ゴジラ5‐バランの復讐‐




と、その時街を破壊していたブリザードバランが足を止め、再び後ろへ振り向いた。
眼光の先にあるのは近隣の山、金峰山だ。
そして辺り一帯に地響きが起こったかと思うと、山が突如噴火を始めた。
山は勢い良く噴炎をあげ、吹き出る溶岩は青い空を赤く染める。
更に山から黒く、巨大な何かが姿を現した。
紅く光る背びれ、湯気を上げる黒い体、そして白く動めく瞳。



ゴォガアアアアアアオオン・・・



そう、それはゴジラであった。
裾野での爆発の直前、ゴジラはすんでの所で地底に潜り、日本列島の地下に広がるマグマの流れを通ってここへ抜けて来たのだ。
だが、約1500度もの高熱を受け続けたその体は1年前、大阪でクリムゾンラドンと戦った時の姿・・・「真・ゴジラ」となっていた。





「だから、甲府市は今立ち入り禁止なんだって!」
「そこを何とか・・・」



その頃、山梨市の交番に志真の姿があった。
ゴジラの手掛りを求める為、ブリザードバランがいる甲府市へと入ろうとした所を警官に見付かり、捕まってしまっていたのだ。



「おたくさぁ、そんなに命を粗末にしたい訳?」
「違いますよ!」


――くっそ、バランいる所にゴジラありって思って来たのに、これじゃあ行けないじゃんか!


「えっと、取材だっけ?だめだめ!それで無くても大変な事になってるのに、一人の記者のわがままなんて聞いてられないんだよ!」
「さっきから何か勝手に言ってますけど、俺だって金の為に記者やってるんじゃないんですよ!無謀な事くらい、承知の上ですから!」
「だめったらだめだ!これ以上逆らうと本署の方へ出頭してもら・・・」



その時、遠くから風が吹き荒ぶ様な音が聞こえて来た。
音はどんどんこちらへ近付いて来る。



「な、何だ?今日は暴風警報なんて出てないはず・・・」
「・・・この音は!」



すると突然志真は席を外し、外へと出ていく。



「き、君!逃げようっていうのか!そうはさせ・・・!」



警官は急いで志真を捕えようとしたが、外から吹いて来た強風によろめき、尻持ちをついてしまった。
志真の方はと言うと交番の壁に捕まり、上手く強風に飛ばされないようにしていた。
すると雲一つ無い一面の夜空から、風に乗って誰かの声が志真の耳に聞こえてきた。
成人前の、若い女性の声だ。



「・・・真さー・・・」



声は風が弱まるにつれ、だんだん近くなってくる。



「私で・・・!志真さー・・・」



そして大きな何かがその場で急停止したかの様に一瞬強い風が交番辺りに吹いた時、声ははっきりと聞こえた。



「志真さーん!」
「やっぱり、やっぱり遥ちゃんなんだなー!」



志真の応答に答えるかの様に夜空が波紋状に歪み、夜空は極彩色に染まる。
だが、よく見るとそれは巨大な翼・・・そう、それはモスラの翼だった。



カクィオオオオウン・・・



モスラの頭の上には遥の姿もある。
もちろん、さっきの声の正体も志真を見付けた遥の叫び声であった。



「待ってて下さーい!今行きますねー!」



と、モスラの頭にある二本の触角の先端が緑に光り、小さな球体状になった。
更に光の球から触手の様な物が出てきたかと思うと、頭上の遥を優しく包み込む。
そしてそのまま光は真っ直ぐ地上へと向かい、遥を志真の前へと運んだ。
さしずめ「光のエレベーター」と言った所だが、あまりに不可思議な光景に志真は驚きっぱなしであった。



「お久しぶりです!志真さん!」
「お・・・おう、久しぶり。」
「こんな所で、一体どうしましたか?」
「それは俺の台詞だって。わざわざモスラまで駆り出して、何処へ行こうとしてたんだ?」
「私はモスラの誘いで、この先の甲府市へ。」
「おっ、奇遇だな!俺も甲府へ行こうとしてたんだ。けどお巡りさんに捕まっちまって・・・」
「仕方ないですけどね。今、私達が行こうとしているのはあまりにも危険な所ですから・・・」
「でもモスラが遥ちゃんを連れてまで行こうとしているんだ、やっぱり何かあるな。」
「はい。もう志真さんは薄々分かっているとは思いますが・・・」



するとその時、何か大きなものが走ってくる様な地響きが辺りにこだました。
その地響きは段々と近くなって来る。



「なっ、何だ!?」
「どうやら追い付いてきたみたいですね。」
「へ、へっ?」
「私達、ここへ来る前に少し寄り道してたんです。その子が遠くから『力になりたい』って言ってまして。」
「新しい怪獣か?」
「いえ、志真さんは絶対知っています。これからの危機を救ってくれる、小さき勇者です。」
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