ゴジラ5‐バランの復讐‐







夕刻、沈み行く太陽が富士山を橙色に照らしていた。
だがその下ではゴジラとバランが戦いを続けていた。
状況はバランが優勢であり、その長い尾でゴジラの首を絞め上げている所だった。



グアアアア・・・



苦痛の声を上げるゴジラ。
背びれを青く光らせ熱線を放とうとするも中々上手くいかず、体内に行き場を失ったエネルギーが溜っていくのみだった。
更にバランは口内に空気を溜め、真空圧弾を撃とうとする。



グルルルル・・・



だがゴジラは諦めない。
精一杯の力を振り絞り、自らの体を絞め上げるバランの尾を力強く掴んだ。
そしてバランが一瞬怯んだ、その隙にゴジラは唸り声を上げ、体内のエネルギーを「放射波動」にして放った。



グガアアアン・・・



凄まじい波動エネルギーにバランは尾を解き、後ろへ弾き飛ばされた。
裾野に震動が響く。



更にゴジラは背鰭を青く光らせると、立ち上がろうとするバランに熱線を放った。
熱線をまともに喰らい、再びバランは後ろへ弾き飛ばされる。
それでも三度立ち上がろうとするバランにゴジラは尾を一撃を浴びせようとするが、バランはそれを一瞬早く察知し、自らも尾の一撃を放った。
尾と尾がぶつかり合い、ようやくバランは立ち上がると両脇の皮膜を広げ、念動波を放った。
強烈な突風に対してゴジラは必死に地面を踏み締めて耐える。
その隙にバランは口内に空気を溜め、真空圧弾を撃とうとする。
これまで以上に強力に吸収・圧縮された空気の弾丸は、バランの口から出ん勢いだった。



スゥアアアアアアアア・・・



ゴジラもまた背鰭を光らせて熱線を放つ準備をした。
その背びれは以前とは比べ物にならない程、青く輝いている。



パチッ・・・パチパチッ・・・



戦闘が始まった時の如く、二体はお互いを眼力で牽制する。
そしてバランは真空圧弾を、ゴジラは放射熱線を同時に放った。



ドコオオオン・・・

シュゴオオオオオオオ・・・









・・・翌朝。
富士の裾野で起こった大爆発は、各新聞誌のトップを飾った。
更に裾野には、この爆発にゴジラとバランが関わっていると知って来た志真の姿があった。



「やっぱり報道規制に引っ掛かっちまった・・・博士、すいません・・・」


――・・・しかし、これは酷いな・・・



広大な裾野を見渡して志真は呟く。
しかしながら志真の言う通り裾野は生気が失われた様に静まり返り、一面焦土と立ち煙が広がるのみだったからだ。
そしてこの光景の要因であるゴジラとバランも、ここにはいない。



「ゴジラ、お前勝手にどこ行ってるんだよ・・・可愛い息子を置いてってよ・・・」


――気掛かりなのは、バランもそうだ・・・
このまま悪の怪獣のまま消えるなんて、あまりにも可哀想過ぎる・・・
でも、俺にはどうしようも出来ない・・・


「・・・ほんと、無力だよなぁ。俺って・・・」



志真は大の字になって焦土に倒れ込み、果てしなく広がる青空を眺めた。
その目には、もういつもの様な気力は失われていた。
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