ゴジラ5‐バランの復讐‐
同刻、瞬が向かった扉の先にはやはり志真が最初見た光景と同じ物が広がっていた。
薄暗く、あまり広くは無い部屋の中央を複数のスポットライトが射す。
ライトを浴びているのは、バラノポーダの化石だ。
「これがバラノポーダの化石・・・」
「近くで見てみて、どう思ったかね?」
「実物は初めてです。しかし、なぜわざわざこれを見せる為に私を呼んだのですか?」
「じゃあ本題に入ろう。君は、日東新聞の志真哲平君を知ってるかね?」
「・・・知っています。あいつとは腐れ縁のような関係ですので。」
「ほう、それは?」
「・・・あいつは昔から合わない人間だったんです。考えもせずに突っ走る、私がああ言えばあいつはこう言う・・・そんなのと高校まで一緒でしたら、嫌でも忘れられませんよ。」
「はっはっはっ!君達は全く同じ様な事を言うな。」
「君・・・達とは?」
「実は君をここに呼んだのは、他ならぬ志真君なんだ。」
予想もしなかった人物の名前を聞いた瞬は、驚愕の表情を浮かべた。
――志真が、俺をここに・・・?
「彼は私に今から話す真実を君にも話して欲しい、と言ってきた。それがこの事を世間に公開する、と言う条件付きでね。」
「真実?」
黒沼博士は瞬に「真実」を告げた。
なぜバランが「婆羅陀巍山神」と呼ばれる様になったのか、52年前にバランは如何なる思いで人類に立ち向かったのか、そしてなぜそれらの事がひた隠しにされていたのか・・・
「・・・ば、馬鹿な・・・!!」
「今話した事は事実。立証する証拠もある。」
――全ては上層部の・・・国の策略。
自分達の都合に悪い事を、半世紀に渡って悉く隠蔽し続けていたのか・・・!
そして、それによってバランは「被害者」から「加害者」となった・・・!
「おそらく志真君は、検閲による情報統制でこの事が伏せられる事を考慮したのだろう。君にだけはどうしても、真実を伝えたかったようだ。」
「・・・」
「ショックを受けるのも無理は無い。だが君はその国家の傘下で、人々の平和を守って来たんだ。」
「・・・情報、感謝します。後は直接、自分で確かめて来ます。」
瞬は黒沼博士に軽く会釈をすると、急ぎ足で部屋を去って行った。
「真実に近付けるのは、案外彼なのかもしれないな・・・」