ゴジラ5・5‐チャイルドの一日‐
・・・と、その時チャイルドは砂浜が小刻みに揺れたのを感じた。
もちろん20mのチャイルドがそう感じただけで、動物達からしてみれば大地震ではあるが。
そして揺れが収まったかと思うと、砂を巻き散らし地震の主がチャイルドの前に姿を現した。
ズゥイイイイン・・・
赤茶色の体に四本の足、頭には大きい耳に少々長い角。
大きさとしてはチャイルドより少し大きい位か。
そう、この怪獣は中生代に生きた恐竜「バラナス・ドラゴン」の生き残りである地底怪獣・バラゴンだった。
ギュオオオオン・・・
この島でまさかゴジラ以外の怪獣に会えると思っていなかったチャイルドは、嬉しさのあまりバラゴンに飛びかかる。
しかしバラゴンとしては長旅に疲れた所に不意を突く様に飛びかかって来たチャイルドは、自分に襲いかかってきたとしか見えなかった。
バラゴンは二本足で立ち上がり、チャイルドを掴むとそのまま砲丸投げの選手の様にチャイルドを後ろへ投げ飛ばした。
ギュオオオオオ・・・
何が起こったかわからないまま、チャイルドは砂浜に倒れ込んだ。
バラゴンは直立体型のまま、チャイルドを威嚇する。
完全にチャイルドを警戒している様だ。
ギュオギュオオン・・・
だが、そんな事をチャイルドが知るはずも無く、再びバラゴンへ向かって走って行った。
今のチャイルドの頭には、バラゴンと出会えた喜びしか無い。
ズゥイイイイン・・・
バラゴンはチャイルドが飛び掛って来た隙に振り向き、チャイルドに勢い良く尾をぶつけた。
苦痛の悲鳴を上げながら、またも砂浜に倒れ込むチャイルド。
流石に今回の一撃は痛かったらしい。
更にバラゴンは頭の角を点滅させると、直も起き上がろうとするチャイルドへマグマの光線・熱核光線を吐いた。
光線はチャイルドには当たらなかったが、砂浜に命中し爆発を起こし、爆発に驚たチャイルドは砂浜に座り込んでしまった。
しかしバラゴンは容赦なく熱線をチャイルドに放つ。
腰が引け、涙目になりながらもチャイルドは後ずさりして必死に熱線をかわして行くが、5発目の熱線がチャイルドの頭に直撃してしまった。
更に一際大きな爆発が起こり、辺りが見えなくなってしまう。
バラゴンはひとまず熱線を放つのを止め、チャイルドの動向を見る。
・・・ギュウウ・・・
やがて煙が晴れてきた頃、煙の向こうからチャイルドの声が聞こえて来た。
再び警戒するバラゴン。
だがバラゴンの目に飛び込んで来たのは、両手を目で押さえながら泣き叫ぶチャイルドの姿だった。
ギュオ~~~~~~オオン!!
ギュオ~~~~~~~オオオン!!
あまりに予想外なこの展開にバラゴンはもう一度チャイルドを見た。
よく見るとチャイルドは立派な体格でも無く、体のパーツ1つ1つが幼さを残していた。
チャイルドが子供である事に気付いたバラゴンは急いでチャイルドに近寄り、泣き止まそうとした。
しかし痛みからか恐怖からかはわからないが、バラゴンがいくら頭を下げても、前足で顔を寄せて変な顔をしてもチャイルドは泣き止まない。
ズゥイイイン・・・?
困ったバラゴンはふと、チャイルドの頭を撫でてみた。
すると、あれだけ泣いていたチャイルドがみるみるうちに泣き止み、顔に笑みを浮かべ始めた。
ギュオオオオン・・・
安心したバラゴンは改めてチャイルドに頭を下げ、先程の事を謝った。
チャイルドはそれに答えるかの様に背伸びしてバラゴンの肩を掴むと、逆にバラゴンの頭を撫でた。
頭を撫でられる事が大好きなチャイルドはバラゴンにも頭を撫でられる気持ち良さを伝えたかったようだ。
ズゥイイイイン・・・
バラゴンはひとまずチャイルドの手を離し、四つん這いの体勢に戻るとチャイルドに背中へ乗る様に促す。
そしてチャイルドが飛び乗ったのを確認すると、そのまま山岳地帯へと向かって行った。
すっかり二体は友達になれた様だ。