ゴジラ5‐バランの復讐‐







その夜、東京はやけに風が吹き荒れる日だった。
人々は何も知らず、それぞれ違う思惑を抱えて繁華街を歩いて行く。
この後、どんな惨劇が待ち受けているかも分からずに・・・





同刻、東京国際空港では東京へと近付く謎の影を捉えていた。



「管制官、管制官、東京へ近付く謎の陰影を捉えました。」
「旅客機では無いのか?」
「いえ、明らかに形状が違いますし、とても旅客機がこんな速度を・・・」
「よし、早く航空自衛隊に連絡だ。何処かの国の戦闘機かもしれない。」
「管制官!管制官!影はもうこちらへ・・・うわあぁぁぁ!」



その瞬間、管制塔が何者かが放った真空の弾丸によって破壊された。
更にその主が空港の滑走路に降り立ち、凄まじい地震と砂埃が起こる。
そして砂埃が鎮静化した時、主が姿を現した。



グウィウウウウウウン・・・



長い尾、両脇の皮膜に背中から生える無数の棘、腹に消えない傷痕を持った赤茶色の怪獣。
そう、見紛う事なきバランだ。



グウィウウウウウウン・・・



バランは滑走路を足で踏み付け咆吼を上げると、ゆっくりと近くの繁華街へ歩いて行く。
繁華街の人々は一体何が起こったか分からないままただ逃げ惑うのみだったが、遥か後方から降ってきたバランの巨大な棘が無情にも人々を瓦礫の底に埋めた。
その上空を、自衛隊の戦闘機が飛んで行く。



「こちらエアー1。目標を確認・・・バ、バランです!」
「こちら本部。全隊員に次ぐ。威嚇射撃は行わず直ちにミサイルを使用、バランを駆逐せよ!」
「了解、了解。」



乗組員達はすぐ安全装置を解除すると、ミサイルを発射した。
十数ものミサイルは並行に進みながら、バランへ向かって行く。
だがバランは「針千本」を繰り出し、ミサイルを破壊する。



「こちらエアー4!隊長、ミサイルが!」
「もう一撃発射だ!総員用意!」
「了解・・・うっ、うわあっ!」
「エアー4、どうした!応答せよ!」



バランの棘により、戦闘機が一つ撃墜された。
撃墜された戦闘機は繁華街へ落下し、火の手を広げて行く。



「ミサイル、発射!」



部隊はもう一度ミサイルをバランへ向けて発射した。
全てのミサイルはバランに直撃するも、バランには全く通用していない。
むしろ、更に怒りを掻き立てられた様だ。
バランは戦闘機に目も暮れず、辺りの建物を破壊していく。



「こちらエアー5!どうしますか、隊長!」
「もうすぐ陸上自衛隊の戦車が来る!それまで何とか引き付けるんだ!」
「了解!」



戦闘機は一勢にバランへ向かって行った。
バランは手で戦闘機をなぎ払おうとするが、戦闘機はすんでの所でかわして行く。
針千本も繰り出されたが、戦闘機が一機破壊されたのみだった。



グウィウウウウウウン・・・



するとバランは皮膜を広げたかと思うと、体から凄まじい突風「念動波」を起こした。
猛風は瞬時に戦闘機を飲み込み、押し返す。



「こちらエアー1!操縦が効きません!」
「何とか耐えるんだ!もうすぐ応援が来る!」
「りょ、りょうか・・・う、うわぁぁ!」



風の勢いに耐えられず、一機の戦闘機が地面へ墜落し、爆発した。
それと同時に吹き荒れていた風が止む。



「終わった・・・か?」
「た、隊長!」
「はっ・・・」



部隊長がバランに目を向けた時には既に、バランの口の中で空気が塊を成していた。
そして、バランは戦闘機へ真空圧弾を発射した。



ドコオオオン・・・



「ミサイル、発・・・」



その一撃で、全ての迎撃部隊が壊滅した。
だが、バランはまだ暴れる事をやめない。
たとえビルを壊しても、人々を踏み付けても、辺り全てを灰にしてもなお、彼の只ならぬ怒りは収まらかった。



グウィウウウウウウン・・・



そんなバランに、今度は戦車隊が迎え撃つ。



「バラン発見!駆逐します!」
「街を、人々をこんなに・・・総員、撃て!」



戦車隊は砲台をバランへ向けると、一勢に射撃を開始した。
おびただしい砲弾がバランへ向かい、爆発する。
しかし当のバランには効いておらず、より猛狂わせるだけだった。



「隊長、砲弾が効いていません!」
「諦めるな!何としてでもここで食い止めるんだ!」
「りょ、了解!」



戦車隊は再びバランに攻撃を仕掛ける。
だがどれだけ砲弾を打ち込んでもバランが止まる事は無かった。



グウィウウウウウウン・・・



業を煮やしたバランは四つん這いの体勢になって地面に手を叩き付け、戦車隊へ「岩流」を放った。
列を成した岩塊が戦車を襲い、大半の戦車を消し飛ばした。



「馬鹿な!たった一発だぞ!」
「だ、第二波接近!」
「うっ・・・うわぁぁぁぁ!」



バランの恐るべき力によって、戦車隊までも簡単に全滅を迎えた。
が、バランの怒りは収まる事を知らず、バランが皮膜を広げ飛び去った後には廃墟と死体のみが広がっていた・・・
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