闘技場に売られた獣
日向家の裏庭。それは、ギロロが日々厳しい鍛錬に明け暮れる聖域だ。
その日、ヤジュジュは日課のトレーニングに励む弟に差し入れを持って訪れていた。
---
### 事故は唐突に
「ギロロ、少し休憩にしないかい? 飲み物を持ってきたんだよ」
「……ああ、兄さんか。すまない、今片付ける」
ギロロが足元に散らばった模擬弾を拾おうと腰をかがめた、その時だった。
運悪く、地面に埋まっていた古い切り株にヤジュジュが足を引っかけ、たたらを踏む。
「あ……っ!」
「うおっ!?」
咄嗟に支えようとしたギロロだったが、獣人の血を引くヤジュジュの体重と勢いは想像以上だった。二人の体は重なり合うようにして、そのまま芝生の上へと倒れ込む。
ドサリ、という鈍い音。
気がつくと、ヤジュジュがギロロの上に完全に乗っかる形で、彼を押し倒していた。
### 混濁する思考
「い、痛い……。ふふ、ごめんよギロロ、不器用な兄で……」
ヤジュジュが顔を上げ、至近距離でギロロを見つめる。
乱れた髪の間から覗く狼の耳が、羞恥でぴくぴくと震えていた。潤んだ瞳と、激しい運動のあとの熱い吐息が、ギロロの顔に直接かかる。
「……っ!!」
ギロロの脳内はパニックに陥った。
目の前には、自分を慕う優しくて美しい兄。しかし、今のヤジュジュからは、いつもの「穏やかな兄」とは違う、どこか艶っぽく、野生的な匂いが立ち上っている。
重なる体の感触。ヤジュジュの細い、けれど引き締まった肢体の重みが、ギロロの理性を容赦なく削り取っていく。
「あ、ああ……。大丈夫だ、怪我はないか、兄さん」
「うん、私は平気だよ。今すぐ退くね……」
ヤジュジュが慌てて体を離そうと、ギロロの胸に手を突いた。その鉤爪が、ギロロのコンバットスーツを僅かに掠める。
「……待て」
### 漏れ出た本音
自分でも驚くほど低い声が出ていた。
ギロロは無意識に、去ろうとするヤジュジュの腰を、強い力で抱きとめていた。
「ギ、ギロロ……?」
「……もう少し、そのままでいてくれ」
「え……?」
ヤジュジュが困惑したように目を丸くする。
言った本人であるギロロも、自分の口から出た言葉の意味が分からず、顔面を沸騰しそうなほど真っ赤に染めた。
(何を言っているんだ俺は! 兄さんを押し倒したまま、何を……!!)
だが、一度感じてしまった「守るべき対象」を腕の中に閉じ込めているという征服感と、兄に対する歪な独占欲は、容易には止まらない。
「……少し、動悸が激しくてな。立ち上がると危険だ。だから……このまま、俺の鼓動が落ち着くまで、こうしていてほしいんだ」
「……ふふ、変なギロロ。お前こそ、病気なんじゃないかい?」
ヤジュジュは少しだけ顔を赤らめながらも、弟の不器用な願いを受け入れるように、再びその胸に優しく体を預けた。
ギロロは自分の腕の中で大人しくなった兄の体温を感じながら、心の中で「自分こそ異常者だ」と絶叫しつつも、その心地よい重みを片時も離したくないと願っていた。
その日、ヤジュジュは日課のトレーニングに励む弟に差し入れを持って訪れていた。
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### 事故は唐突に
「ギロロ、少し休憩にしないかい? 飲み物を持ってきたんだよ」
「……ああ、兄さんか。すまない、今片付ける」
ギロロが足元に散らばった模擬弾を拾おうと腰をかがめた、その時だった。
運悪く、地面に埋まっていた古い切り株にヤジュジュが足を引っかけ、たたらを踏む。
「あ……っ!」
「うおっ!?」
咄嗟に支えようとしたギロロだったが、獣人の血を引くヤジュジュの体重と勢いは想像以上だった。二人の体は重なり合うようにして、そのまま芝生の上へと倒れ込む。
ドサリ、という鈍い音。
気がつくと、ヤジュジュがギロロの上に完全に乗っかる形で、彼を押し倒していた。
### 混濁する思考
「い、痛い……。ふふ、ごめんよギロロ、不器用な兄で……」
ヤジュジュが顔を上げ、至近距離でギロロを見つめる。
乱れた髪の間から覗く狼の耳が、羞恥でぴくぴくと震えていた。潤んだ瞳と、激しい運動のあとの熱い吐息が、ギロロの顔に直接かかる。
「……っ!!」
ギロロの脳内はパニックに陥った。
目の前には、自分を慕う優しくて美しい兄。しかし、今のヤジュジュからは、いつもの「穏やかな兄」とは違う、どこか艶っぽく、野生的な匂いが立ち上っている。
重なる体の感触。ヤジュジュの細い、けれど引き締まった肢体の重みが、ギロロの理性を容赦なく削り取っていく。
「あ、ああ……。大丈夫だ、怪我はないか、兄さん」
「うん、私は平気だよ。今すぐ退くね……」
ヤジュジュが慌てて体を離そうと、ギロロの胸に手を突いた。その鉤爪が、ギロロのコンバットスーツを僅かに掠める。
「……待て」
### 漏れ出た本音
自分でも驚くほど低い声が出ていた。
ギロロは無意識に、去ろうとするヤジュジュの腰を、強い力で抱きとめていた。
「ギ、ギロロ……?」
「……もう少し、そのままでいてくれ」
「え……?」
ヤジュジュが困惑したように目を丸くする。
言った本人であるギロロも、自分の口から出た言葉の意味が分からず、顔面を沸騰しそうなほど真っ赤に染めた。
(何を言っているんだ俺は! 兄さんを押し倒したまま、何を……!!)
だが、一度感じてしまった「守るべき対象」を腕の中に閉じ込めているという征服感と、兄に対する歪な独占欲は、容易には止まらない。
「……少し、動悸が激しくてな。立ち上がると危険だ。だから……このまま、俺の鼓動が落ち着くまで、こうしていてほしいんだ」
「……ふふ、変なギロロ。お前こそ、病気なんじゃないかい?」
ヤジュジュは少しだけ顔を赤らめながらも、弟の不器用な願いを受け入れるように、再びその胸に優しく体を預けた。
ギロロは自分の腕の中で大人しくなった兄の体温を感じながら、心の中で「自分こそ異常者だ」と絶叫しつつも、その心地よい重みを片時も離したくないと願っていた。
