ゴジラ5‐バランの復讐‐






そして愛鷹山の荒野に差し掛かった頃、ゴジラの視界に1つの影が割り込んできた。



「ゴジラ・・・お前何する気だ!」



そう、志真だ。
ゴジラは志真を見下す体勢で今にも息が切れそうな志真の言葉を聞いたが、またすぐ前に歩み始めた。



「無視すんなよ!俺とお前はそんな仲じゃないだろ!」



しかし、ゴジラは歩みを止めない。
志真が何度呼び掛けても、ただ前へ進んで行くのみだった。



「お前が何考えてるか全然分からないけど・・・とりあえず、お前をこのまま行かせるわけには行かないんだ!」



すると突如ゴジラが歩みを止め、顔を背後の志真へ向けると、その大きな眼で睨む。
心の中で少し恐怖を感じつつ、これ幸いと志真はゴジラを説得しようとした。



「なっ、だから島へかえ・・・」



ディガアアアアアアオン・・・



が、ゴジラは不意を突く様に志真へ咆吼を浴びせた。
あまりに大きい衝撃に志真はその場に尻持ちを付き、震える唇からは言葉も出なかった。



「・・・!」



その様子を見たゴジラは、再び富士へと進み始めた。
辺りにゴジラの歩く振動が響く。



――あの鋭い眼、何か使命を帯びた感じの眼だった。
そしてさっきの咆吼、あれは俺に「近寄るな」って言ってたんだ・・・
今ゴジラはしようとしている事は、俺には及ばない事なのか・・・!



志真は立ち上がると、遠く遠く、もう見えなくなっていくゴジラをいつまでも見つめた。
悔しさと苛立ちを、胸に秘めながら。






同刻、篭坂峠を下る一つ巨大な影があった。
四つん這いになり、森を悠然と歩くその姿・・・バランだ。
バランもまた、富士へ向かっていたのだ。



グウィウウウウウン・・・



高らかに咆吼を天に放つバラン。
その咆吼を聞いて周りの小さな鳥達や動物達が、蜘蛛の子を散らした様に逃げ出して行く。
しかしバランをそんな事は全く気にせず、峠を下り終えた。





この光景は近隣住民によりすぐ自衛隊に報告され、自衛隊はただちに空軍を現地へ飛ばした。
その際ある男にも召集が掛かったが、彼は何故か本部にいなかった。
それもその筈、彼・・・瞬は黒沼博士に呼ばれ、黒沼博物館にいたからだ。



「ここか・・・」



瞬は黒沼博士によって、あの部屋の前に連れて行かれていた。
志真も二度に渡って訪れた、「侵入禁止」の部屋だ。



「さあ、ここだ。遠慮はいらないから入りたまえ。」
「はい・・・」



瞬は固く閉ざされた「侵入禁止」の扉を開いた。
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