闘技場に売られた獣

ケロン軍の極秘作戦指揮室。ホログラムに映し出されていた頑強な防衛要塞が、凄まじい轟音と共に一瞬で瓦解していく映像が流れていた。

味方の損害、ゼロ。作戦時間、わずか数分。
画面の向こうで立ち上る硝煙の中から現れたのは、ヤジュジュ小隊の兵士たちですらない。

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### 神話の具現

そこには、戦車を玩具のように踏み潰し、一吠えで敵の防衛システムを狂わせる、**山立ちに匹敵するほどの巨大なオオカミ**の姿があった。

美しい銀の毛並みを血と硝煙で染め、残虐なまでに精密な動きで敵軍を蹂躙していくその巨獣こそが、ヤジュジュの真の切り札であり、ハーフとしての特異な能力――「巨狼化」だった。

「ふぅ……。やはり、この姿が一番手っ取り早いね」

光の粒子と共に、巨大なオオカミの輪郭が縮んでいく。煙の中から現れたヤジュジュは、いつも通りの穏やかな笑顔で、自身の軍服の襟を整えていた。目元の子供の線や、ふさふさとした尻尾はそのままに、ただその背後には数万の敵軍が瞬時に壊滅した「完全なる死の静寂」が広がっている。

「ヤジュジュ小隊の侵略がなぜ一週間以内に終わるのか」、その本当の理由を軍本部で知る者は少ない。
彼が本気で暴れれば、一週間どころか「一瞬」で全てが真っさらな更地へと変わるのだ。

### 破壊の後の静寂

「お疲れ様、みんな。これでこの惑星の戦いは終わりだ。無駄な長引き方をしなくて良かったよ」

ヤジュジュは、まだ恐怖に震えている自小隊の兵士たちに優しく声をかけた。
はじめに全てを壊し、兵士を殺し、侵略する。その自論を、彼はこの圧倒的な暴力をもって具現化していた。抵抗する意志を持つ者さえ残さず、一瞬で絶望のどん底に叩き落とす。それこそが、彼が闘技場で培った、最も合理的で慈悲なき「終わらせ方」だった。

戦場に座り込み、ふさふさとした大きな尻尾で、自らが踏み潰した敵の装甲車の残骸を「ゆらり、ゆらり」と弄ぶヤジュジュ。

その愛らしい姿と、たった今彼が引き起こした神話級の惨劇のギャップに、味方の兵たちさえも、畏怖を込めてその銀の背中を見つめることしかできなかった。
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