ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐
一方、愛知県・小牧空港の滑走路をゴジラが通過していた。
いつもなら飛行機が離陸する時間だが、ゴジラの予想外の来訪に飛行機を出せないでいた。
ディガアアアアアアオン・・・
その後ろを日東新聞の取材ヘリが追っていた。
中にはもちろん志真が乗っている。
――俺の役目はありのままを伝える事・・・もちろんゴジラの動向もな。
その時、空港を震源に凄まじい地震が周辺に起こった。
建物の中にいる記者や従業員達は慌ててその場に伏せ、撮影ヘリも一時停止を余儀なくされた。
だが、地震にはびくともしないはずのゴジラが歩みを止め、しきりに辺りを警戒していた。
「ゴジラが警戒してる・・・けどあんなに警戒してんのは少なくとも1年前、モスラと闘った時以外に見た事が無い・・・つまり、ここに何か恐ろしい奴が潜んで・・・」
すると地面に激しい閃光が走ったかと思うと、ゴジラの足元から巨大な棘の塊が現れ、ゴジラを転倒させた。
バランの棘とは違う、太く鋭い棘だ。
建物の人々も突如現れた禍々しい棘に脅え、撮影ヘリももう少しで棘に突かれる所だった。
――なっ、何が起こったんだ・・・!?
地面から突き出たこの棘、そしてこのおぞましい気配・・・!
棘は再び地面に引っ込み、その切目から砂嵐が起こった。
砂嵐は瞬く間に辺りの視界を砂で塞ぐ。
そして砂嵐はゴジラが起き上がったのを確認した様に治まり、そこには巨大な魔獣がいた。
ゴジラを圧倒するその体躯、背中から生えた無数の棘、そこに何も映していない邪悪な瞳。
そう、安曇野の魔獣像に封印され、切也の憎悪の心によって蘇った大魔獣・アンギラスだ。
ギャエエエエエエン・・・
聞いた者の恐怖心を掻き立てる様な唸り声を上げ、アンギラスはゴジラを牽制する。
だがゴジラはそれにも屈しず、アンギラスへ向かっていった。
ゴジラは両腕でアンギラスの首元を掴み、そのまま後ろへ押し上げようとしたが、アンギラスの体は少しも動かず、逆にアンギラスはゴジラを後ろへ押し上げて行く。
足に力を込め、ゴジラは必死に食い下がるが、アンギラスの凄まじい怪力を止める事はできない。
グルルルル・・・
更にゴジラはだんだんと空港の方へと押されて行く。
中では避難が始まっているものの、このままでは空港と激突するのも時間の問題だ。
焦るゴジラをよそにアンギラスは力を強めていくが、それと同時にゴジラの背鰭が青く光る。
そしてゴジラはそのまま捨て身の熱線を放った。
ギャエエエウン・・・
近距離熱線はアンギラスの喉元に当たったが、アンギラスは顔色一つ変えない。
アンギラスはゴジラが熱線を出し終わった隙を突き、ゴジラの両手を掴むと後ろへと放り投げた。
ゴジラの巨体が軽々と宙に飛び、地面に叩き付けられた。
だがアンギラスは前足の爪を長く伸ばすと、倒れるゴジラに容赦無く切り付ける。
ディガアアアアアオオン・・・
ダメージが蓄積されていく中、ゴジラは何とか熱線を放つ。
が、アンギラスは自らの体を回転させ砂嵐を起こすと、熱線を防いだ。
アンギラスが現れた時に起こった、砂嵐の正体だ。
――何だ、あいつ・・・ゴジラが、まるで相手になってねぇ・・・!
このままじゃ、ゴジラがやられる!
もう戦う力が残っていないのか、ゴジラは熱線を放とうとしない。
するとアンギラスは前足の掌を胸の前で重ね合わせた。
それと同時に重ねた掌に凄まじい紫の光が凝固されていく。
そしてアンギラスは掌を離すと、そのまま前足を勢いよく地面に叩き付けた。
凝固された光は閃光となって地面を走り、何とか立ち上がったゴジラに直撃、大爆発を起こした。
アンギラス最大の技「天地裂波」だ。
グアアアア・・・
苦しみの声を上げ、ゴジラは爆発に耐える。
空中の取材ヘリにも爆発の衝撃は伝わり、志真も座席に捕まって衝撃に耐えた。
「ぐうっ・・・!」
やがて爆発は治まり、その後にはもう満身喪意のゴジラがいた。
だがアンギラスは何故かゴジラにとどめを刺さず、砂を巻き上げ地面へとその姿を消した。
ゴジラにはもう、アンギラスを追う力は残されていなかった。
「なんて衝撃だ・・・!でもあいつ、何で逃げたんだ・・・?明らかに余裕綽々(しゃくしゃく)だったのに、わざと逃げたよな・・・何なんだよ、あの怪獣・・・!」
アンギラスが去った後、取材ヘリも何とか体勢を立て直した。
だが志真は自分の身よりも、あの一撃をもろに食らったゴジラの身の方が心配だった。
当のゴジラはというと肩を揺すって瓦礫を払い落とし、再び関ヶ原へ向かって歩み始めている所だった。
しかし、その瞳にはアンギラスへの逆襲の炎が燃え盛っていた。