ゴジラ5‐バランの復讐‐






同じ頃、自衛隊本部に帰って来た瞬が昨日黒沼博物館で知った事を、上官に問いただしている所だった。



「さあ、知らないな。」
「嘘を付くな!貴様達の付いた偽りは、全て把握している!」
「瞬特別大佐、上官に対してその態度は何だ。確かにお前は優秀な自衛隊員。だが本部はお前の首など、いつでも簡単に跳ねる事が出来るのだぞ!」
「嘘で塗り固められた様な組織に敬意を払う気は無い・・・さあ答えろ。52年前、バランは本当に危険な存在だったのか!本当に駆逐する必要があったのか!」
「知らんな。」
「俺は本気で日本を守る自衛隊の一員である事に誇りを持っているんだ!その誇りを、貴様達は今まで踏みにじってきていたと言う事だぞ!」
「そうか。」
「どうしてもシラを切り通す気だな。ならば俺はこんな組織など、早々に辞めさせて貰う。」



そう言うと瞬は胸ポケットから一つの封筒を取り出し、その封筒を上官の机に叩き付けた。
その封筒には「辞表」と書かれている。



「大佐にまで昇りつめたと言うのに・・・勝手にしろ。」



上官の言葉を聞いた瞬は部屋を立ち去ろうとした・・・が、扉を開けようとする手前、瞬は上官の方を向いてこう言った。



「これで俺はもう、自由の身だ。そうだな・・・今話した真実を世間に公表しようか。」
「!」



その言葉に、今まで表情を崩さずにずっと黙っていた上官が反応した。



「俺の知り合いに日東新聞の記者がいる。そいつにこの事を話せば、世間に公表してくれるだろう。」
「ふん、そんな事を世間が信じるものか。」
「信じる、信じないの問題では無い。俺はただ真実を公表するだけだ。一先ず、情報元が元自衛隊特別大佐とでも言えば、少しは信頼されるか?」
「・・・お前にもう、誇りは無いのか・・・!」
「何を言う。今となっては、こんな組織に忠誠を誓ってきた事すら馬鹿馬鹿しいと思っている。それに貴様達の方こそずっと俺達の誇りを踏みにじり続けたんだ、今更だな。」
「むっ・・・!」
「それに、俺の知り合いはとても無鉄砲な奴だ。貴様達が圧力を掛けて真実を伏せよう物なら、何処かのテレビ局をジャックしてまで真実を公表しようとするだろう。」
「・・・!」
「では、失礼する。」



そう言い残すと瞬は扉を開け、今度こそ部屋から出ようとした。
だがその時、上官が瞬を制止した。



「待て・・・話を聞こう。」
「どうした。やはり言えない事でもあるのか?」
「もし、お前が自衛隊を辞めずに真実を公表しないと言うなら、更なる真相を話してやってもいい・・・」
「・・・分かった。」



瞬は扉を閉め、再び上官の前へと戻った。



「短刀直入に言おう。お前が知っている事は、全て本当だ。」


――やはり・・・


「バランは52年前、確かに岩屋村や東京の街を破壊した。だが、その発端は当時の自衛隊による環境破壊も辞さない誘導作戦が原因だったとされる。もし誘導作戦を行っていなければ、バランは北上川を出る可能性は低かった。明らかな過失だ。
だからこそ、それを隠し通す為にはバランに関する全ての記事・資料を、そしてバランの存在そのものをこの世から極力消し去る必要があったのだ。当時の記事や資料自体は今も総理大臣の手で厳重に保管されているが。」
「『第一次日本震災」に関しても、同様の理由で伏せているのか。」
「お前の情報主は相当この事に関して知っているようだな・・・そうだ。隠し通すとした以上、証拠は徹底的に隠蔽しなければならないからな・・・」
「・・・把握した。心配するな、俺は約束は守る。今後も自衛隊に残留し、今の言葉も世間に公表しない。」
「そうか・・・」
「だが、最後に一つだけ言わせて貰おう・・・俺はもう、国家や貴様達の為には戦わない。俺が自分に誓った『誇り』と、罪無き人々の『平和』の為に戦うだけだ。」



そう言うと瞬は今度こそ部屋から出ていき、会議室の扉が重く閉まった。


――・・・瞬庚。
この組織の為にも、本当はお前を失う訳にはいかないのだ・・・!
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