闘技場に売られた獣
夕暮れ時のキャンプ地。ギロロはいつものように、体の一部とも言える愛銃のメンテナンスを行っていた。しかし、その日の「手入れ」の対象は、火器ではなかった。
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### 異例のメンテナンス
「……兄さん、手を貸せ」
「えっ……? ああ、いいけれど……」
ギロロに促されるまま、ヤジュジュは焚き火の前に座り、恐る恐る右手を差し出した。ギロロが取り出したのは、銃の部品を磨くための最高級のオイルと、使い込まれた柔らかいネル布だ。
ギロロはヤジュジュの指先を一つずつ、まるで精密機器を扱うような手つきで固定した。そして、その鋭い鉤爪を布で包み込み、丁寧に、一点の曇りも残さないように磨き始める。
「ギ、ギロロ……。なんだか、凄く真剣だね。そんなに丁寧に磨かなくてもいいんだよ?」
「……黙っていろ。これはあんたの最大の武器であり、身を守る術だ。手入れを怠れば、いざという時に鈍る」
ギロロは視線を上げず、無骨な指先でヤジュジュの爪の付け根をそっと押さえた。オイルの滑らかな感触と、布が爪を滑る心地よい摩擦が、ヤジュジュの指先から腕へ、そして心臓へと伝わっていく。
### 擽ったい独占欲
ヤジュジュは、次第に顔が熱くなっていくのを自覚した。
ギロロは、普段の武器メンテナンスと同じ――いや、それ以上の執念でヤジュジュの爪を磨いている。その手つきは驚くほど優しく、それでいて獲物を逃さないような力強さがあった。
(……なんだろう、この感じ。まるで、私が彼の『持ち物』にされているような……)
「……兄さんは、自分の価値を分かっていない。この爪がどれほどの修羅場を潜り、今のあんたを支えてきたのか……。俺が磨くことで、その誇りを取り戻してやるんだ」
ギロロが低く響く声で呟く。その言葉は、ヤジュジュの耳を甘く、熱く痺れさせた。
磨き上げられた爪が焚き火の光を跳ね返し、妖しく輝き始める。自分の体の一部が、弟の手によって特別な価値を与えられていく過程に、ヤジュジュは抗いがたい気恥ずかしさと、甘美な痺れを感じていた。
「ふふ……、ギロロ。お前は本当に、私のことが好きなんだね」
「……っ! 何を、馬鹿なことを……! 武器の手入れは軍人の基本だと言っているだろう!」
ヤジュジュの柔らかい言葉に、ギロロの手が一瞬止まり、その顔面が真っ赤に染まった。動揺を隠すように、彼はより一層力を込めて、キュッキュッ、と音が出るほど爪を磨き直す。
「ああ、ごめんよ。でも、こんなに大切に扱われたら……なんだか、照れてしまうじゃないか」
ヤジュジュが少しだけ潤んだ瞳で微笑むと、ギロロはさらに耳まで赤くし、ぶつぶつと「……磨き残しがある」だの「角度が甘い」だのと訳のわからない小言を並べ始めた。
結局その夜、ヤジュジュの十本の爪がすべて鏡のように磨き上がるまで、ギロロはその手を片時も離そうとはしなかった。
磨かれたばかりの爪は、二人の間に流れる不器用で、けれど深い愛情を、暗闇の中で静かに反射し続けていた。
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### 異例のメンテナンス
「……兄さん、手を貸せ」
「えっ……? ああ、いいけれど……」
ギロロに促されるまま、ヤジュジュは焚き火の前に座り、恐る恐る右手を差し出した。ギロロが取り出したのは、銃の部品を磨くための最高級のオイルと、使い込まれた柔らかいネル布だ。
ギロロはヤジュジュの指先を一つずつ、まるで精密機器を扱うような手つきで固定した。そして、その鋭い鉤爪を布で包み込み、丁寧に、一点の曇りも残さないように磨き始める。
「ギ、ギロロ……。なんだか、凄く真剣だね。そんなに丁寧に磨かなくてもいいんだよ?」
「……黙っていろ。これはあんたの最大の武器であり、身を守る術だ。手入れを怠れば、いざという時に鈍る」
ギロロは視線を上げず、無骨な指先でヤジュジュの爪の付け根をそっと押さえた。オイルの滑らかな感触と、布が爪を滑る心地よい摩擦が、ヤジュジュの指先から腕へ、そして心臓へと伝わっていく。
### 擽ったい独占欲
ヤジュジュは、次第に顔が熱くなっていくのを自覚した。
ギロロは、普段の武器メンテナンスと同じ――いや、それ以上の執念でヤジュジュの爪を磨いている。その手つきは驚くほど優しく、それでいて獲物を逃さないような力強さがあった。
(……なんだろう、この感じ。まるで、私が彼の『持ち物』にされているような……)
「……兄さんは、自分の価値を分かっていない。この爪がどれほどの修羅場を潜り、今のあんたを支えてきたのか……。俺が磨くことで、その誇りを取り戻してやるんだ」
ギロロが低く響く声で呟く。その言葉は、ヤジュジュの耳を甘く、熱く痺れさせた。
磨き上げられた爪が焚き火の光を跳ね返し、妖しく輝き始める。自分の体の一部が、弟の手によって特別な価値を与えられていく過程に、ヤジュジュは抗いがたい気恥ずかしさと、甘美な痺れを感じていた。
「ふふ……、ギロロ。お前は本当に、私のことが好きなんだね」
「……っ! 何を、馬鹿なことを……! 武器の手入れは軍人の基本だと言っているだろう!」
ヤジュジュの柔らかい言葉に、ギロロの手が一瞬止まり、その顔面が真っ赤に染まった。動揺を隠すように、彼はより一層力を込めて、キュッキュッ、と音が出るほど爪を磨き直す。
「ああ、ごめんよ。でも、こんなに大切に扱われたら……なんだか、照れてしまうじゃないか」
ヤジュジュが少しだけ潤んだ瞳で微笑むと、ギロロはさらに耳まで赤くし、ぶつぶつと「……磨き残しがある」だの「角度が甘い」だのと訳のわからない小言を並べ始めた。
結局その夜、ヤジュジュの十本の爪がすべて鏡のように磨き上がるまで、ギロロはその手を片時も離そうとはしなかった。
磨かれたばかりの爪は、二人の間に流れる不器用で、けれど深い愛情を、暗闇の中で静かに反射し続けていた。
