闘技場に売られた獣

特別休暇を宣言し、再びベッドへと戻ったガルル。ヤジュジュは兄の腕の中に収まりながらも、昂ぶった神経と、先ほどまで感じていた孤独の名残のせいで、なかなか眠りにつけずにいた。

シーツの中で、ヤジュジュの狼の耳が不安げに揺れる。

「……ガルル。せっかく休んでくれたのに、私、なんだか目が冴えてしまって」
「無理に目を閉じる必要はない。……心が落ち着くまで、とことん話そうか」

ガルルはヤジュジュの背中を大きな掌でゆっくりとなぞり、その心地よい低音を耳元に届けた。

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### 二人だけの対話

それから、二人は多くのことを語り合った。
幼い頃、まだ三人兄弟で笑い合っていた頃の記憶。母が愛した花の色。そして、離れ離れになっていた間の、空白の時間の欠片。

「あの頃、私は檻の中から月を見ていたよ。……ガルル、お前も同じ月を見ていたのかい?」
「ああ。……お前を救い出すための力を求めて、夜通し訓練をしていた時も、空にはいつもあの月があった」

ヤジュジュはガルルの胸に顔を埋め、その力強い鼓動を聞いた。闘技場では決して得られなかった「誰かの体温」が、今は当たり前のように自分を包んでいる。

話は次第に、現在の部下たちの失敗談や、ギロロが日向家でどんなに苦労しているかといった、他愛のない話題へと移っていった。ヤジュジュが「ふふ、ギロロらしいね」と笑うたび、ガルルもまた、慈しむような眼差しでその笑顔を見守った。

### 黎明の光

言葉を交わすうちに、部屋を支配していた濃い闇が、少しずつ薄れていく。
窓の外の境界線が淡い群青色に染まり、やがて柔らかな橙色の光が、カーテンの隙間から差し込んできた。

「……ああ、夜が明けてしまうね。せっかくの休みを、話し通しで潰してしまったよ」

ヤジュジュが少し申し訳なさそうに呟くと、ガルルはその額に優しく口づけを落とした。

「何を言う。私にとっては、どんな軍事功績よりも、こうしてお前と語らう時間の方が価値がある」

ガルルはヤジュジュの手を引き、その指先に生えた鋭い鉤爪に、愛おしそうに触れた。

「見てごらん、ヤジュジュ。新しい一日が始まる。……だが、今日はお前が『ひとりぼっち』で迎える朝ではない」

ヤジュジュは潤んだ瞳で、白み始めた空を見つめた。
かつては絶望の象徴だった「朝」が、今はこんなにも温かく、穏やかだ。

「……そうだね、ガルル。……おやすみなさい、あるいは、おはようかな」
「どちらでもいい。私がここにいることに変わりはない」

明るくなり始めた部屋の中で、二人はどちらからともなく微笑み合い、再び重なり合うようにして深い眠りへと落ちていった。
カーテン越しに広がる新しい光は、二人の幸せな時間を祝福するように、静かに、そして優しく、寄り添い合っている。
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