闘技場に売られた獣

### 灰色の焦土での対峙

地球のすべてが灰と硝煙に沈んだ、その直後のことだった。
まだくすぶる黒煙のただ中で、ケロロ、タママ、ドロロ、クルルの4人は、信じられないものを見る目でギロロとヤジュジュを取り囲んでいた。

「ギロロ……ッ! ヤジュジュ少佐! どうして……どうしてこんな酷いことをするでありますか!」

ケロロが涙をボロボロと流しながら、泥にまみれた拳を地面に叩きつける。タママもまた、怒りと絶望に瞳を血走らせ、鋭い牙を剥き出しにして二人を睨みつけていた。

「最低ですぅ……! 夏美さんも、冬樹さんも、みんな、みんな一瞬で……! いくら任務だからって、こんなのあんまりですよぉっ!」

激しい糾弾の声が、静まり返った焦土に響き渡る。
しかし、銃を降ろしたギロロの瞳には、一切の動揺も罪悪感もなかった。彼はマフラーを厳かに引き締め、冷徹な軍人の声を放つ。

「……何が悪い。これが俺たちに課せられた、本来の『任務』だろう」

「ギロロ、お主……! 心まで完全に鬼に成り果てたか!」
ドロロが刀の柄に手をかけ、怒りに震える。
「我らケロロ小隊は、この星の民と絆を紡いできたはず! それを、このような無慈悲な蹂躙で終わらせるなど……!」

「絆だと? 貴様らはペコポンという生ぬるい環境に甘え、戦士としての本分を忘れていただけだ。俺たちは軍人として、至極真っ当な命令を遂行したに過ぎん」

ギロロの言葉は正論だった。正論だからこそ、ケロロたちは余計に感情を爆発させ、さらに言葉を荒げて反論しようとした。――その時。

「……もういいよ、ギロロ。耳が痛くなってしまう」

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### 突きつけられた「現実」

一歩前へ出たのは、ヤジュジュだった。
彼はいつも通りの穏やかなトーンで語りかけ、目元の子供の線を細めて苦笑している。しかし、その手には、ケロン軍公認の、厳重なプロテクトがかかった軍用ボイスレコーダーが握られていた。

ヤジュジュが静かに再生ボタンを押す。

『――ケロロ小隊、ペコポン侵略の進捗は未だゼロか。直ちに作戦を遂行せよ』
『軍曹さん、またガンプラ買ってる場合じゃないですぅ!』
『ゲコゲコ、地球人どもを早く根絶やしにしろって本部がさぁ……』

流れてきたのは、これまでケロン軍本部から送られてきた「公式な侵略指令」の数々、そしてケロロたちが日頃どれほど任務を怠慢し、本部を欺いてきたかを示す通信記録のログだった。

ピッと音を立てて再生を止める。
ヤジュジュはそれをケロロたちの前に突き出し、まるで子供に言い聞かせるような、優しくも底冷えする笑みを浮かべた。

「これ以上、私たちがしたことに口を出すのは……ケロン軍、ひいては本部総司令部に対する『反逆行為』だと見なされるけれど、いいんだね?」

「……あ、……」

ケロロの喉が、恐怖でヒッと鳴った。

「私たちは軍の最高命令に従って、完璧に任務をこなした。もしこれ以上の抗議や、私たちへの非難を続けるというのなら……私はこの記録と共に、ケロロ小隊全員を『ペコポン人に同化し、軍を裏切った反逆者』として本部に提出しなければならなくなる。……そうなれば、お前たちがどうなるか、分かっているだろう?」

ヤジュジュの言葉には、闘技場で培われた「相手の逃げ道を完全に塞ぐ」残酷な合理性が満ちていた。
公式な任務を全うした自分たちを責めることは、軍のシステムそのものを否定すること。ケロロたちに反論の余地など、最初から一歩も残されていなかった。

### 永遠への旅路

タママが悔しさに唇を噛み締め、ドロロが絶望に項垂れる。ケロロはただ、手の中のガンプラの頭部を握りしめて泣き崩れるしかなかった。

「……行こう、ギロロ。もう、私たちの仕事は終わったんだから」

ヤジュジュは興味を失ったようにケロロたちに背を向けると、ギロロの腕にそっと自分の腕を絡ませた。その後ろでは、ふさふさとした銀の尻尾が、これからの二人だけの未来を想って、嬉しそうにパタパタと焦土を叩いている。

「ああ、兄さん」

ギロロはしっかりとヤジュジュの体を支え、二度と振り返ることなく歩き出した。
ケロロ小隊の消えない絶望と、燃え盛る灰色の星を背に、二人は軍への報告、そしてその先にある「誰にも邪魔されない最果ての地」へと、確かな足取りで向かっていくのだった。
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