ゴジラ5‐バランの復讐‐




グウィアアアアアアウウン・・・



だが、元に戻ったゴジラに近付く一つの影・・・それは、ブリザードバランであった。



「さて、問題はあいつだな・・・」
「こんな事しか出来ないけれど、私が説得してみます。」



ブリザードバランは今だ体内からたぎる憎悪にその身を任せ、地面に倒れ込んだまま動かないゴジラへ向かって行く。
と、その時突然空に閃光が走ったかと思うと、街に雨が降り始めた。
それは只の雨では無く、天空のモスラの翼から零れ出す七色の雨「エターナル・シャワーズ」だった。
それと同時に遥は瞳を静かに閉じ、首から下げられた愛の結晶を掌で包み込み、心からの言葉を地上のブリザードバランに伝える。



――・・・バラン、聞いて。もう人々を憎む事は無いの。



癒しの雫を全身に浴び、力を失われていくブリザードバラン。
その永久凍土の体が遥の言葉と共に溶け始めていく。



――人間は、過ちを犯す生き物・・・けれど過ちを省る事も出来る生き物なの。



グァガアアアウウン・・・



頭を抱え、唸りを上げながらブリザードバランは悶える。
ブリザードバランの心は、憎悪と慈愛の狭間で苦しんでいるのだ。
そんなブリザードバランへ、遥は語りかける。



――私は、いきなり全ての人間を信じてなんて言わないわ。
でも、まずは私達の事を信じてみない・・・?



ブリザードバランの体中から煙が立ち込め、辺りを覆う。
まるでブリザードバランの心の中の様に。
しかし、遥は語りかけるのを止めない。
憎しみだけが宿っているはずであるブリザードバランの瞳から、一筋の涙が伝っていたのが見えていたのだ。



――私達は貴方の存在を拒まない。
貴方の憎しみも、悲しみも、全て受け入れる。
だから・・・ねっ?



グウィアアアアアアウウン・・・



ブリザードバランは天空へと咆吼を上げた。
それと同時にブリザードバランを覆っていた煙が吹き払われ、降り注いでいたエターナルシャワーズも止む。






グウィウウウウウウン・・・



そして焼け野原と化した街を橙色の朝日が眩く照らした時、勇ましい咆吼が街中に響き渡ったかと思うと、まだ薄暗い空へ一つの影が飛んで行った。
赤茶色の体に両脇に広がる皮膜、長い尾。
身も心も洗われ、憎悪から解放され、己を取り戻したバランの姿だった。



「バラン・・・」
「もうあいつが人の前に姿を現す事は無いだろうな・・・半世紀越しの復讐も、終わったんだし。」
「だからこそ、私達はこれからもう第二、第三のバランを生ま出してしまわない様にしないといけませんね・・・それが、彼の望みだと思うから・・・」
「ああ・・・」



風を切り、天空の彼方へと飛んで行くバラン。
そんなバランを志真と遥は同じ思いを持って見送る。
そしてチャイルドを側に置いたゴジラもまた、幾度となく死闘を繰り広げた宿敵をいつまでも見つめていた。
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