ゴジラ5・5‐チャイルドの一日‐
湖を離れ、林を歩いていると島からの唯一の出入口である海岸へ辿り付いた。
すぐさま砂浜まで走ると、早速熱線を吐く練習を始める。
ここ一年の日課だ。
ギュオオオオ・・・
背びれを白く光らせ、ゴジラが出す様な熱線をイメージしながら口を開く。
しかし、口から出てきたのはとても熱線とは言えない、ただの煙の固まりだった。
めげずにもう一度熱線を放とうとするが、やはり煙の固まりしか出なかった。
ギュウウウン・・・
肩を落とし、うつむくチャイルド。
とはいっても煙の固まりが出る様になったのもつい数ヵ月の話で、最初は固まりすら出なかったのだが。
もちろん、それにはれっきとした理由もある。
チャイルドはあくまで人間がゴジラ細胞の一部から検出したG‐DNAを使って産まれた「仮」のゴジラであり、また成長段階もそれほど経っていない。
つまり純正でかつ大人のゴジラで無い為に、熱線も最初から吐けないわけであった。
いずれ成長すれば熱線も出せるようにはなるが、ゴジラ以上の成長段階を経なければならなくなってしまう。
当然ながら、当のチャイルドが知る事は無い。
ディガアアアアアアオン・・・
と、その時ゴジラが海岸にやって来た。
だがいつもと様子が違い、静かに遠方の沖を眺めている。
どうやら何かの存在を感じたらしい。
ギュオオオオン・・・
何度も経験している事とはいえ、チャイルドはゴジラに近付き、不安そうな表情でゴジラを見上げる。
メガギラスの群れが島に来た時も、バランを止める為に島を長く空けていた時も、感じた不安だ。
グルルルル・・・
それに対してゴジラは大丈夫だ、とも取れる表情をする。
そして再び海岸線の方を向くと、海に向かって歩いて行った。
自分の知らない、遠い何処かへと行くゴジラをチャイルドはただ見つめていた。
ギュウウウン・・・
一人ぼっちになったチャイルドは、砂浜に座り込んだ。
いつも島を探索しているのも、実はそんな孤独を紛らわせてくれる「友達」を探す為でもあった。
しかしこの島は断崖絶壁の孤島、ゴジラとチャイルド以外に誰もいるはずは無かった。
そして鈍感なチャイルドもまた、その事を薄々分かってはいた。
だからこそ、余計寂しく感じるのだ。
ギュウウン・・・