闘技場に売られた獣
夕暮れの裏庭、焚き火が爆ぜる音だけが響く静かな時間。ギロロは愛銃の照準を調整する振りをしながら、隣に座る兄、ヤジュジュの様子を盗み見ていた。
ヤジュジュはケロン人と獣人のハーフだ。狼のような耳に加え、腰のあたりからは、ふさふさとした立派な獣の尻尾が伸びている。そして今、その尻尾はヤジュジュの感情を代弁するかのように、忙しなく動いていた。
---
### 正直すぎる尻尾
「ギロロ、今日のスープは本当に美味しいね。お前の料理の腕は、戦士のそれとは思えないくらい繊細だよ」
ヤジュジュが穏やかに微笑む。本人はいつも通りの「優しい兄」として振る舞っているつもりなのだろう。だが、その後ろで**ふさふさの尻尾が、まるでメトロノームのように左右へ激しく、楽しげに振られていた。**
(……隠せていない。これっぽっちも、な)
ギロロは不器用な表情を崩さないよう努めながら、心の中で一人ごちる。
ヤジュジュは昔から、言葉遣いや表情は柔らかく落ち着いているが、感情の機微がすべて尻尾に出てしまう。
美味しいものを食べれば左右に大きく揺れ、ギロロに褒められれば少しだけ誇らしげにピンと立ち、そして――。
「……? ギロロ、どうしたんだい? 私の顔に何かついているかな」
「……っ、いや。なんでもない」
ヤジュジュが不思議そうに首を傾げた瞬間、その尻尾が「しゅん」と力を失い、地面に力なく垂れ下がった。 ギロロのぶっきらぼうな態度に、嫌われてしまったのではないかと不安になった証拠だ。
### ギロロの内心
(……っ、この……!)
その落差に、ギロロの胸の奥がキュッと締め付けられる。
普段、戦場では冷徹な判断を下す軍曹も、この「正直すぎる尻尾」の攻撃には滅法弱かった。
ヤジュジュが悲しげに瞳を伏せると、垂れ下がった尻尾の先が、申し訳なさそうにピクピクと震える。その様子が、ギロロにはたまらなく愛らしく、そして放っておけないものに見えた。
「……嫌いなわけじゃない。ただ、その、スープを褒められて……照れていただけだ」
ギロロが顔を背けながらそう白状した途端。
**パァッ、とヤジュジュの尻尾が再び跳ね上がり、今度は千切れんばかりにバタバタと振られた。** 喜びを爆発させているのが、手に取るように分かる。
「ふふ、そうだったのかい? ギロロは昔から、照れ隠しが下手だね」
「……黙れ」
### 秘めたる独占欲
ヤジュジュは、自分の尻尾がこれほどまでに饒舌だとは夢にも思っていないのだろう。
そんな無防備な兄を見て、ギロロは口元をマフラーで隠しながら、密かに決意する。
(この尻尾を、他の奴には絶対に見せたくないな……)
特にあの兄、ガルル。彼がこの尻尾の性質を知れば、間違いなくあの「いい声」を使って、ヤジュジュを思うがままに振り回すに違いない。
ヤジュジュが喜び、不安になり、安堵する……そのすべての「揺れ」を特等席で見られるのは、自分だけでいい。
「……おい、兄さん。尻尾がスープに入りそうだぞ。もう少しこっちへ寄れ」
「おや、ごめんよ。ありがとう、ギロロ」
寄り添ってきたヤジュジュの尻尾が、ギロロの脚に「くるり」と甘えるように巻き付く。
ギロロはその感触に、心臓が爆発しそうなほどの可愛らしさを感じながらも、決して顔には出さず、静かに薪をくべ直すのだった。
ヤジュジュはケロン人と獣人のハーフだ。狼のような耳に加え、腰のあたりからは、ふさふさとした立派な獣の尻尾が伸びている。そして今、その尻尾はヤジュジュの感情を代弁するかのように、忙しなく動いていた。
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### 正直すぎる尻尾
「ギロロ、今日のスープは本当に美味しいね。お前の料理の腕は、戦士のそれとは思えないくらい繊細だよ」
ヤジュジュが穏やかに微笑む。本人はいつも通りの「優しい兄」として振る舞っているつもりなのだろう。だが、その後ろで**ふさふさの尻尾が、まるでメトロノームのように左右へ激しく、楽しげに振られていた。**
(……隠せていない。これっぽっちも、な)
ギロロは不器用な表情を崩さないよう努めながら、心の中で一人ごちる。
ヤジュジュは昔から、言葉遣いや表情は柔らかく落ち着いているが、感情の機微がすべて尻尾に出てしまう。
美味しいものを食べれば左右に大きく揺れ、ギロロに褒められれば少しだけ誇らしげにピンと立ち、そして――。
「……? ギロロ、どうしたんだい? 私の顔に何かついているかな」
「……っ、いや。なんでもない」
ヤジュジュが不思議そうに首を傾げた瞬間、その尻尾が「しゅん」と力を失い、地面に力なく垂れ下がった。 ギロロのぶっきらぼうな態度に、嫌われてしまったのではないかと不安になった証拠だ。
### ギロロの内心
(……っ、この……!)
その落差に、ギロロの胸の奥がキュッと締め付けられる。
普段、戦場では冷徹な判断を下す軍曹も、この「正直すぎる尻尾」の攻撃には滅法弱かった。
ヤジュジュが悲しげに瞳を伏せると、垂れ下がった尻尾の先が、申し訳なさそうにピクピクと震える。その様子が、ギロロにはたまらなく愛らしく、そして放っておけないものに見えた。
「……嫌いなわけじゃない。ただ、その、スープを褒められて……照れていただけだ」
ギロロが顔を背けながらそう白状した途端。
**パァッ、とヤジュジュの尻尾が再び跳ね上がり、今度は千切れんばかりにバタバタと振られた。** 喜びを爆発させているのが、手に取るように分かる。
「ふふ、そうだったのかい? ギロロは昔から、照れ隠しが下手だね」
「……黙れ」
### 秘めたる独占欲
ヤジュジュは、自分の尻尾がこれほどまでに饒舌だとは夢にも思っていないのだろう。
そんな無防備な兄を見て、ギロロは口元をマフラーで隠しながら、密かに決意する。
(この尻尾を、他の奴には絶対に見せたくないな……)
特にあの兄、ガルル。彼がこの尻尾の性質を知れば、間違いなくあの「いい声」を使って、ヤジュジュを思うがままに振り回すに違いない。
ヤジュジュが喜び、不安になり、安堵する……そのすべての「揺れ」を特等席で見られるのは、自分だけでいい。
「……おい、兄さん。尻尾がスープに入りそうだぞ。もう少しこっちへ寄れ」
「おや、ごめんよ。ありがとう、ギロロ」
寄り添ってきたヤジュジュの尻尾が、ギロロの脚に「くるり」と甘えるように巻き付く。
ギロロはその感触に、心臓が爆発しそうなほどの可愛らしさを感じながらも、決して顔には出さず、静かに薪をくべ直すのだった。
