ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐




――はぁ、めんどくさいなぁ・・・



渋々切也も鈍い足取りで町長の後に着いて行く。



「ところで町長・・・その今から行く所とは何ですか?」
「君は、『大魔獣日本襲撃』の話を知っているかの?」
「・・・聞いた事があります。」


――えっと・・・確か、1500年前に日本各地を四体の魔獣が襲った、って話だっけ・・・
それで魔獣は日本各地に封印されて、何処かで今も眠りに付いてるらしいけど・・・


「でも確か、その話は作り話のはずじゃ・・・」
「でもそういった昔話にはな、何か根拠があったからこそ根付いているものじゃ。そしてこれからそれを証明してやろう。」
「なるほど・・・」



そう話し合っている間に、2人は郊外に広がる森の前に到着した。



「もうここまで来ればしばしの辛抱じゃぞ。」
「はい・・・」



2人は森に入り、全く整備がなされていない獣道を慎重に進んで行く。
するとその時、ふと切也の頭に1年前の自分の姿がよぎった。





「まぁ切也ったら、またゴジラの絵を書いてるのね。」
「うん!僕、ゴジラ大好き!」
「ふふっ。いつも学校でもそうしてるんですって?」
「もちろん、勉強だってスポーツだってちゃんとやってるよ。」
「そう・・・」
「ねぇママ、僕ゴジラに乗ってみたいな・・・」
「切也がいい子にしてたら、ゴジラだってきっと乗せてくれるでしょうね。」
「じゃあ僕、いい子にしてる!」
「本当かなー?」
「本当だよ!」
「じゃあ今度のテスト、楽しみにしてるわ。」
「大丈夫、絶対100点を取るからね!」
「ただいまー!」
「あっ、パパが帰ってきた、お出迎えしましょ。」
「うん!」





「どうした、切也君?」
「はっ・・・」



町長のその言葉で、切也は我に返った。



「よそ見してたら危険じゃ。ちゃんと着いてきなさい。」
「すみません・・・」


――なんであんな忌まわしい事をこんな時に思い出すんだ・・・
父さんや母さんとの楽しい時間を奪ったのも、あいつじゃないか・・・
まぁ、本当に「大魔獣」なんてのがいるなら、そいつがゴジラを・・・


「ここを曲がれば・・・ほれ、着いたぞい。」
「・・・これは・・・」



ゆっくりと顔を上げた切也の目に入って来たのは、まるで中生代の恐竜、アンキロサウルスにも似た石像だった。
今にも吠えかかってきそうなその石像は至る所が欠けており、時の流れを感じさせる様にすっかり色あせている。
更に石像の下の台座には消えかけの文字で「暴龍乃像」と掘ってあった。



「・・・『暴龍』?」
「これが大魔獣が存在した証拠、『魔獣像』じゃ。」
「魔獣像・・・じゃあまさか、この下に大昔に日本を襲った大魔獣が・・・」
「・・・そうじゃな。伝説には『深き憎悪が魔獣像に触れる時、大魔獣の封印は解け、再び災いが起こる』と伝えられておる・・・」


――深き、憎悪・・・


「・・・よいか、切也君。君がまさかそんな事を考えるとは思っていないが、決して魔獣の封印を解こうなんて、考えてはいかんぞ。後に残るのは、とてつもない後悔のみ。その警告を兼ねて連れて来た事を、どうか忘れんようにな・・・」



そう言うと町長は来た道を引き返して行った。
が、切也は町長に着いていかず、複雑を表情をして魔獣像を見上げている。



――・・・町長。
それでも僕は、やらなきゃいけないんです・・・
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