闘技場に売られた獣

日向家の裏庭。それは、突如として飛来した未確認の侵略ポッドによって、瞬時に焦土と化した。
爆圧と熱波が辺りをなぎ払い、ギロロでさえもその衝撃に一時的に意識を飛ばし、地面に這いつくばる。

煙が立ち込める静寂の中、侵略者の兵士たちが勝ち誇ったようにタラップを降りてきた。しかし、彼らが目にしたのは、想定外の光景だった。

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### 精密なる身体記憶

「……っ、ふぅ。……驚いたね。不意打ちにしては、なかなかいい威力だったよ」

爆心地のすぐ側で、ヤジュジュは誰よりも早く、そして機械のように正確な動作で立ち上がっていた。
普通なら、これほどの衝撃を受ければ脳が揺れ、平衡感覚を失うはずだ。しかし、ヤジュジュの体は、彼の意識が追いつくよりも先に「戦うための最適解」をなぞっていた。

ヤジュジュが日頃、狂気を感じさせるほどしつこく繰り返している基礎訓練。
それは、どれほど極限の状態に置かれても、たとえ思考が停止しても、日頃と同じパフォーマンスを発揮できるように――あらゆる動きや機器の操作を、細胞の一つ一つにまで叩き込むためのものだった。

「な、なんだ……!? なぜもう動ける!?」

驚愕する侵略者に対し、ヤジュジュは無機質な手つきで、腰に携えた最新鋭の電子デバイスを起動させた。

### 思考を超えた速度

ヤジュジュの指先は、爆発の影響で微かに震えていた。しかし、その指は淀みなく、ミリ単位の狂いもなく空中に投影されたコンソールを叩く。

「……出力安定。照準、自動補正をキャンセル。手動に切り替え……。うん、異常なしだ」

感情を排したような呟き。ヤジュジュにとって、戦いはもはや「日常」の延長線上にあった。
かつて娯楽のない闘技場で、意識が混濁するほどの痛みに耐えながら、生き残るためだけに爪を振るい続けた記憶。その地獄が、彼に「極限こそがデフォルト」という特異な感覚を植え付けていた。

「ギロロ、寝ている場合じゃないよ。……敵は三名。一人は私が無力化するから、残りは任せていいかな?」

「……っ、兄さん……!?」

ようやく意識を取り戻したギロロが目にしたのは、硝煙の中で、一寸の乱れもなく銃を構えるヤジュジュの背中だった。

### 日常としての殲滅

「あ、あああ……っ! 死ねぇ!!」

パニックに陥った侵略者が発砲する。
ヤジュジュはそれを、まるで飛んできた羽虫を避けるように最小限の動きで回避した。訓練で数万回繰り返した回避機動。彼の体は、弾道の計算すら待たずに最適な位置へ移動している。

「……無駄だよ。私の体は、お前たちが想像するよりもずっと、戦うことに対して『誠実』なんだ」

閃光。
ヤジュジュの放った一撃は、敵の装甲の最も脆弱な一点を正確に貫いた。

彼にとって、この侵略者との邂逅も、日頃の過酷なシミュレーションの一つに過ぎない。
「次に目が覚めた時、そこが戦場であっても困らないように」。
その強迫観念に近い準備の成果が、今、圧倒的な死神の舞となって現れていた。

立ち上がったヤジュジュの尻尾は、感情の昂ぶりを見せることなく、ただ静かに、次の行動に備えて重心を保つためだけに、ピンと張り詰めていた。
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