ゴジラVSカイザーギドラ
ここはもう、どんな街かも分からなくなった街。
辺りに広がるのは廃虚、廃虚、廃虚・・・かつて賑わったであろう街は灰色の光景を晒すのみだ。
空には暗雲、荒廃した街の暗さをを余計に醸し出す。
と、そこへ凄まじい雷が鳴り、街の中で対峙する二つの影を写した。
ディガアアアアアアオン・・・
一つの影はゴジラ。
「怪獣王」の名を欲しいままにする、水爆が生んだ怪獣。
ギィィィィィィン・・・
グァララララララ・・・
そしてもう一つの影は、カイザーギドラ。
「帝王」と恐れられ、ギドラ一族の片翼を担う宇宙最強の怪獣の一体。
二体が何故対峙する事となったのか、それは誰も知らない。
だが、少なくともここにいる二体は目の前の敵と闘い、倒す。
それだけでよかった。
ギィィィィィィン・・・
グァララララララ・・・
先に攻撃に出たのはカイザーギドラだ。
その巨体を動かし、ゴジラへ突っ込んで行く。
ゴジラもまたカイザーギドラへ向かって行き、激しく取っ組み合う。
力ではカイザーギドラが上回っている様で、少しずつゴジラの足を後ろへ押していく。
グルルルル・・・
負けるか、とゴジラも全身に力を込めてカイザーギドラを押し返す。
しかし、カイザーギドラは左足でゴジラを蹴り付けてゴジラを後退させると、三ッ首から反重力光線「デストロイド・カイザー」を放った。
反重力光線を受けたゴジラの体は簡単に浮き上がり、空中に固定される。
そこからカイザーギドラは三ッ首を動かし、ゴジラを廃虚に叩き付けた。
廃虚はゴジラの直撃によって倒壊し、地面に溢れる瓦礫の一部分となる。
ゴジラもまた瓦礫と共に地面に落下したが、すぐに立ち上がって背鰭を青く光らせた。
パチッ・・・パチパチッ・・・
ゴジラの口内に青色の火炎が焚り、真っ直ぐ眼前のカイザーギドラを睨み付けると、青き光線「放射熱線」を放った。
シュゴオオオオオオオ・・・
熱線は勢い良くカイザーギドラへ向かって行き、カイザーギドラの胴体に直撃した。
直撃した箇所から爆発が起こり、カイザーギドラを昏倒させる。
その間にゴジラはカイザーギドラに接近して右首を掴むと、渾身の力を込めて後ろへ放り投げた。
カイザーギドラの体は弧を描いてゴジラの背後へ飛び、そのまま地面にぶつかる。
更にそこからゴジラは背鰭を光らせ熱線を発射し、カイザーギドラに追い打ちをかけた。
ギィガアアアン・・・
グァウウウウウ・・・
少し足元がふらつきながらも、まだカイザーギドラは立ち上がった。
ゴジラは勢いを付けて振り返り、その太い尾をカイザーギドラに叩き付けようとする。
が、カイザーギドラは軽く飛翔してゴジラの尾撃をかわすと、足からゴジラに突撃した。
何万tもの体重が掛かったカイザーギドラの強烈な蹴りを見舞い、ゴジラは地面に倒れ込む。
ギィィィィィィン・・・
グァララララララ・・・
ゴジラは何とかカイザーギドラを押し退けて起き上がろうとするが、カイザーギドラはゴジラの体を何度も踏み付け、ゴジラを抑え込む。
そしてゴジラを蹴り上げたかと思うと、ゴジラの左腰・右肩・首元に噛み付き、「ギガ・ドレイン」を駆使してゴジラのエネルギーを吸収した。
グアアアア・・・
ゴジラの身体から青色をしたエネルギーがカイザーギドラの首へと流れ、カイザーギドラの体内に消えて行く。
必死に抵抗するゴジラだが、エネルギーを吸われ続けているこの状況では何も出来ない。
やがて腕の力も抜けて力無く垂れていき、ゴジラの目も閉じかけて来た。
だが、ゴジラの頭に幾度となく人類や怪獣達と闘って来た、自分の姿が走馬灯の様によぎった。
このままでは自分の負けとなってしまう。怪獣王として君臨してきた自分に、そんな事は許されない。脈々と流れる血が、プライドが許さない。
・・・ふざけるな。
ディガアアアアアアオン・・・
ゴジラは再びその目を見開くと全身に青い光の筋を輝かせ、「放射波動」を放った。
ギィガアアアア・・・
グァウウウウウ・・・
放たれた凄まじい波動はカイザーギドラの首から体内に逆流し、ゴジラをカイザーギドラの三ッ首から解放させた。
地面に着地したゴジラはそこから放射熱線を放ち、カイザーギドラを下がらせる。
カイザーギドラは屈辱とばかりに反重力光線を放ってゴジラの自由を奪おうとするが、ゴジラは寸前で光線を回避し、二度目の熱線を放つ。
流石のカイザーギドラも三発もゴジラの熱線を受け、疲労が見える様になった。
それを見越し、ゴジラは一気に決着を付けようと三度熱線を放った・・・が、カイザーギドラは飛翔してゴジラの熱線を避け、そのまま反重力光線を地上のゴジラへ放つ。
今度ばかりは反重力光線に掴まり、ゴジラは地面を引きずられながら廃虚に叩き付けられる。
瓦礫に埋もれたゴジラへとどめとばかりにデストロイド・カイザーを放つカイザーギドラだが、それに気を取られ瓦礫が青い光を放っている事に気付かなかった。
シュゴオオオオオオオ・・・
瓦礫の中からゴジラが放った熱線は、カイザーギドラの中央の首に見事に命中した。
爆炎を上げ、カイザーギドラは地面に落下する。
中央の首は熱線によって焼け焦げ、活動するのが精一杯だ。
左右の首は中央の分までカバーしようと反重力光線を乱射するが、ゴジラはそれをかわしながらカイザーギドラへ接近し、背鰭を光らせ今度は両腕にエネルギーを集めると、青き腕「B・クロー」でカイザーギドラの胴体を切り裂いた。
ギィガアアアアア・・・
グァウウウウウウ・・・
先程熱線で傷を付けられた所を突かれ、カイザーギドラは体勢を崩して地面に倒れる。
そのままゴジラはB・クローでカイザーギドラの左右の首を何回も殴って攻撃する。
左右の首も段々と力を失っていくが、カイザーギドラもまた帝王の誇りがあった。
そう、宇宙に名を轟かせる帝王がここでやられるわけにはいかないのだ。
ギィィィィィィン・・・
グァララララララ・・・
カイザーギドラは左右の首でゴジラのB・クローを受け止め、そのままエネルギーを吸収した。
すかさず首を振り払うゴジラだが、腕からの光は消えている。
更にカイザーギドラはゴジラの足元に反重力光線を放ってゴジラを向こうへ弾き飛ばした。
その隙にカイザーギドラは立ち上がり、ゴジラもまた瓦礫を撒き上げ勇々しく立ち上がる。
ディガアアアアアアオン・・・
ギィィィィィィン・・・
グァララララララ・・・
闘いが始まる前の様に対峙しながら咆吼を上げ、互いを威嚇しあう二体。
そしてゴジラは放射熱線を、カイザーギドラはデストロイド・カイザーを放った。
熱線と光線は激しくぶつかり合い、街中の廃虚をも巻き込む大爆発を起こした。
グルルルル・・・
体に吹き付ける凄まじい爆風に耐えるゴジラ。
ゴジラは倒れそうになりながら、爆風が止むまでただ正面だけを見据え続けた。
まだ終わっていない、目の前の敵を倒すまでは。
しかし廃虚すら消えた街に、カイザーギドラの姿はなかった。
何処へ行ったのかとゴジラは辺りを見渡すと、翼を広げて空へ去って行くカイザーギドラが見えた。
どうやらこの勝負はお預けらしい。
本当にいつも、宇宙怪獣はそうやって勝負を引き伸ばす。
見ていろ、次こそ完全な勝利を掴んでやる。
ゴジラは決意の眼差しで宇宙へ去ったカイザーギドラを見つめていた。
完
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