ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐
一方、寒気の影響を最も受けている小笠原諸島・鍵島では既にチャイルドが冬眠に入っていた。
安らかにすやすやといびきを立て、全く起きる気配は無い。
ギュウ・・・ギュウ・・・
そしてゴジラはチャイルドの冬眠を見届けると、自分もまた冬眠に入る為チャイルドに寄り添おうとした。
しかし、それを止める一つの声があった。
『・・・ゴジラ!待ってくれ!』
後ろを振り向くと、そこには今までずっと自分が助け、時に助けられた者・・・志真がいた。
だがやはり今までと同様、ゴジラも目の前の志真に違和感を感じていた。
確かに志真はいるのだが、何故か存在を感じる事ができないからだ。
『やっぱり変に思ってるか?俺も何だかさっぱり分からないけど、とりあえず今ここにいる俺は俺の意識だけなんだ。』
それを確かめる様に顔を近付け、じっと眼前の志真を凝視するゴジラ。
しばらくして違和感の理由を理解し、顔を戻した。
『ひとまず分かってくれたか?それでここからが本題だから聞いてくれ。俺はお前に頼みがあって来た。』
生存本能から来る激しい眠気に耐えつつ、ゴジラは志真の話を聞く体勢に入った。
『お前の力を俺達に貸して欲しい。今日本に強大な魔獣が現れて、日本中を破壊してる。そいつらを倒せるのは、お前しかいないんだ。』
――まぁ、ゴジラの事だから二つ返事で首を縦に振ってくれるはず・・・
しかし志真の考えとは裏腹に、ゴジラをためらい気味ながらも首を横に振った。
『な、なんでなんだ!?今までずっと、みんなを守る為に戦ってきたんだろ?だったら・・・』
言い終わる前に、志真はある事に気付いた。
先程からゴジラがしきりに後ろを気にしている事に。
それ以前にも志真はこれまで自発的に怪獣に向かっていたゴジラが何故来ないのか、気になってはいた。
今までのゴジラの行動と今の様子との違いを考えて行き、そして志真は気付いた。
――・・・冬眠か!
そう、あくまでも「生物」であるが故のゴジラの生存本能に。
今年の大寒波の影響もあって、比較的早い方ではあるが。
だが、ゴジラにとっては何よりも冬眠に付き、無防備になったチャイルドへの心配が一番の理由だった。
『・・・ごめん。俺、気付いてやれなかった。確かに物凄く眠いだろうし、後ろで寝てるチャイルドの事も心配なんだよな・・・でも、こうしてる間にも魔獣達によって苦しんで、悲しんで、嘆く人がいる。俺はそんな人をほっとけない。今俺ができるのはそんな人達の声を広く伝える事しかできないけれど、これはお前にしかできない事なんだ。だから頼む、戦ってくれ・・・!』
しばらくの沈黙の後、頭を下げて眠気と戦っていたゴジラが頭を上げた。
更に両手を頭の左右に持ってくると、そのまま手で頭を何回も叩いた。
そしてすっかり目を覚ましたゴジラは、ゆっくりと首を縦に振った。
『力を貸してくれるんだな!よし、じゃあここに来てくれ!』
志真は目を瞑って集中すると、ゴジラの頭に集合場所である関ヶ原の映像を送る。
ゴジラもそれを理解すると、島を出る為すぐに海岸へ向かった。
ディガアアアアアアオン・・・
『・・・ほんと、ありがとな。』
去って行くゴジラを見届けた志真はそう呟くと、静かにそこから消えた。
これで、三体の怪獣が一斉に関ヶ原へ向かう事となった。