ゴジラ5‐バランの復讐‐
一方、バランは富士山の下に広がる広大な裾野を歩いていた。
だが突然歩みを止め、眼前の先にいる「何か」を憎悪の眼で睨み付けた。
グウィウウウウウン・・・
眼前にいるのは、紛れも無いゴジラであった。
ゴジラもまた体を前に乗り出してバランを威嚇する体勢を取り、眼前の相手を決意の眼で睨む。
グルルルル・・・
グィィィウウ・・・
唸りを上げ、互いを威嚇しあう宿命の二体。
辺りはまるで生気が無くなった様に静まり返り、戦場と化した富士の裾野に一つの風が吹く。
ディガアアアアアアオン・・・
先に攻撃を仕掛けたのはゴジラだった。
背びれを青く光らせ、口から熱線を発射する。
だがバランはすぐ両脇の皮膜を広げると、そのまま自分に皮膜を纏う様な体勢をとった。
そしてゴジラの熱線は皮膜の壁「皮膜壁」によってガードされてしまった。
自分の熱線をいとも簡単に防がれたゴジラは驚きの表情を見せるが、その隙にバランは得意気な顔を見せると、背中の棘をゴジラへ向かって発射した。
無数の棘がゴジラへ飛んで行き、ゴジラの体に全弾命中して爆発、爆煙を起こす。
しかし、バランは口内に空気を吸収し真空の塊を作りだしたかと思うと、爆煙の先のゴジラへ向かって真空圧弾を打ち出した。
真空の弾丸が爆煙を裂いてゴジラへ向かい、爆煙の中で更に巨大な爆発が起こった。
裾野に轟音が轟き、爆炎は瞬く間に立ち込める煙を打ち払い、また新しい爆煙を産み出す。
だが、バランは静かに爆煙の先を凝視した。
その後ろから、ゴジラが歩いて来ていたからだ。
グァウウウ・・・
ゴジラは歩みを早足に変えると、そのままバランへと突っ込んでいった。
バランもまたゴジラへ向かい、互いに両手を組み合い力を込めて押し合う。
復讐心の力をも糧にしたバランは怒りに任せてゴジラを怒涛の勢いで押し込んで行く。
段々とゴジラの足は、体は後ろへ押されてしまう・・・が、ゴジラも復讐に取り憑かれ、もはや悪魔と化したバランに負けるわけにはいかなかった。
ディガアアアアアアオン・・・
底力を絞り出したゴジラはバランを押し返し、バランはそのまま地面に倒れた。
更にゴジラは起き上がろうとするバランの尾を掴み、何度も持ち上げては大地に叩き付ける。
グアアアアン・・・
打撃を半減させる皮膚を持つバランですら強烈なダメージを受けるこの連撃に、バランは抵抗する事が出来ない。
最後にゴジラはバランを高く持ち上げ、投げ飛ばした。
グルルルル・・・
が、この連撃を受けてもなおバランは立ち上がり、ゴジラを強く睨み付ける。
この身が砕け散っても、バランは眼前の仇を完膚無きまでに叩き潰す事しか考えていない様だ。
ゴジラもまたそれに応え、バランの眼差しをただ見つめている。
そして起き上がるや否や、バランは憎悪を剥き出しにしながらゴジラに突っ込んんだ。
この死闘は、まだまだ終わりそうに無かった。