ゴジラ5‐バランの復讐‐







一方、富士の裾野から飛び立った雲は既に山梨県・甲府盆地へ達していた。
雲が飛び去った後は季節外れの霰が降り、容赦無く街の人々や物に降り注いで行く。
その被害は大きく、霰による負傷者は後を立たずじまいで、農作物や街の建物なども例外では無かった。
雲の後方からは自衛隊・空軍の戦闘機部隊が雲の動向を追跡している。



「こちらクラウド1。本部応答願います。」
「こちら本部。現状を報告せよ。」
「只今謎の雲は甲府盆地上空をマッハ3で飛行中。本隊は約2000m後方から雲を追跡中です。」
「把握した。引き続き追跡を続けてくれ。」
「了解、了解。」



と、その時上空を平行に飛行していた雲が突如降下し始めた。
その先にはネオンの照明輝く甲府市の繁華街が見える。



「こちらクラウド2、突如雲が降下開始!」
「距離に十分警戒しつつ、雲へ接近せよ!」
「了解、了解!」



戦闘機は一勢に加速し、雲との距離を縮めていく。
だが雲もまた後方から迫る戦闘機を察したのか、更に加速し戦闘機と距離をとる。
そして雲は戦闘機を引き離すと、勢いを付けたまま甲府市に降り立った。
繁華街はまるで巨大な隕石が落下して来た様な衝撃を受け、街の中央には円形状のクレーターが出来上がった。
賑やかだった街は、一瞬の内に静まり返った。



「こちらクラウド3、目標が市街地に上陸!」
「市街地での戦闘は許可されていない・・・ただバランのみ、特例が認められているが・・・」



するとクレーターの中央に漂っていた雲から凄まじい霧状の冷気が放射線を描いて放出された。
冷気を受けた建物は固く凍り付き、クレーター内の建物は冷気の衝撃によって全て崩れ去った。
それと同時に雲の中から白く、巨大な手が姿を現す。
更に順を追って白い足・尾・背中が現れていき、雲の中から翠の眼光が見えたその瞬間、雲が吹き払われ、雲に潜んでいた影がその全貌を見せた。
背中に生えた氷柱の様な鋭い棘、体長以上に長い尾、体から溢れる冷気、そして翠の色をした冷酷な瞳。
それは全身が雪を思わせる白い色をしているが、見粉う事無きバランであった。
いや、永久凍度の力を得た「ブリザードバラン」と言った所か。



グウィアアアアアアウウン・・・



「こちらクラウド3!街に着陸した雲の中から白いバランが出現!」
「こちら本部。白いバランとはどういう事だ?」
「体色が白く、体長も目測100m以上はあるのですが、姿はバランに酷似しています!」
「・・・よし、市街地での戦闘を許可する!全力で食い止めよ!」
「了解、了解!」



乗組員達は一斉にミサイル安全装置を解除すると、ブリザードバランへとミサイルを発射した。
ミサイルは直線を描いてブリザードバランへ向かって行くが、命中する寸前にブリザードバランの体から溢れ出る冷気の壁に動きを止め、そのまま地面に落ちて爆発を起こす。



「ミサイル、目標に着弾直前に爆発!」
「な、何っ!」
「もう一度、ミサイル発射だ!」



部隊は再度ミサイルを発射する。
だがやはりブリザードバランの冷気の壁に阻止され、悪戯に被害を広げるだけだった。
更に背後の敵に気付いたブリザードバランは後ろへ振り向くと、口中に空気を溜め始めた。



「総員、直ちに待避!」



部隊長はブリザードバランの行動に気付き、すぐ乗組員へ指示を出した。
しかし時既に遅し。ブリザードバランは口内で渦を巻く真空の弾丸を自らの冷気で極冷の弾丸「極冷圧弾」に変化させると、部隊へ向かって撃ち出した。



パゴォォォォン・・・



究極なまでに圧縮された氷の弾があっという間に部隊を飲み込み、乗組員もろとも氷砕させた。
更にブリザードバランはもう一撃極冷圧弾を街へ撃ち出し、氷の弾丸で全てのものを凍らせ、砕いて行く。
そして弾丸が過ぎ去った後には道中の建物を裂いて数十km先まで続く氷の道が出来た。



グウィアアアアアアウウン・・・



だがブリザードバランの内に秘めた激しい怒りはまだ収まっていない。
振り返って一面氷付けの街を睨み付け、街を蹂躙する。
絶対冷度の氷の中に閉じ込められた人々を、建物の中で身動きが出来なくなってしまった人々を、ブリザードバランは容赦無く足で葬った。
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