闘技場に売られた獣

娯楽のない地獄――あの闘技場に閉じ込められていた長い歳月の間、ヤジュジュが奪われ、決して行うことができなかったこと。
それは「強くなるための訓練」でも、「生き延びるための策略」でもなかった。

それは、何も生み出さない、何の役にも立たない、ただ穏やかな「無駄な時間」を過ごすことだった。

ペコポンのギロロのテントの側。
ヤジュジュは今、ふかふかのクッションに背を預け、ただ窓の外を眺めていた。

手には、淹れたての温かいお茶。
闘技場では、水さえも泥の混じった配給品で、喉を潤すためだけに争って飲むものだった。だが今は、湯気と共に立ち上る香りを楽しみ、一口ずつゆっくりと味わうことができる。

「……ふふ、静かだね」

ヤジュジュは小さく呟き、狼の耳をパタパタと寝かせた。
闘技場は、常に死の足音と、観客たちの下劣な歓声、そして獣たちの飢えた咆哮に満ちていた。一瞬の油断が死に直結する世界で、耳を休める時間など一秒たりともなかったのだ。

何もしないで、ただ座っている。
時計の針が刻む音だけを聴きながら、次の戦いの予定も、誰かを殺す算段も立てずに、ぼんやりと空の色が変わるのを眺める。それこそが、彼が最も焦がれ、奪われ続けていた最高の贅沢だった。

「兄さん、新しい毛布を持ってきた。それと、差し入れの小菓子だ」

ギロロがぶっきらぼうに部屋に入ってくると、ヤジュジュの尻尾が嬉しそうにゆったりと揺れた。

「ありがとう、ギロロ。……ねえ、どれから食べようか。こんなにたくさん種類があると、迷ってしまうね」

闘技場では「出されたものを、奪われる前に喰らう」選択肢のない世界だった。だが今は、目の前の甘いお菓子を「どれから食べるか」自分で選ぶことができる。

ヤジュジュはクッキーを一つ摘み、美味しそうに目を細めた。

「闘技場にいた頃はね、もしここから出られたら、世界中の強い奴を全部倒して回ろうなんて考えていたこともあったんだ。でも、いざ自由になってみると……」

ヤジュジュは目元の子供の線を優しく和らげ、ギロロを見つめた。

「こうしてお前たちと、何でもない話をしながら、ただ美味しいものを食べる。……これ以上のことなんて、何もいらなかったんだね」

### 埋まっていく空白

かつて奪われた、穏やかな日常。
ヤジュジュは今、ガルルやギロロに与えられる温かい時間の中で、何年分もの「空白」を一つずつ、大切に埋めていた。

お茶を飲み干し、ふかふかの毛布にくるまりながら、ヤジュジュは心地よい眠気に身を委ねる。
次に目が覚めても、そこには戦場ではなく、大好きな兄弟たちの気配がある。その確信こそが、彼が何よりもしたかった「安心の読書」であり、最高の幸福の形だった。
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