ゴジラ5‐バランの復讐‐







夕方、志真は再び黒沼博物館に赴いた。
だが予めアポイントを取るのを忘れ、受付に止められてしまった。



「何とかできませんか?どうしても伝えたい事がありまして・・・」
「しかし、博士と会うにはアポが必要ですので・・・」
「そこを何とか・・・」
「どうしたのかね?」



そんな中現れたのは、他ならぬ黒沼博士だった。



「博士!」
「あの、ここにどうしても博士に会いたいと言う方がいらっしゃるんですが、アポを取っていないそうで・・・」
「んっ、何だ志真君じゃ無いか。君、この人は私の知り合いだ。通していいぞ。」
「はっ・・・はい、分かりました。」
「志真君、こっちだ。」



黒沼博士は志真を以前連れて行った部屋へと連れて行く。
志真は目はつい化石の方へ行ってしまうが、すぐ博士に話しかける。



「博士、先程はありがとうございました。」
「いやいや。君には少しばかり調査を依頼していたから、丁度良かったよ。」
「その件ですが、1900年頃に起こった事以外、収穫はありませんでした・・・」
「そうか。やはり、第一時日本震災に関しては伏せられていたか・・・」



「えっ?」
「いや、これに関しては後で話そう。さあ、着いたぞ。」



2人は再び「侵入禁止」の扉の前へ来た。



「中には私の友人が来ているが、気にしないでくれ。」
「実はその方に用がありまして。では、失礼します・・・」



扉を開き、中に入る志真。
中は以前と同じくバラノポーダの化石があるだけだったが、その近くに60過ぎと思しき老人が化石を眺めていた。



「おお、こんにちは。」
「こんにちは。日東新聞の志真と申します。貴方が源さんでしょうか?」
「確かにわしは源と申しますが・・・わしに何か?」
「私は『第一次日本震災』について調査をしているのですが、貴方がかつて震源地である北上川上流に住んでいたと聞きまして、それに関してお話を伺いに参りました。」
「そうですか・・・貴方もバラダギ様について触れようとしているのですね・・・」
「バラダギ・・・婆羅陀巍山神、ですね?」



源は一呼吸すると、静かに口を開いた。



「そうです。バラダギ様・・・いや、怪獣バランは古くからわしらにとって崇拝の存在であり、また同時に畏敬の存在でした。ですがその姿を現したのは、丁度一世紀程前と言われています。」
「約100年前・・・」
「その日はとてつもない地震があったそうです。山は割れ、空は揺れ、人々は村に古くから伝わる山の神『婆羅陀巍山神』の怒りと恐れました。やがて地震が治まった時、村の奥にある湖から巨大な怪獣が姿を現し、村を破壊していきました。それを見た人々はその怪獣こそが『婆羅陀巍山神』であると思い、それ以降人々は怪獣バランをバラダギ様として崇拝するようになったそうです。」


――約100年前って、第一次日本震災があった頃だ!
となると、やはり第一次日本震災は真実・・・


「そうだったのですか・・・するとやはり、その地震は第一次日本震災の事ですよね?」
「恐らくは。」
「なるほど・・・第一次日本震災に関して、全く資料が無かったもので・・・」
「それは当然でしょう。第一次日本震災はバランと密接に繋がっていますし、この事実も伏せられていますが・・・58年のバラン暴走は、当時の自衛隊が湖に毒物を散布してバランを炙り出す・・・さながら竜の逆鱗に触れる、もしくは虎の尾を踏むような事を犯した結果によるものでした。政府としては、極力バラン関連の情報は伏せたいのでしょうね・・・」
「だとすれば、都合の良すぎる話ですね・・・自分達で事を起こしておきながら、自分達に不利だと知ったら手の平を返す・・・」
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