ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐
一方、丹波市にて戦車部隊を壊滅させたウルフォスは京都府に侵入すると、そのまま東へと進んで行った。
今まで何度も自衛隊に道を阻まれ、先に進めないでいたが、もう自衛隊には魔獣の動きを阻止する戦力は皆無だった。
もちろんそれは他も同じで、イーブルスは既に九州を離れ四国に上陸、ホーエンスもゆっくりと、だが着々と西へ向かっている。
そして今、ウルフォスは綾部市を破壊していた。
ウォオオオオオン・・・
屈強なその身で文明がもたらした建築物を砕いていくウルフォス。
人々はただ、逃げる事しかできなかった。
「待て!このバケモノめ!」
しかしそんなウルフォスに向かって一つの砲弾が飛んで来た。
砲弾はウルフォスの体に直撃し、ビルを破壊していたウルフォスは砲弾が飛んで来た郊外を睨む。
そこにいたのは、僅かな数の戦車部隊だった。
この国を守る義務を課せられた隊員達は、決して諦めなかった。
たとえ少ししか力が無くとも、瞬が帰ってくるまでは。
「瞬特佐が帰るまで、勝手な事はさせない!」
「ここは、私達が守る!」
「総員、撃てぇぇ!!」
夕刻、むささびは無事インファント島に到着した。
4人は早速コクピットから降りるが、西だけ何故か沈んだ顔をしている。
それもそのはず、むささびは本来3人乗りであり、本当は遥を乗せるスペースは無かった。
なので東とのジャンケンの結果、西はずっとコクピット奥の荷物置き場に居させられてしまったわけだ。
「あぁ、やっと到着か・・・」
「西さん、本当にごめんなさい。」
「だ、大丈夫、遥ちゃんは心配しなくて全然OKだっぜ・・・」
「今日は運が悪かっただけだ、気を落とすな西。」
「こいつ、ふざけやがって・・・」
「何をしている。早く行くぞ。」
4人はジャングルの中へと入っていった。
相変わらずジャングルは広大だったが、遥の案内で以前よりも早く洞窟に辿り着き、瞬と遥は何の問題も無く洞窟へ入って行く。
しかし、東と西は洞窟を前にして何故か怯え始めた。
「どうした。」
「いえ、何でも・・・」
「は、早く行って下さい・・・」
「お前達も来なければ話にならない。さっさと来るんだ。」
「瞬さん、もしかしてこれが小美人さんが言っていた、『悪しき者は入れない』と言う事ではないでしょうか?」
「小美人?」
「あっ、説明してませんでしたね。あの双子の妖精さんの名前です。」
――このネームセンスの無さ、間違いなく名付けたのは志真だな・・・
「何かの力があいつらの精神に働きかけている、と言った所か?あいつらも仮にも自衛隊員、精神面もそれなりに鍛えてある。そんな2人がここまで怯えるとは・・・」
「あの・・・お2人に何があったのですか?」
「そうか、まだ妃羽菜には言っていなかったな・・・東と西は1年前にモスラと妖精を騙し、ゴジラと戦わせた加担者だ。」
「!」
思いがけない一年前の闘いの真実に、遥は口を閉ざす。
東と西があの不毛な闘いの引き金を引いた張本人だったのを、そんな人物が今自分の目の前にいるのを、信じたくなかったのだ。
「・・・」
「信じたくないのも無理は無いが、これは本当の事だ。この2人がした事は大罪、そして師匠代わりの存在ながらそれを引き起こした俺もまた、罪人だ。」
「えっ、ですが瞬さんは・・・」
「俺は2人が来る前にここへ行き、モスラにゴジラを倒してくれと頼んでいる。その時は回答を待ったのだが、東と西に酒を飲まされた勢いでこの事を話し、島の地図を渡してしまった。それで2人は勝手に回答を聞く為に島へ行き、そこで迷惑を掛けたと言うわけだ。」
「瞬さんが来ていた事は知っていましたが・・・まさかそんな事が・・・」
「過ちに気付いた俺はこの2人を止めた後に謝罪し、妖精からこの奥に入れるのは悪しき心を持っていないからと言われ、モスラから赦しも得た。だが、それであろうとも俺達が罪人である事に代わりは無い。これは決して忘れてはならない、負の記憶だ・・・」
目を瞑り、瞬は懺悔に似た表情をする。
そんな瞬と苦しみながらも前に進もうとしている東と西を見た遥は少し間を置き、こう言った。
「・・・だからこそ、東さんと西さんを置いてはいけません・・・」
「妃羽菜・・・」
「東さんと西さんは、本当に反省しようとしています・・・なのに、ごめんなさいも言わせて貰えないなんて、可哀想過ぎます・・・」
「・・・ああ。だからこそ、この先に連れて行かなければならない。」
――荒病治だが、仕方ない・・・
すると瞬は今だ入り口で怯えている2人の肩を掴むと、そのまま洞窟へと引きずり始めた。
突然の事に2人は抵抗するも瞬の力は強く、なすすべもなく洞窟の中へ連れて行かれる。
「しゅ、瞬さん!?」
「な、何してるんすか!」
「そうですよ!自分達には構わず・・・」
「腰抜けが。お前達はこれしきの事で怯える程の器だったのか?」
「しかし、やはり自分達に行く資格は・・・」
「今度こそ妖精と会い、きちんと謝罪するのだろう?それでも、この俺が認めた一応の弟子なのか?」
「「・・・!」」
「何事にも屈しない気持ちがあれば、何でも越えられる・・・何度も、そう言って来た筈だ。」
「・・・了解、しました・・・!」
「俺・・・1人で、歩きます!」
そう言うと2人は瞬の腕を振り払い、自らの足でゆっくりと歩き始めた。
「凄い・・・瞬さんって、本当に凄い人ですね!」
「そうだな・・・瞬殿がいなければ、今の自分と西はいなかった。」
「そうそう・・・瞬殿は最高の軍人だ!!」
「別に普通だ。」
「それに東さんと西さんも、目を背けたくなるような過去を乗り越えられる、凄い方だと私は思いますよ。流石は、瞬さんが弟子と認めたお2人です!」
「は、遥ちゃん・・・!」
「そう言って貰えて自分は、自分達は本当に幸せ者だ・・・!」