ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐







その日の夕方、自衛隊本部の格納室に瞬の姿があった。



「あいつら、遅いな・・・」
「瞬殿ー!」
「おまたせしましたー!」



そこに東と西が駆け足でやって来た。



「30分の遅刻だ。一刻を争う事態なのに何をしていた。」
「それがこいつ、『俺は今ジャバンラジオ系列で放送中のドラマを聞いてるんだ!』って言って、6時までラジオの前から離れなかったんですよ!」
「へへっ、すみません。」
「全く・・・まぁこれの整備もじっくり出来たし、良しとするか。」
「これ・・・とは?」
「これだ。」



瞬は後ろに振り向くと、シャッターの横にある赤いスイッチを押した。
するとシャッターがけたたましい音を立ててせり上がり、格納庫の向こうに大きな何かが姿を現した。



「こ、こ、これは!」
「これが俗に言う『秘密兵器』だ。」



更に瞬は下の青いスイッチを押す。
と、同時に真っ暗だった格納庫に眩しいばかりの照明が付き、そこに現れたのは白銀の色をした巨大な戦闘機だった。
しかしその形状は通常の戦闘機とは大きく違い、四対の翼部、上部に付いた棘の様な発射口、怪獣の頭部を模した先端部。
そう、まさにバランに似た形状をしていたのだ。



「なんかむささびみたいだなぁ・・・」
「ばか、どうみてもバランだろう。」
「どちらも正解だ。」
「えっ?」



思わず声を合わせて反応する2人。



「確かにこれはバランの飛翔する姿を参考にして作られた。だが名前は『むささび』だ。」
「ほっ・・・」
「ほぅ・・・」
「むささびは空海両用の高速戦闘艇だ。爆雷とショットガンに追尾式魚雷を装備し、マッハ4で空を、水中を50ノットで進む事ができる。」
「おお!」
「すっげぇ!」
「昨日起こった怪獣同時多発襲撃で出動が決定したが、その性能の高さから誰も乗りこなせなかったらしい。だから今回の件はこれのテスト飛行も兼ねて・・・だな。」
「流石は瞬殿!」
「よし、早速行くぞ。」



瞬は先端部のちょうど目に当たる所にある緑のボタンを押した。
するとコクピットの上部が上へ開き、搭乗部が姿を現した。
中は3人乗りで、瞬は操縦席に、東と西は後部座席に乗り込んだ。



「うほ、本格的だぜ・・・」
「で、まず何処へ向かうんでしたっけ?」
「当然、インファント島だ。」


――やっぱり、あの島か・・・


――あそこ、行きにくいなぁ・・・



それもその筈、東と西は一年程前にインファント島へ行った事があるのだが、そこで小美人にかなりの迷惑をかけてしまったからだ。
もちろんそれは瞬も変わらないが、モスラからの祝福と小美人からの許しを得た瞬と違って、2人は今の所ただ迷惑を掛けただけの存在なのだが。



「だが、まずは京都に向かう。」
「観光ですかい?」
「ばか、こんな時に観光なんてするわけないだろ。」
「そうだ。まぁ、用事はすぐ終わる。」



するとその時、突如むささびがゆっくりと上昇していった。
いや、むささびの下にあるリフトが上昇しているのだ。



「お、おお?」
「ここからは飛べないからな。移動だ。」



しばらくして格納庫の最上階に到着し、リフトが停止したと同時に四方八方から一斉にライトがむささびを照らす。



「むささび、出動。」



瞬は手前のレバーを引き、むささびのスラスターをふかす。
すると前方にあった壁が左右へ展開していった。
更に壁の向こうにある壁もまた左右に展開し、そのまた向こうにある壁も左右へ展開していく。
それを繰り返す内に、宵闇が迫る外が見えた。
そしてむささびはスラスターをふかし、高速で真っ直ぐ外へと飛んで行った。



「うおおおっ・・・」
「しかし、滑らかな動きですね・・・」
「これに使われている『サテライト・スラスター』は、人工衛星に搭載されているエンジンを参考に開発され、上下左右へ自由に可動可能だ。更にこれは後翼だけでなく、前翼にも使われている。高機動でかつ、滑らかで無駄の無い動きを実現した、まさに『超兵器』という訳だ。だからこそ、これは生半可な奴が使おうとしても宝の持ち腐れにしかならないが。」
「なるほど・・・」
「よくわからないけど、とりあえず瞬殿はすっげぇって事ですね!」


――自分、西は間違っていないが、何故か無性に突っ込みたい・・・!
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