ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐







「ここか・・・」



その頃、志真は長野県・安曇市に来ていた。
目的はもちろん、魔獣の調査だ。
早速街の人々に聞き込みを始めた志真だが、返ってきたのはどれも同じ様な返事だった。



「さあ、知らないなぁ。」
「魔獣?そんなのいるのか、こっちが聞きたいよ。」
「はぁい?今なんていいましたぁ?」
「あんたらも好きだねぇそんな事。それならもっと世間の事とか他に・・・」


――やっぱり知らないか・・・



肩を落としつつ、志真は聞き込みを続ける。
だがしばらく聞きこみを続ける内、町の郊外にて1人の町民から気になる情報を聞いた。



「魔獣・・・それは知らないけど、昨日ここで凄い地震があった時、男の子が1人で森に向かったって聞いたなぁ。」
「男の子が1人で森に?」
「うん。どうやらこの近くに住んでる赤城さん家の一人息子みたいなんだけど、ちょうど今日森で壊れた魔獣像が見付かったのも気になるし・・・」
「魔獣像が!?」
「とはいっても像は原型を保ってなくて、何の像なのかもわからずじまいだし・・・」
「お願いします、そこまで案内して下さい!」






それから志真はその町民の案内で、魔獣像の前に来た。
町民の言う通り魔獣像は既に原型を留めておらず、かろうじて台座が残っている程度だった。
その台座も酷く損傷を受けており、何と書いてあったかも分からない。



「台座にも何か書いてあったみたいだけど、傷だらけで読めなくなってるんだ・・・」


――間違い無い、これは暴龍・アンギラスの魔獣像だ。


「まあ、仕方ありませんね。それで昨日、森に入って行った少年は今何処に?」
「・・・それが分からないんだ。地震に巻き込まれてまだこの森にいるのか、それともまさか・・・」
「どうかしたのですか?」
「・・・この町の町長がよく話してるんだけど、魔獣の一体、暴龍にだけ特殊な能力があるみたいなんだ。魔獣像に憎しみを持った人間が触れる事によって覚醒し、その人間を取り込んで自らの力にしてしまうという能力が。そしてその魔獣が覚醒した時、他の魔獣も目覚める。」
「もしそれが本当なら、ここの魔獣は既に覚醒していると言う事に・・・」
「すると、やはり切也君は・・・!」



信じたくなかった真実を悟った町民は、深く肩を落とした。



「それでその少年、切也君には何か憎しみを抱く様な出来事があったのですか?」
「あぁ、切也君は半年位前にここに来たんだけど、前住んでいた所でゴジラに酷い目にあったらしいんだ・・・」
「ゴジラに?」
「そう、切也君が住んでいたのは山梨県の甲府市、バラン事件の被害者の1人さ。」
「・・・!」
「あとこれは噂だけど事件の日、切也君の通ってた学校で一クラスだけ逃げ遅れていたみたいで、そこに切也君もいたらしい。そして切也君はそこでゴジラによってクラスメイトや先生が踏み潰されるのを見てしまったみたいなんだ・・・」


――・・・そんな、嘘だろ・・・
まさかゴジラがそんな事を・・・


「記者さん?」
「・・・あっ、すみません!ちょっと考え事を・・・つまり切也君は、大切な友達や先生を奪ったゴジラを憎んでいる、と・・・」
「本当の所は本人が話さないから、よく分からない。だけど私、切也君とはお隣なんだけど、最近の切也君の様子を見ていると嘘とは思えなくて・・・」
「そうですか・・・では、私は本社に帰ります。ありがとうございました。」
「どうも。」



志真は町民に会釈すると、森を去って行った。
しかしその表情は、とても暗かった。
9/42ページ
スキ