闘技場に売られた獣
### 灰色の凱旋
ケロン軍本部、最高司令部の大謁見の間。
荘厳なファンファーレが鳴り響く中、ケロロ小隊は全宇宙の軍人が羨む最高栄誉「特級侵略完遂勲章」を授与されていた。
「ケロロ小隊! 宇宙の最重要拠点の一つであったペコポンの完全制圧、見事である!」
大将校たちの称賛の声が響き渡る。しかし、勲章を受け取るケロロの、そしてタママやドロロ、クルルの顔は、信じられないほどに暗く、泥のように晴れなかった。
彼らの脳裏には、かつて愛した青い星が、一瞬にして巨狼の爪と無慈悲な重火器によって灰色の焦土へと変えられた、あの悪夢のような光景が焼き付いて離れないからだ。
彼らにとって、これは栄光の表彰式ではなく、取り返しのつかない喪失の葬列だった。
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### 一人、未来を見据えて
だが、列の端に立つギロロだけは違った。
周囲の沈痛な面持ちなど、彼の目には一切入っていない。ギロロの瞳は、軍服の胸元にピンで留められた重苦しい勲章ではなく、その遥か先、謁見の間の大扉の向こうに広がる「未来」だけを真っ直ぐに見据えていた。
(これで、軍に対するすべての義務は果たした……)
ギロロは、拳を強く握りしめる。
ケロロたちのように、失った過去を悼んで立ち止まる暇など自分にはないのだ。
自分たちケロン人の2倍の寿命を持ち、あの子供を象徴する目元の線のまま、いつか自分たちを置いて独りきりになる未来を恐れて泣いた、最愛の兄。
一刻も早く軍を退役し、この星を、あるいはすべての戦場を捨てなければならない。
誰も二人の過去を知らず、誰も二人の時間を脅かさない宇宙の最果てへ行く。それが、ギロロがこの大勲章と引き換えに手に入れた、真の「切符」だった。
### 扉の向こうの帰る場所
拝謁が終わり、重厚な大扉が開く。
ケロロたちが力なくうなだれて歩く中、ギロロは一人、大股で回廊へと踏み出した。
白磁の柱の陰、喧騒から少し離れた静かな場所に、彼は待っていた。
「……おかえり、ギロロ。大金星だね」
ヤジュジュが、いつも通りの穏やかなトーンで微笑みながら歩み寄ってくる。ハーフゆえの遅すぎる成長のせいで、相変わらず目元に線の残る幼い顔。しかしその背後では、ふさふさとした銀の尻尾が、弟の無事な姿を見て嬉しそうにパタパタと左右に揺れていた。
「兄さん……」
ギロロは、周囲の目を気にするのも忘れ、ヤジュジュの元へ歩み寄るとその細い肩を抱き寄せた。ペコポンを滅ぼした神話の巨狼の気配はもうない。腕の中に収まるのは、温かくて、少しだけ不器用な、自分の愛する兄の体温だけだ。
「ああ。すべて終わった。軍の上層部への退役願も、これだけの功績があれば却下はできんはずだ。……もうすぐ、二人で行ける」
「ふふ、お前は本当にせっかちだね。でも、嬉しいよ。お前が私のために、どれほどの執念を燃やしてくれたか、この尻尾が一番よく分かっているからね」
ヤジュジュはそう言って、自身の大きな尻尾をギロロの赤い脚に、手繰り寄せるようにそっと絡みつけた。
ケロロ小隊の胸に残る、消えない罪悪感。
けれど、そんな世界の傷跡など、二人の間には一滴も入り込まない。
燃え盛る灰の星の上に築かれる、二人だけの甘やかで永い余生の始まりを、ヤジュジュの尻尾はただ静かに、優しく祝福するように揺れ続けていた。
ケロン軍本部、最高司令部の大謁見の間。
荘厳なファンファーレが鳴り響く中、ケロロ小隊は全宇宙の軍人が羨む最高栄誉「特級侵略完遂勲章」を授与されていた。
「ケロロ小隊! 宇宙の最重要拠点の一つであったペコポンの完全制圧、見事である!」
大将校たちの称賛の声が響き渡る。しかし、勲章を受け取るケロロの、そしてタママやドロロ、クルルの顔は、信じられないほどに暗く、泥のように晴れなかった。
彼らの脳裏には、かつて愛した青い星が、一瞬にして巨狼の爪と無慈悲な重火器によって灰色の焦土へと変えられた、あの悪夢のような光景が焼き付いて離れないからだ。
彼らにとって、これは栄光の表彰式ではなく、取り返しのつかない喪失の葬列だった。
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### 一人、未来を見据えて
だが、列の端に立つギロロだけは違った。
周囲の沈痛な面持ちなど、彼の目には一切入っていない。ギロロの瞳は、軍服の胸元にピンで留められた重苦しい勲章ではなく、その遥か先、謁見の間の大扉の向こうに広がる「未来」だけを真っ直ぐに見据えていた。
(これで、軍に対するすべての義務は果たした……)
ギロロは、拳を強く握りしめる。
ケロロたちのように、失った過去を悼んで立ち止まる暇など自分にはないのだ。
自分たちケロン人の2倍の寿命を持ち、あの子供を象徴する目元の線のまま、いつか自分たちを置いて独りきりになる未来を恐れて泣いた、最愛の兄。
一刻も早く軍を退役し、この星を、あるいはすべての戦場を捨てなければならない。
誰も二人の過去を知らず、誰も二人の時間を脅かさない宇宙の最果てへ行く。それが、ギロロがこの大勲章と引き換えに手に入れた、真の「切符」だった。
### 扉の向こうの帰る場所
拝謁が終わり、重厚な大扉が開く。
ケロロたちが力なくうなだれて歩く中、ギロロは一人、大股で回廊へと踏み出した。
白磁の柱の陰、喧騒から少し離れた静かな場所に、彼は待っていた。
「……おかえり、ギロロ。大金星だね」
ヤジュジュが、いつも通りの穏やかなトーンで微笑みながら歩み寄ってくる。ハーフゆえの遅すぎる成長のせいで、相変わらず目元に線の残る幼い顔。しかしその背後では、ふさふさとした銀の尻尾が、弟の無事な姿を見て嬉しそうにパタパタと左右に揺れていた。
「兄さん……」
ギロロは、周囲の目を気にするのも忘れ、ヤジュジュの元へ歩み寄るとその細い肩を抱き寄せた。ペコポンを滅ぼした神話の巨狼の気配はもうない。腕の中に収まるのは、温かくて、少しだけ不器用な、自分の愛する兄の体温だけだ。
「ああ。すべて終わった。軍の上層部への退役願も、これだけの功績があれば却下はできんはずだ。……もうすぐ、二人で行ける」
「ふふ、お前は本当にせっかちだね。でも、嬉しいよ。お前が私のために、どれほどの執念を燃やしてくれたか、この尻尾が一番よく分かっているからね」
ヤジュジュはそう言って、自身の大きな尻尾をギロロの赤い脚に、手繰り寄せるようにそっと絡みつけた。
ケロロ小隊の胸に残る、消えない罪悪感。
けれど、そんな世界の傷跡など、二人の間には一滴も入り込まない。
燃え盛る灰の星の上に築かれる、二人だけの甘やかで永い余生の始まりを、ヤジュジュの尻尾はただ静かに、優しく祝福するように揺れ続けていた。
