闘技場に売られた獣
軍本部の冷徹な中尉としてのガルルは、その日、完全に死んだ。
ホログラムに映し出されているのは、かつてヤジュジュが「平和的な解決」と言って微笑んでいた、その言葉の本当の結末だった。
銀の巨狼と化したヤジュジュは、もはや生存のための合理性すら投げ捨て、ただ純粋な「破壊と殺戮」そのものに成り果てていた。血の海の中で狂気混じりに吼えるその姿は、あまりにも美しく、そして救いようがないほどに壊れていた。
闘技場の地獄が、ハーフとしての呪いが、ついに彼の理性を完全に焼き切ってしまったのだ。
「ガルル閣下! ヤジュジュ少佐は完全に暴走、いえ、反逆を……! 本部より、直ちに抹殺命令が下りました!」
悲鳴を上げる部下の声を、ガルルは遠い世界の雑音のように聞いていた。
ガルルは無言で立ち上がり、愛用の銃を手にする。だが、その銃口が向けられる先は――。
---
### 二人だけの檻
激しい嵐が去った後のように、静まり返った未知の惑星の廃墟。
巨狼の姿から戻り、返り血で濡れたまま虚空を見つめていたヤジュジュの前に、ガルルはただ一人で降り立った。
「……ガルル」
ヤジュジュの目元の線は、真っ赤な血に染まっている。その瞳には、かつての穏やかさは微塵もなく、底なしの虚無と、破壊の快楽の残滓だけがギラギラと渦巻いていた。
「私を殺しに来たのかい? いいよ……お前の手で終わらせてくれるなら、それはとても素晴らしいことだ……」
ヤジュジュは無防備に両腕を広げ、狂気の笑みを浮かべた。
だが、ガルルは銃を構えなかった。それどころか、軍服の階級章をむしり取り、それを足元へ容赦なく投げ捨てた。
「お前を殺す? ……そんな選択肢は、私の脳内には最初から存在しない」
ガルルは歩み寄り、血の匂いが立ち込めるヤジュジュの体を、これまでで最も強く、そして深く抱きしめた。
「ガルル……? 何を……」
「お前がこの宇宙すべてを壊し、すべての生を貪り尽くしたいと言うのなら、そうするがいい。私はその蹂躙の手助けをしよう。お前を『悪』と呼ぶ世界ならば、そんな世界に存在価値はない」
### 世界の終焉、愛の始まり
ガルルの黄金色の瞳には、ヤジュジュと同じ、いや、それ以上に昏く歪んだ「狂気」が宿っていた。
ケロン軍も、正義も、規律も、彼にとってはヤジュジュの存在一つよりも軽いものだったのだ。ヤジュジュが闇に堕ちたのなら、自分もその闇の底へ喜んで身を投じる。
「お前を縛るものはもう何もない。だが、独りにはさせない。……宇宙の灯火がすべて消え失せるその時まで、私はお前の傍にいる」
ガルルはヤジュジュの耳元で、優しく、そして逃げ場のない呪いのように囁いた。
「すべてを壊し尽くした後は……誰もいない静寂の中で、二人だけで生きよう。そこが、我々の新しい檻だ」
「……あはは。本当に、お前って人は……」
ヤジュジュの目から、狂気ではない、かつての彼のような涙が零れ落ちる。
闇に堕ちてなお、ガルルの愛という名の檻からは、決して逃れられない。ヤジュジュは血に汚れた鉤爪でガルルの背中にすがりつき、そのふさふさとした尻尾を、心中する恋人のように、ガルルの体に固く、二度と解けないほど強く絡みつかせるのだった。
ホログラムに映し出されているのは、かつてヤジュジュが「平和的な解決」と言って微笑んでいた、その言葉の本当の結末だった。
銀の巨狼と化したヤジュジュは、もはや生存のための合理性すら投げ捨て、ただ純粋な「破壊と殺戮」そのものに成り果てていた。血の海の中で狂気混じりに吼えるその姿は、あまりにも美しく、そして救いようがないほどに壊れていた。
闘技場の地獄が、ハーフとしての呪いが、ついに彼の理性を完全に焼き切ってしまったのだ。
「ガルル閣下! ヤジュジュ少佐は完全に暴走、いえ、反逆を……! 本部より、直ちに抹殺命令が下りました!」
悲鳴を上げる部下の声を、ガルルは遠い世界の雑音のように聞いていた。
ガルルは無言で立ち上がり、愛用の銃を手にする。だが、その銃口が向けられる先は――。
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### 二人だけの檻
激しい嵐が去った後のように、静まり返った未知の惑星の廃墟。
巨狼の姿から戻り、返り血で濡れたまま虚空を見つめていたヤジュジュの前に、ガルルはただ一人で降り立った。
「……ガルル」
ヤジュジュの目元の線は、真っ赤な血に染まっている。その瞳には、かつての穏やかさは微塵もなく、底なしの虚無と、破壊の快楽の残滓だけがギラギラと渦巻いていた。
「私を殺しに来たのかい? いいよ……お前の手で終わらせてくれるなら、それはとても素晴らしいことだ……」
ヤジュジュは無防備に両腕を広げ、狂気の笑みを浮かべた。
だが、ガルルは銃を構えなかった。それどころか、軍服の階級章をむしり取り、それを足元へ容赦なく投げ捨てた。
「お前を殺す? ……そんな選択肢は、私の脳内には最初から存在しない」
ガルルは歩み寄り、血の匂いが立ち込めるヤジュジュの体を、これまでで最も強く、そして深く抱きしめた。
「ガルル……? 何を……」
「お前がこの宇宙すべてを壊し、すべての生を貪り尽くしたいと言うのなら、そうするがいい。私はその蹂躙の手助けをしよう。お前を『悪』と呼ぶ世界ならば、そんな世界に存在価値はない」
### 世界の終焉、愛の始まり
ガルルの黄金色の瞳には、ヤジュジュと同じ、いや、それ以上に昏く歪んだ「狂気」が宿っていた。
ケロン軍も、正義も、規律も、彼にとってはヤジュジュの存在一つよりも軽いものだったのだ。ヤジュジュが闇に堕ちたのなら、自分もその闇の底へ喜んで身を投じる。
「お前を縛るものはもう何もない。だが、独りにはさせない。……宇宙の灯火がすべて消え失せるその時まで、私はお前の傍にいる」
ガルルはヤジュジュの耳元で、優しく、そして逃げ場のない呪いのように囁いた。
「すべてを壊し尽くした後は……誰もいない静寂の中で、二人だけで生きよう。そこが、我々の新しい檻だ」
「……あはは。本当に、お前って人は……」
ヤジュジュの目から、狂気ではない、かつての彼のような涙が零れ落ちる。
闇に堕ちてなお、ガルルの愛という名の檻からは、決して逃れられない。ヤジュジュは血に汚れた鉤爪でガルルの背中にすがりつき、そのふさふさとした尻尾を、心中する恋人のように、ガルルの体に固く、二度と解けないほど強く絡みつかせるのだった。
