ゴジラ6‐大魔獣日本襲撃‐







それから4ヶ月経った、2010年10月。
日本は記録的な寒波に襲われ、東北方面の県では早くも雪が降っていた。
日本海側に位置する長野県・安曇野市もまた例外では無く、近々除雪に忙しくなる日々が来る事を誰もが話し合っていた。
ただ、1人を除いて。



「今日も赤城さんの所、静かよねぇ・・・」
「確かに今、旦那さんも奥さんも出張してるけど、にしても・・・」
「一人息子の切也君、もう半年になるのに学校でもうまくいってないみたいで。本当に大丈夫かしら。」



森林の近隣に佇む住宅街の一つ、その一角に主婦達が集まり、ひそひそと話しあっている。
今日も主婦達の話題はとある家庭・・・そう、4ヶ月前の甲府壊滅によって家を失い、ここへと越して来た赤城家の話題だった。
と、その時主婦達の前を学校帰りの切也が通りかかった。



「あ、切也君。」
「どうも・・・」
「最近学校うまくいってないけど、大丈夫?」
「まぁ・・・」



適当に返事を返し、切也は早々と家に入って行った。



「やっぱりそっけないわねぇ。」
「ここに来る前まで明るく活発な子だったみたいだけど、半年前のあの事件でひどい目にあったらしいわよ。」
「あの事件って・・・」
「そう、甲府壊滅事件。あの時切也君のクラスだけ逃げ遅れたらしいんだけど、生き残ったのは切也君だけらしいわ・・・」
「それは怖いわぁ~。あたしニュースで見てた時でさえ怖かったのに。」
「そうよねぇ・・・」





その頃切也は一人、部屋に寝転んで思いにふけっていた。
思い出すのはいつも、半年前の惨状だ。



「・・・ぐっ・・・」



それに合わせて左手が、微かに疼く。
既に傷は癒えているが、心に付いた深い傷はあの日から癒える事は無かった。



「・・・あいつのせいだ・・・あいつが僕の安らぎを、大切な物を奪っていったんだ・・・」



あの時のゴジラの顔を思い出すたび、切也の拳に力が入る。
毎日毎日、こんな事の繰り返しだった。



「・・・!」



と、その時家中に呼び鈴の音が響いた。
切也はすぐ起き上がると、早々と玄関に出る。
外にいたのは、この区の町長だった。
60前程のこの老人はかなり長い間町長を努めており、町の事もよく知っている。



「町長さん・・・どうしました?」
「いやぁ、君達も越してきてもう半年じゃろう。だからこの町にひっそりと伝わる、ある所に案内しようかと思ってな。」
「別に、興味ありません・・・」
「年寄りの言う事は聞くものじゃよ。それに最近めっきり町で見掛けないというじゃないか。」
「はぁ・・・」
「ほれ、いくぞい。若いもんが体を動かさないでどうする。」



そう言うと切也に手招きをし、町長は外へと歩いて行った。
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