ゴジラ5・5‐チャイルドの一日‐






林を抜けたチャイルドは巨大な岩壁へ着いた。
この島は四つの地帯に分かれており、主な寝床である森林地帯、現在地点の山岳地帯、そこを抜けた所にある湖畔地帯、そして海岸地帯だ。
ちなみに鍵島は断崖絶壁に覆われており、まともに島を出入りできるのは海岸地帯だけだ。



ギュオオオオン・・・



チャイルドは自分を奮起させると、眼前の岩肌を登り始めた。
いつもなら回り道をする所だが、今日のチャイルドはチャレンジングな気分だった。
ちょうど手で掴める位の岩塊を探し、そっと掴む。
それを繰り返し、少しずつ岩肌を登って行く。
だが岩肌を半分程登ったその時、突然チャイルドが掴んでいた岩塊が崩れてしまった。
今まで登って来た道を転がりながら戻って行くチャイルド。
そしておもいっきり頭から地面に落下してしまった。



ギュウウン・・・



痛そうに頭を抱えながらチャイルドは起き上がる。
だが流石ゴジラの子供か、100m位の高さから落下したにも関わらず、頭を少し痛めた程度で済んでいた。



少し目を潤わせながらも、チャイルドは再び岩肌を登る。
途中また落ちそうになるがすぐまた別の岩塊を掴み、岩肌を登り続ける。
そして岩肌を登りきると、そこには美しい湖が広がっていた。
水面は朝の陽射しを浴びてきらきらと光輝き、ほとりにはいろいろな小動物達が集まって来ている。
その幻想的な光景に目を輝かせるチャイルド。
この湖畔地帯の巨大な湖はたまにゴジラと水浴びに来る所なのだが、一人で、しかも朝に来たのは今日が初めてだった。
チャイルドは駆け足で岩肌の坂を下ると林を突き抜け、そのまま勢いに任せて湖へと飛び込んだ。
閑静な湖に大きな着水音が響き渡ったかと思うと、水面に水柱が立ち、波紋が広がる。
その音に湖に集まっていた小動物達や水鳥達も一勢に湖から逃げ出していった。



ギュオギュオン・・・



無論、当のチャイルドはそんな小さな事なんて全く気にしていない様だが。
水面に顔を出し、辺りを伺うとチャイルドは再び湖の中に潜って行った。
体全体を使いながら少しずつ深水し、そっと目を開ける。
そこに飛び込んで来たのは・・・一面、水色の世界だった。
いつも見る海の中の世界とは違う、また別の世界。
イルカやクジラはいないが、代わりに米粒程に小さな魚達が数えきれないくらい泳いでいる。
ゆっくりと水底に着地し、上を見上げるとまるで大きなプラネタリウムの様に水面は輝いていた。
水色と白色が織りなすコントラストを黒い魚達が通る。



グュボボボウン・・・



口の中から泡を出し、チャイルドは水面へ向かった。少しずつ近付いて来る水面。
そしてそのまま水色の壁を抜けると、水しぶきと共に眩しい太陽が照る青空が見えた。
頭に藻を被りながらチャイルドは辺りを見渡すが、さっきまで湖にいた動物や水鳥達はもちろんいない。
少ししょんぼりしながらチャイルドは浜に上がり、藻を払い落とした。
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