闘技場に売られた獣
ペコポンの山奥。ギロロが休暇中に拠点として利用している原生林は、ケロン星の猛獣たちには及ばないものの、狩猟本能を刺激するには十分な獲物が潜んでいた。
「……いいかい、ギロロ。今日、夕食のメインディッシュを決めるのは、どちらがより大きな獲物を仕留めるかだ。ふふ、負けないよ?」
ヤジュジュは軽やかな身のこなしで樹上に跳ね上がると、狼のような耳をぴくぴくと動かした。その瞳は、普段の穏やかさとは一変し、獲物を狙う鋭い「獣」の光を宿している。
「望むところだ、兄さん! 武器の扱いは、今の俺の方が上だということを証明してやる!」
ギロロは愛用のライフルを構え、深く険しい森の中へと足を踏み入れた。
---
### 静寂の追跡
ヤジュジュは音もなく枝から枝へと飛び移る。彼は獣人のハーフとしての特性を最大限に活かし、視覚よりも「匂い」と「微かな空気の振動」を追っていた。
一方のギロロは、最新の軍事センサーと長年の経験に基づいたトラップ、そして何よりその執念で、森の主たる巨獣の足跡を追う。
「……いたね」
ヤジュジュの鼻が、湿った土と獣特有の脂の匂いを捉えた。
視線の先には、この森でも最大級の体躯を誇る「大猪」が、地面を掘り返している。ヤジュジュは呼吸を整え、音もなく頭上から急降下した。
「はぁっ!」
鋭い鉤爪が閃き、獲物の急所を正確に捉える。一切の無駄がない、かつて闘技場で生き延びるために培われた「殺しの技術」だった。
### 意地と執念の結末
夕暮れ時、二人は集合場所の焚き火の前に姿を現した。
「……ふふ、どうだいギロロ。こっちは立派な大猪だよ」
ヤジュジュが自分より大きな獲物を片手で引きずりながら、少しだけ得意げに尻尾を左右に揺らした。その表情には、狩りの興奮による上気と、弟に「いいところ」を見せられた喜びが混ざっている。
「……ふん。兄さんにしては上出来だな。だが、俺の獲物を見てから言うんだな」
ギロロが後ろから引きずってきたのは――なんと、この森の食物連鎖の頂点に君臨する、二メートルを超える巨熊だった。
「ひゃあ! ギロロ、そんな大きなものを……!」
「数日前から目星をつけていたんだ。トラップと近接格闘の合わせ技でな。……大きさなら、俺の勝ちだ」
ギロロはマフラーに顔を埋めながら、鼻をツンとさせて言った。だが、ヤジュジュの驚く顔が見られたことに、内心ではふさふさと(尻尾はないが)喜びを感じている。
### 狩りのあとの宴
「参ったよ。やっぱりギロロは、頼りになる立派な戦士だね」
ヤジュジュはそう言って、ギロロの頭を優しく撫でた。褒められたギロロは真っ赤になり、「……当然だ」とぶっきらぼうに返す。
「でも、解体は私の役目だね。鉤爪の使い道なら、こちらに分がある」
「……ああ。俺は火を起こそう。最高のディナーにするぞ、兄さん」
獲物の大きさを競い合っていた火花はどこへやら、二人の間には再び穏やかな空気が流れ出す。
ヤジュジュの尻尾は、弟との充実した時間を噛み締めるように、パタパタと心地よい音を立てて芝生を叩いていた。
夜の森に広がる肉の焼ける匂いと、時折混ざる二人の笑い声。
かつて奪われた「平穏」という名の果実を、二人は今、分け合うようにして存分に味わっていた。
「……いいかい、ギロロ。今日、夕食のメインディッシュを決めるのは、どちらがより大きな獲物を仕留めるかだ。ふふ、負けないよ?」
ヤジュジュは軽やかな身のこなしで樹上に跳ね上がると、狼のような耳をぴくぴくと動かした。その瞳は、普段の穏やかさとは一変し、獲物を狙う鋭い「獣」の光を宿している。
「望むところだ、兄さん! 武器の扱いは、今の俺の方が上だということを証明してやる!」
ギロロは愛用のライフルを構え、深く険しい森の中へと足を踏み入れた。
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### 静寂の追跡
ヤジュジュは音もなく枝から枝へと飛び移る。彼は獣人のハーフとしての特性を最大限に活かし、視覚よりも「匂い」と「微かな空気の振動」を追っていた。
一方のギロロは、最新の軍事センサーと長年の経験に基づいたトラップ、そして何よりその執念で、森の主たる巨獣の足跡を追う。
「……いたね」
ヤジュジュの鼻が、湿った土と獣特有の脂の匂いを捉えた。
視線の先には、この森でも最大級の体躯を誇る「大猪」が、地面を掘り返している。ヤジュジュは呼吸を整え、音もなく頭上から急降下した。
「はぁっ!」
鋭い鉤爪が閃き、獲物の急所を正確に捉える。一切の無駄がない、かつて闘技場で生き延びるために培われた「殺しの技術」だった。
### 意地と執念の結末
夕暮れ時、二人は集合場所の焚き火の前に姿を現した。
「……ふふ、どうだいギロロ。こっちは立派な大猪だよ」
ヤジュジュが自分より大きな獲物を片手で引きずりながら、少しだけ得意げに尻尾を左右に揺らした。その表情には、狩りの興奮による上気と、弟に「いいところ」を見せられた喜びが混ざっている。
「……ふん。兄さんにしては上出来だな。だが、俺の獲物を見てから言うんだな」
ギロロが後ろから引きずってきたのは――なんと、この森の食物連鎖の頂点に君臨する、二メートルを超える巨熊だった。
「ひゃあ! ギロロ、そんな大きなものを……!」
「数日前から目星をつけていたんだ。トラップと近接格闘の合わせ技でな。……大きさなら、俺の勝ちだ」
ギロロはマフラーに顔を埋めながら、鼻をツンとさせて言った。だが、ヤジュジュの驚く顔が見られたことに、内心ではふさふさと(尻尾はないが)喜びを感じている。
### 狩りのあとの宴
「参ったよ。やっぱりギロロは、頼りになる立派な戦士だね」
ヤジュジュはそう言って、ギロロの頭を優しく撫でた。褒められたギロロは真っ赤になり、「……当然だ」とぶっきらぼうに返す。
「でも、解体は私の役目だね。鉤爪の使い道なら、こちらに分がある」
「……ああ。俺は火を起こそう。最高のディナーにするぞ、兄さん」
獲物の大きさを競い合っていた火花はどこへやら、二人の間には再び穏やかな空気が流れ出す。
ヤジュジュの尻尾は、弟との充実した時間を噛み締めるように、パタパタと心地よい音を立てて芝生を叩いていた。
夜の森に広がる肉の焼ける匂いと、時折混ざる二人の笑い声。
かつて奪われた「平穏」という名の果実を、二人は今、分け合うようにして存分に味わっていた。
