闘技場に売られた獣
日向家の裏庭に、突如として鳴り響いた警告アラート。
空を割って現れたのは、ケロン人の宿敵・ヴァイパーの一族だった。しかも、今回はいつものペコポン居座り組とは放つオーラが違う、全身に無数の修羅場を潜った傷跡を持つ実力派の個体だ。
「ケロン軍め、今日こそ決着をつけてやる……! 特にそこにいる赤い一等兵、貴様の首を――」
「待て、ヴァイパー! 俺の目の前でこれ以上の勝手は……っ!」
ギロロが即座にバズーカを構え、一触即発の空気が流れたその時。テントの中から、騒ぎを聞きつけたヤジュジュがひょっこりと顔を出した。
「ギロロ、何事だい? なんだか外が騒がしいけれど……」
---
### 地獄の戦友
ヤジュジュの姿が視界に入った瞬間、ヴァイパーの蛇の目が限界まで見開かれた。構えていたレーザー銃の手が、目に見えてガタガタと震え出す。
「お、お前……! その狼の耳に、目元の線……! まさか、第十七闘技場の『銀狼』、ヤジュジュか!?」
「え……? おや、その傷、それに独特の構え……。もしかして、あの時の『三十七号』かい?」
ヤジュジュの狼の耳がピクリと跳ね、後ろの尻尾が「あ!」と気付いたように揺れた。
ヴァイパーは銃を投げ捨てるようにしてシステムを解除すると、信じられないものを見る目でヤジュジュに歩み寄った。
「本当にヤジュジュか! 生きていたのか! あの最悪の乱戦で、背中を預け合って以来だな!」
「ふふ、懐かしいね。お前が左から来た巨獣の首を刎ねてくれなければ、私は今頃ここにはいなかったよ。あの節はありがとう」
にこやかに笑い合う二人。ギロロは構えたバズーカをどうしていいか分からず、「あ、兄さん……? こいつと知り合いなのか……!?」と完全に置いてけぼりになっていた。
娯楽のない地獄の闘技場。そこでは、ケロン人もヴァイパーも関係なかった。ただ「明日生き延びるため」だけに、時に敵として殺し合い、時に共闘して理不尽なシステムに抗った、血と硝煙の戦友だったのだ。
### 呆気なき停戦
「まさか、お前がケロン軍の将校になって、こんな辺境の惑星にいるとはな……」
ヴァイパーは腕を組み、深くため息をついた。そして、目の前で今にも爆発しそうなギロロの、凄まじい警戒の視線に気づく。
「……なるほど。この狂犬(ギロロ)が、噂に聞くお前の弟か。……ケロン星に残ってきたあの過保護な男(ガルル)が、よくお前をこんな危険な前線へ送り出したものだな」
「ふふ、ガルルには内緒でギロロの応援に来たんだよ。私の大切な家族だからね」
ヤジュジュが嬉しそうに尻尾を揺らすと、ヴァイパーは「やれやれ」と首を振った。
「おい、ケロン人。今日の侵略(ビジネス)はここまでだ。引き上げる」
「な……っ!? 何を企んでいる、ヴァイパー!」
ギロロが警戒を強めるが、ヴァイパーは吐き捨てるように言った。
「企むも何も、**ヤジュジュがいるんだったら停戦するわ。** こいつの戦い方のエグさは身に沁みて分かっているからな。初手で星ごと真っさらにされるような割に合わん戦いはゴメンだ。それに……地獄を生き延びた戦友と、今さら殺し合いなど性質(タチ)の悪い冗談にもならん」
ヴァイパーはそう言うと、ヤジュジュに向き直り、彼らの流儀である短い敬礼を送った。
「生きてて良かったな、ヤジュジュ。……次はまともな酒場(バー)で会おう」
「うん、ありがとう。お前も元気でね」
### 嵐の去った裏庭
ヴァイパーのポッドが、あっさりと空の彼方へ消え去っていく。
残されたギロロは、バズーカを抱えたまま、呆然と兄を振り返った。
「……兄さん。あのヴァイパーにそこまで言わせるとは、闘技場でのあんたは一体……」
「ふふ、大したことじゃないよ。ただ、少しだけ生き残ることに必死だっただけさ」
ヤジュジュはそう言って微笑むが、その目元の線はどこか遠い過去を物語っていた。ヤジュジュはギロロの元へ歩み寄ると、その赤い腕にそっと自分の腕を絡ませた。
「でも、戦わずに済んで良かった。今日の夕食は、ギロロが作ってくれるパンケーキがいいな」
「っ、お、俺のパンケーキか!? よし、すぐに準備する!」
おねだりされて一瞬で機嫌を直したギロロがキッチンへ走っていくのを見ながら、ヤジュジュは弟の背中を見つめ、パタパタと嬉しそうに尻尾を揺らすのだった。
空を割って現れたのは、ケロン人の宿敵・ヴァイパーの一族だった。しかも、今回はいつものペコポン居座り組とは放つオーラが違う、全身に無数の修羅場を潜った傷跡を持つ実力派の個体だ。
「ケロン軍め、今日こそ決着をつけてやる……! 特にそこにいる赤い一等兵、貴様の首を――」
「待て、ヴァイパー! 俺の目の前でこれ以上の勝手は……っ!」
ギロロが即座にバズーカを構え、一触即発の空気が流れたその時。テントの中から、騒ぎを聞きつけたヤジュジュがひょっこりと顔を出した。
「ギロロ、何事だい? なんだか外が騒がしいけれど……」
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### 地獄の戦友
ヤジュジュの姿が視界に入った瞬間、ヴァイパーの蛇の目が限界まで見開かれた。構えていたレーザー銃の手が、目に見えてガタガタと震え出す。
「お、お前……! その狼の耳に、目元の線……! まさか、第十七闘技場の『銀狼』、ヤジュジュか!?」
「え……? おや、その傷、それに独特の構え……。もしかして、あの時の『三十七号』かい?」
ヤジュジュの狼の耳がピクリと跳ね、後ろの尻尾が「あ!」と気付いたように揺れた。
ヴァイパーは銃を投げ捨てるようにしてシステムを解除すると、信じられないものを見る目でヤジュジュに歩み寄った。
「本当にヤジュジュか! 生きていたのか! あの最悪の乱戦で、背中を預け合って以来だな!」
「ふふ、懐かしいね。お前が左から来た巨獣の首を刎ねてくれなければ、私は今頃ここにはいなかったよ。あの節はありがとう」
にこやかに笑い合う二人。ギロロは構えたバズーカをどうしていいか分からず、「あ、兄さん……? こいつと知り合いなのか……!?」と完全に置いてけぼりになっていた。
娯楽のない地獄の闘技場。そこでは、ケロン人もヴァイパーも関係なかった。ただ「明日生き延びるため」だけに、時に敵として殺し合い、時に共闘して理不尽なシステムに抗った、血と硝煙の戦友だったのだ。
### 呆気なき停戦
「まさか、お前がケロン軍の将校になって、こんな辺境の惑星にいるとはな……」
ヴァイパーは腕を組み、深くため息をついた。そして、目の前で今にも爆発しそうなギロロの、凄まじい警戒の視線に気づく。
「……なるほど。この狂犬(ギロロ)が、噂に聞くお前の弟か。……ケロン星に残ってきたあの過保護な男(ガルル)が、よくお前をこんな危険な前線へ送り出したものだな」
「ふふ、ガルルには内緒でギロロの応援に来たんだよ。私の大切な家族だからね」
ヤジュジュが嬉しそうに尻尾を揺らすと、ヴァイパーは「やれやれ」と首を振った。
「おい、ケロン人。今日の侵略(ビジネス)はここまでだ。引き上げる」
「な……っ!? 何を企んでいる、ヴァイパー!」
ギロロが警戒を強めるが、ヴァイパーは吐き捨てるように言った。
「企むも何も、**ヤジュジュがいるんだったら停戦するわ。** こいつの戦い方のエグさは身に沁みて分かっているからな。初手で星ごと真っさらにされるような割に合わん戦いはゴメンだ。それに……地獄を生き延びた戦友と、今さら殺し合いなど性質(タチ)の悪い冗談にもならん」
ヴァイパーはそう言うと、ヤジュジュに向き直り、彼らの流儀である短い敬礼を送った。
「生きてて良かったな、ヤジュジュ。……次はまともな酒場(バー)で会おう」
「うん、ありがとう。お前も元気でね」
### 嵐の去った裏庭
ヴァイパーのポッドが、あっさりと空の彼方へ消え去っていく。
残されたギロロは、バズーカを抱えたまま、呆然と兄を振り返った。
「……兄さん。あのヴァイパーにそこまで言わせるとは、闘技場でのあんたは一体……」
「ふふ、大したことじゃないよ。ただ、少しだけ生き残ることに必死だっただけさ」
ヤジュジュはそう言って微笑むが、その目元の線はどこか遠い過去を物語っていた。ヤジュジュはギロロの元へ歩み寄ると、その赤い腕にそっと自分の腕を絡ませた。
「でも、戦わずに済んで良かった。今日の夕食は、ギロロが作ってくれるパンケーキがいいな」
「っ、お、俺のパンケーキか!? よし、すぐに準備する!」
おねだりされて一瞬で機嫌を直したギロロがキッチンへ走っていくのを見ながら、ヤジュジュは弟の背中を見つめ、パタパタと嬉しそうに尻尾を揺らすのだった。
