闘技場に売られた獣

ケロン軍本部のプライベート・ラウンジ。本来なら将校たちの休息の場であるはずのそこは今、二人の男による極めて重く、そして極めて個人的な「愛の定義」を巡る戦場と化していた。

その中心で、ヤジュジュは小さくなってソファに座り、真っ赤な顔で両手に持った湯呑みを見つめている。

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### 支配か、自由か

「ヤジュジュの過去を考えれば、答えは明白だ。これ以上、彼に不測の事態が起きる可能性を万に一つも残してはならない」

ガルルは腕を組み、冷徹な軍人の顔で断言した。その瞳には、弟を失いかけた過去が生んだ、どす黒いほどの独占欲が渦巻いている。

「私の手の届く場所……そう、軍の監視下であり、私の執務室から数歩の場所に彼を置き、あらゆる危険から遮断する。それが、兄としての、そして彼を愛する者としての責務だ。ヤジュジュ、お前はただ私の腕の中で、穏やかな眠りだけを享受していればいい」

「何を言っているんだ、ガルル! 兄さんのこれまでの苦労を考えたら、今こそ誰にも縛られず、自由に空を飛び、好きな場所へ行くべきなんだ!」

ギロロが机を叩いて猛然と反論する。

「閉じ込めておくなんて、あの闘技場の檻と同じじゃないか! 俺は兄さんに、ペコポンの青い空や、名もなき花の美しさを自分の足で見に行ってほしい。たとえ俺の目の届かない場所へ行くとしても、兄さんが笑っているなら、俺はそれを全力で支援する。それが本当の救いだ!」

### 暴走する兄弟愛

「自由は時に毒となる。守る者がいなければ、ヤジュジュはまたその優しさゆえに利用されるぞ」
「俺が影から守る! 誰にも気づかせず、兄さんの自由を脅かす芽をすべて摘んでみせる!」

ガルルは「支配」という名の保護を、ギロロは「放任」という名の献身を。
二人の主張は平行線のまま加速し、次第にその内容は「いかにヤジュジュを愛しているか」という過激なプレゼンテーションへと変貌していった。

「私はヤジュジュのために、軍の規律さえ書き換える用意がある」
「俺は兄さんのために、毎日一番いい肉を焼き、世界で一番安全な陣地を築いて待つ!」

### 限界の臨界点

「…………っ、もう……っ!」

ついに、ヤジュジュが声を上げた。湯呑みを持つ手は小刻みに震え、狼の耳は羞恥で根元まで真っ赤に染まっている。ふさふさの尻尾は、どうしていいか分からずぐるぐると落ち着きなく円を描いていた。

「二人とも、いい加減にしてくれないかい……!? 私が二人に、とてつもなく……その、愛されているのは、もう痛いほど分かったから!」

ヤジュジュは顔を覆い、指の隙間から二人を上目遣いで睨んだ。しかし、潤んだ瞳のせいで全く威圧感がない。

「ガルル、私は籠の鳥じゃないんだよ。そんなに閉じ込められたら、呼吸の仕方を忘れてしまう。それにギロロ……お前の気持ちは嬉しいけれど、自由すぎてお前の姿が見えなくなるのは、それはそれで寂しいんだ」

ヤジュジュの「寂しい」という言葉に、二人の兄弟がピクリと反応する。

「……とにかく! 私をどうするかを、私のいないところで競い合うのはもうやめておくれ。恥ずかしくて、次に二人の顔を見る時にどんな顔をすればいいか分からないじゃないか……っ」

顔を真っ赤にして、逃げるようにラウンジを飛び出していくヤジュジュ。
残されたガルルとギロロは、しばしの沈黙の後、同時に深くため息をついた。

「……寂しい、と言ったな」
「……ああ。……ガルル、今の顔、見たか? 凄まじく可愛かったぞ」
「……認めざるを得ないな。……よし、ギロロ。折衷案だ。ヤジュジュの自由を尊重しつつ、我々二人で二十四時間体制の完全警護を敷くというのはどうだ?」
「乗った」

愛されすぎて逃げ場のないヤジュジュの受難は、どうやら明日からも続きそうであった。
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