ゴジラ5‐バランの復讐‐
その日の正午、どのニュース番組もある特集で持ちきりだった。
中端総理大臣が52年前のバラン事件の資料と記事・・・「真実」を公表したのだ。
「衝撃の真実!52年前、自衛隊が犯した史上最悪の過ち!」
「濡れ衣を着せられた悲しき獣・その名はバラン」
「自衛隊幹部一斉謝罪 中端総理辞任へ」
そんな中、ゴジラ達を見送った志真と遥は近隣の街、甲斐市の喫茶店のオープンテラスにいた。
「しかし、中端総理にもびっくりしたな・・・自分から真実を打ち明けるなんて。」
「そうですね・・・」
「まっ、とりあえず真実が世間に公表されたんだし、俺の目的も別の形で達成されたからいいんだけどさ。」
「よかったですね、志真さん。ですが、総理が変わってしまうのですね・・・私、人格者でいい人で私達国民の事を真に考えてくれていた中端総理の事、かなり好きだったんですけど・・・」
「俺もほんと惜しいよ。正直、最近の議員は俺達庶民の事なんかてんで考えてない、口先だけで結局は自己保身が第一の偽善者ばっかだし、口を開けばどっかの誰かさんみたいな事言うのが多くてまた腹が・・・」
「呼んだか?」
その時、2人のテーブルに私服を着た瞬がやって来た。
灰色のタンクトップに青いジーパンと、常に緊張させられる軍服を着ているイメージのある瞬の格好とは考えにくい、軽めでカジュアルな格好だった。
「どっかの誰かさんが、俺の噂をしていたと聞いてな。」
「嘘付け!私服なんか着やがって、どう考えても計ってただろうが!」
「分かっているじゃないか。しかし・・・私服の俺はそんなに驚く事なのか?」
「私服の瞬さんは初めて見ましたから・・・」
「俺もお前の私服姿なんて十数年振りだな。だから全然気付かなかったぜ・・・」
「まぁ、俺がここに来たのはまた別の目的だ。お前達に見せたい物があってな。」
そう言うと瞬はジーパンのポケットから一枚の写真を取り出し、2人に見せた。
「・・・ああ、よかった・・・」
「おっ、おい、これって・・・」
「見ての通り。あとこれは、日本北アルプスで先程撮られた写真だ。」
その写真は飛行機から撮られた航空写真で、写っていたのは北アルプスの美しい山脈の一角、そしてそこを悠然と歩くバランの姿だった。
「永遠の謎」という言葉がある。
バランこそはその謎に生き、その謎を秘めて、日本アルプスにその姿を消したのである・・・
第五章・完
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