの間にも、絆が生まれようとしていた・・・
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