ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐
一方、兵庫県・和田山市から現れた岩狼・ウルフォスは丹波市郊外にまで進行していた。
街では自衛隊員によって既に避難が始まっていたが、突然の出来事であった為か、まだ大半の人が避難しきれていなかった。
ウォオオオオオン・・・
前足を曲げ、街に向かって雄叫びを上げるウルフォス。
その咆吼に逃げ惑う人々の恐怖がかきたてられ、皆急かす様に足を早める。
そしてウルフォスはそのまま前足をバネの様にして勢い良く街へと飛びかかった。
高層マンションがウルフォスの固い体に圧し潰される。
「きゃあああああ!」
「早く、早く逃げろぉ!」
「皆さん落ち着いて下さい!急がないでゆっくりと!」
マンションの崩壊音と同時に小走りだった人々が一勢に走りだした。
人々を押し退け先へ進む人や足がもつれてその場に倒れる人、そして親とはぐれ、泣き出す子供。
隊員は必死に人々を静止しようとするが、パニック状態に陥った人々には届かない。
その間にもウルフォスは全身を使ってアスファルトを砕き、家を潰していく。
何百mもの高層ビルも、前足をバネにしての突撃「タックルブレイク」の前では崩れ去るしかなかった。
だんだんと、だが確実に逃げ惑う人々に近付くウルフォス。
その時、人々の横を自衛隊が派遣した陸軍の戦車達が通り過ぎる。
搭乗員は周りに人々がいない事を確認すると戦車を止め、一勢に砲撃を開始した。
「総員、撃て!」
さらに大分県・水分峠上空では空軍による剛禽・イーブルスへの攻撃が、秋田県・男鹿半島沖では重鯨・ホーエンスへの攻撃が始まっていた。
もちろん目的は瞬が帰って来るまでの足止めだが。
ピャアアアアアン・・・
水分峠の上をイーブルスが鳴きながら飛ぶ。
その後方からは自衛隊空軍の戦闘機が追跡している。
「ミサイル、発射!」
隊長の一言に隊員達はすぐ手際良く安全装置を解除する。
そしてイーブルスに照準を合わせ、ミサイルを一勢に発射した。
三発のミサイルは右・左・後ろの三方向から直線を描いてイーブルスへ向かう。
しかしイーブルスは背後から迫るミサイルを見切り、素早く上昇してミサイルをかわす。
だがいつもならそのまま行き場を失い、地面へ落ちるミサイルが向きを変え、再びイーブルスへ向かって行った。
そう、このミサイルは目標の追尾機能が付加された特殊ミサイル「B‐TG」だったのだ。
イーブルスは更に上昇するが、ミサイルもまたイーブルスを追撃せんと上昇する。
そしてミサイルはイーブルスに直撃した。
全弾命中。
「全弾、命中しました。」
「油断するな。奴はこの程度ではやられない。すぐ二発目の準備をしろ。」
「了解、了解。」
隊長の予想通りだった。爆炎を振り払い、現れたイーブルスは傷一つ無く、平然とした表情をしていた。
ピャアアアアアン・・・
また、男鹿半島沖でも自衛隊海軍の潜水艦が重鯨・ホーエンスに苦戦していた。
ズゥグゥゥゥゥゥ・・・
「J‐T魚雷、怪獣に直撃するも通用しません!」
「くっ!確実に命中してるのに!」
「怪獣、こちらに急接近!」
「急いで待避だ!」
潜水艦はすぐその場を待避するが、ホーエンスは体を上に反らすと、勢い良く下に反らし波の振動「ヘビィ・ウェーブ」を放った。
振動波は一瞬の内に全体に広がり、辺りの潜水艦を一掃した。
巨大な脅威に、部隊は苦戦を強いられていた。