闘技場に売られた獣
拠点の外は、刺すような夜風が吹いている。焚き火の傍らで、ヤジュジュは無意識に首元の鉄輪に指をかけていた。夢の残滓が、まだ胸の奥で冷たく脈打っている。
「……また、それか」
背後から低く、だが確かな熱を持った声が響く。振り返る間もなく、ギロロの逞しい腕がヤジュジュの肩を包み込み、そのまま自分の胸元へと引き寄せた。
「ギロロ……ふふ、お前は本当に鼻が利くね。私が少し不安になると、すぐに現れる」
「……お前の震えは、離れていても伝わってくるんだ」
ギロロはそれ以上何も言わず、兄の細い肩に深く顔を埋めた。闘技場という地獄で「獣」として扱われてきたヤジュジュにとって、ギロロの放つ火薬と土の匂いは、何よりも自分を「個」として繋ぎ止めてくれる鎖だった。
「お前は、私を守ってくれると言ったね」
「ああ。たとえ相手が誰であろうとな。……だが兄さん、あんたも俺を守ろうとするのは、ほどほどにしておけ」
ヤジュジュは少しだけ身をよじり、弟の顔を見上げた。
「どうしてだい? 兄が弟を守るのは、当たり前のことだろう?」
「……俺の前でだけは、ただのヤジュジュでいろと言っているんだ。戦士としての顔も、兄としての意地も、ここでは必要ない」
ギロロの不器用な抱擁が、より一層力を増す。守り、守られる。その循環だけが、二人の欠けた魂を埋めていく唯一の術だった。
「……また、それか」
背後から低く、だが確かな熱を持った声が響く。振り返る間もなく、ギロロの逞しい腕がヤジュジュの肩を包み込み、そのまま自分の胸元へと引き寄せた。
「ギロロ……ふふ、お前は本当に鼻が利くね。私が少し不安になると、すぐに現れる」
「……お前の震えは、離れていても伝わってくるんだ」
ギロロはそれ以上何も言わず、兄の細い肩に深く顔を埋めた。闘技場という地獄で「獣」として扱われてきたヤジュジュにとって、ギロロの放つ火薬と土の匂いは、何よりも自分を「個」として繋ぎ止めてくれる鎖だった。
「お前は、私を守ってくれると言ったね」
「ああ。たとえ相手が誰であろうとな。……だが兄さん、あんたも俺を守ろうとするのは、ほどほどにしておけ」
ヤジュジュは少しだけ身をよじり、弟の顔を見上げた。
「どうしてだい? 兄が弟を守るのは、当たり前のことだろう?」
「……俺の前でだけは、ただのヤジュジュでいろと言っているんだ。戦士としての顔も、兄としての意地も、ここでは必要ない」
ギロロの不器用な抱擁が、より一層力を増す。守り、守られる。その循環だけが、二人の欠けた魂を埋めていく唯一の術だった。
