ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐




二体はモスラに促されて渋々元いた場所に戻ると再び小山に腰掛け、志真と瞬もまた遥の仲裁で睨み合いを止める。
その様子を先程のゴジラ達と置き換えて微笑ましくしていた小美人だったが、魔獣達の事を思いだし、志真達にもそれを思い出させた。



『ですが、このままでは説得は平行線のままです・・・』
『今、こうしてる間にも魔獣が・・・』
「確かに・・・けど、ゴジラはともかくバランに何か闘う動機があればいいんだけどなぁ・・・」



その時、突如志真のズボンのポケットが小刻みに揺れた。
どうやら志真の携帯がメールを受信したらしい。
志真は素早く携帯を取り出す。



「んっ、メールだ・・・・・・な、何だって!」
「どうした。」
「今さっき、海の魔獣が黒部川に侵入したらしい!」
「もうそんな所まで魔獣の手が・・・」
「しかし、黒部川は特別他の川とは繋がっていないはずだが・・・」
『『・・・もしかしたら・・・!』』





一方、富山県・黒部川下流では今まさに重鯨・ホーエンスが川に侵入しようとしていた。



ズゥグゥゥゥゥゥ・・・



下流付近に待機していた自衛隊員の銃撃をもろともせず、波しぶきを立てながら川を上って行くホーエンス。
もちろん、この行動にもれっきとした目的があった。





「中央から地震を起こす?」
『『はい。重鯨は恐らく川を昇って日本の中央に行き、そこから地震を起こす気です。』』
「黒部川を上って行くと辿り着くのは・・・飛彈山脈!」
「飛騨山脈は日本アルプスの一つ・・・今バランが住んでる所!」
「・・・だが、これはもしかすればバランが協力する動機になる。」



一刻を争う状況に志真と遥が焦る中、瞬は冷静にそう言い放った。



「なにっ?」
「俺に任せろ。妖精よ、すまないがもう一度俺に力を貸してくれないか。」
「瞬さん、どうする気ですか?」
「俺がバランを説得してくる。今は猫の手も借りたい状況だ、奴にも闘ってもらう。」
「瞬・・・」



瞬のまさかの言葉に志真と遥は困惑するが、小美人は瞬の頼みを聞き入れると両手を高く掲げ、力を瞬に送った。
瞬の体からすっと意識が抜け、残ったのは目を瞑り立ち尽くす空っぽの身体だけだった。






グルルルル・・・

グァウウウウ・・・



一方、怪獣サイドの状況は相変わらず変わらぬままだった。
再び話を聞く体勢になったとはいえ、バランはやはりモスラの話を聞き入れない。
ゴジラは今にも再びバランに突っかからん状態だ。



『おい、バラン。』



と、そこに半透明になった瞬がやってきた。
無論、話掛けている相手はバランだ。



『自分にも火の粉が振り掛かると分かっていながら、いつまで頑に拒むつもりだ?そんな事では、これまでと何も変わらない。お前は仮にも、「神」と呼ばれた怪獣ではないのか?それともお前は多少知恵があるように見えるだけで、所詮は人間に劣る図体が大きなただのトカゲか?それで「婆羅陀巍山神」を名乗って人間を支配しようなど、片腹痛いな?』



グァウウウウッ!!



それで無くてもさっきゴジラと小競り合いをして苛立っていたバランである。
瞬のこの言葉はすぐバランの怒りを掻き立て、その掌を足元の瞬に向かわせた。
だが地面に叩き付けたバランの掌は、空を切った感触しかない。



グァウウウウ・・・



しかし、 バランはそれよりも別の事に驚いていた。
それは眼前の人間が掌が当たるその時も全く動かずに、ずっと鋭い眼差しで自分を見ていた事であった。



『少し前、似た出来事にあったはずだ。それと同じく、今の俺は実体は無い。本当なら直接行きたかった所だが、こちらの方が早いと思ったのでな。そんな事より、お前に伝える事がある・・・お前の新たな住処(テリトリー)が今、魔獣に襲われようとしている。』



その言葉を聞いた瞬間、バランは驚愕とも脅えとも取れる様な動作で顔を後ろに引いた。
だが、間違い無くバランが動揺しているのは明らかだった。



『先程、海の魔獣がお前のテリトリーの近くにある川を上り始めた。このままでは、テリトリーに行き着くのも時間の問題だ。だが、お前がもし早く闘う事を決めていれば、未然に防げたかもしれないのだぞ。』



拳を握り締め、バランは怒りを露にする。
それは魔獣への怒り、
そして・・・自分への怒り。



『・・・しかし、手遅れではない。今すぐに向かえば、まだ間に合う。どうだ、これでもまだ拒み続けるか?婆羅陀巍山神。』



バランは瞬を一度強く見るとモスラの方を向き、ゆっくり頭を縦に振った。
漸く交渉が成立し、モスラは嬉しそうな声を上げ、ようやく憎きアンギラスと闘えるゴジラは早くもやる気の様子だ。



――・・・それでこそ、山神だ。


「バラン・・・」
「ったく、やっと闘う気になったか。」
『バランも悪い怪獣ではありません。心の底では共に闘おうとしていました。』
『私達に心を許す、勇気が無かっただけ・・・』
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