闘技場に売られた獣
### 碧の夜天に響くパタパタ
ケロン星の喧騒から遠く離れた、あの日訪れた碧の海洋惑星。
あの美しいプライベート・ビーチを見下ろす高台に、ガルルが軍の特権で密かに手配した瀟洒な別荘があった。
今夜は、前線任務で圧倒的な戦果を挙げ、名実ともに「ケロン軍の英雄」へと返り咲いたギロロの凱旋祝い。そして、三人が揃って迎える、待ちに待った合同休暇の初日だった。
テラスのテーブルには、ガルルが取り寄せた最高級の食材を使った不器用な男たちの手料理と、ヤジュジュが大好きな生クリーム山盛りのパンケーキが並んでいる。
「……ふん。軍の式典などより、ここでこうして兄さんたちと食事をする方が、よほど腹が落ち着く」
ギロロは相変わらずぶっきらぼうにマフラーを引き締めつつも、その表情にはかつてペコポンを失った時の悲壮感は微塵もなかった。今の彼は、大切な家族を守るための圧倒的な強さと、確固たる居場所をその手につかみ取っている。
「当然だ、ギロロ。お前が戦場でどれほど名を上げようとも、ここがお前の帰るべき絶対の聖域なのだからな」
ガルルが満足そうに目を細め、グラスを傾ける。カタブツな彼の表情も、この場所にいる時だけは、世界で一番甘い兄の顔になっていた。
---
### 全てを内包する優しい世界
「うん。二人とも、本当にお疲れ様。……私、今とっても幸せだよ」
二人の間に座るヤジュジュは、目元に子供の「線」を残したままの顔をぐっと綻ばせ、本当に嬉しそうに微笑んだ。
その背後では、ふさふさとした銀の尻尾が「パタパタパタパタ!」と、心地よいリズムでテラスの床を叩き続けている。
現実の歴史は書き換えられた。
ペコポンを滅ぼした凄惨な真実は、ヴァイパーの一族との誓いの中に消え、クルル曹長のフォルダの最深部に永久にロックされた。ギロロの手は一滴の血でも汚れず、ガルルの隠蔽によってヤジュジュの純潔は守られた。誰も傷つかず、誰も誰も彼らを責めない。
かつて第十七闘技場の冷たい檻の中で、蹂躙され、痛みを学び、生き残るために全てを冷徹に処理することを覚えたヤジュジュ。
あの地獄で培った歪な合理主義は、今、愛する家族を誰一人欠けさせることなく、永遠に守り抜くための「優しい檻」へと昇華したのだ。
「ねえ、ガルル、ギロロ。明日も、明後日も、これから先もずっと……私の隣にいてね」
ヤジュジュはそう言って、自身の大きな尻尾を、ギロロの赤い脚とガルルの背中に、愛おしそうにしっかりと絡みつかせた。
「ああ、当たり前だ、兄さん。俺はどこへも行かん」
「ああ、約束しよう。お前の笑顔を曇らせるものは、この宇宙のどこにも存在させない」
二人の不器用で過保護な愛の言葉が、優しくヤジュジュを包み込む。
遠くで寄せては返す波の音。満天の星々。
傷だらけの過去の果てに手に入れた、歪で、けれどこれ以上なく完璧な三人の楽園。
ヤジュジュの銀の尻尾は、これから何百年、何千年も続いていく、甘やかで絶対に壊れないハッピーエンドを祝福するように、静かに、優しく、碧い夜の静寂を叩き続けていた。
ケロン星の喧騒から遠く離れた、あの日訪れた碧の海洋惑星。
あの美しいプライベート・ビーチを見下ろす高台に、ガルルが軍の特権で密かに手配した瀟洒な別荘があった。
今夜は、前線任務で圧倒的な戦果を挙げ、名実ともに「ケロン軍の英雄」へと返り咲いたギロロの凱旋祝い。そして、三人が揃って迎える、待ちに待った合同休暇の初日だった。
テラスのテーブルには、ガルルが取り寄せた最高級の食材を使った不器用な男たちの手料理と、ヤジュジュが大好きな生クリーム山盛りのパンケーキが並んでいる。
「……ふん。軍の式典などより、ここでこうして兄さんたちと食事をする方が、よほど腹が落ち着く」
ギロロは相変わらずぶっきらぼうにマフラーを引き締めつつも、その表情にはかつてペコポンを失った時の悲壮感は微塵もなかった。今の彼は、大切な家族を守るための圧倒的な強さと、確固たる居場所をその手につかみ取っている。
「当然だ、ギロロ。お前が戦場でどれほど名を上げようとも、ここがお前の帰るべき絶対の聖域なのだからな」
ガルルが満足そうに目を細め、グラスを傾ける。カタブツな彼の表情も、この場所にいる時だけは、世界で一番甘い兄の顔になっていた。
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### 全てを内包する優しい世界
「うん。二人とも、本当にお疲れ様。……私、今とっても幸せだよ」
二人の間に座るヤジュジュは、目元に子供の「線」を残したままの顔をぐっと綻ばせ、本当に嬉しそうに微笑んだ。
その背後では、ふさふさとした銀の尻尾が「パタパタパタパタ!」と、心地よいリズムでテラスの床を叩き続けている。
現実の歴史は書き換えられた。
ペコポンを滅ぼした凄惨な真実は、ヴァイパーの一族との誓いの中に消え、クルル曹長のフォルダの最深部に永久にロックされた。ギロロの手は一滴の血でも汚れず、ガルルの隠蔽によってヤジュジュの純潔は守られた。誰も傷つかず、誰も誰も彼らを責めない。
かつて第十七闘技場の冷たい檻の中で、蹂躙され、痛みを学び、生き残るために全てを冷徹に処理することを覚えたヤジュジュ。
あの地獄で培った歪な合理主義は、今、愛する家族を誰一人欠けさせることなく、永遠に守り抜くための「優しい檻」へと昇華したのだ。
「ねえ、ガルル、ギロロ。明日も、明後日も、これから先もずっと……私の隣にいてね」
ヤジュジュはそう言って、自身の大きな尻尾を、ギロロの赤い脚とガルルの背中に、愛おしそうにしっかりと絡みつかせた。
「ああ、当たり前だ、兄さん。俺はどこへも行かん」
「ああ、約束しよう。お前の笑顔を曇らせるものは、この宇宙のどこにも存在させない」
二人の不器用で過保護な愛の言葉が、優しくヤジュジュを包み込む。
遠くで寄せては返す波の音。満天の星々。
傷だらけの過去の果てに手に入れた、歪で、けれどこれ以上なく完璧な三人の楽園。
ヤジュジュの銀の尻尾は、これから何百年、何千年も続いていく、甘やかで絶対に壊れないハッピーエンドを祝福するように、静かに、優しく、碧い夜の静寂を叩き続けていた。
