亀と獣
夜が深まり、地下の隠れ家は静まり返っていた。
みんながそれぞれの部屋で眠りにつく中、ゆきは自分のベッドの中でどうしても目が冴えてしまっていた。
(なんだか全然眠れない……。そうだ、マイキーならまだ起きてるかも……?)
猫のミュータントになってから、夜行性の血が騒ぐのか、夜中に妙に元気が出てしまうことがたまにある。
ゆきはそっと布団から抜け出すと、忍者のように足音を消しながら、マイキーの部屋の前にやってきた。
トントン、と控えめにドアをノックする。
返事はないが、中の隙間からうっすらと明かりが漏れている。
「マイキー……? 起きてる?」
ドアを少しだけ開けて覗いてみると、ベッドの上でクッションを抱きしめたマイキーが、小さなゲーム機を片手にウトウトと舟を漕いでいた。
「ん……あ……? あれ、ゆきちゃん……?」
マイキーは目をこすりながら、ふにゃっと柔らかい笑顔を浮かべた。
「あのね、眠れなくって……。もしよかったら、少しだけ一緒に遊んでくれないかなって思って……ダメ……?」
申し訳なさそうに耳としっぽをぺこんと下げてお願いするゆきを見て、マイキーは一瞬パチパチとまばたきをした後、ぱっと顔を輝かせた。
「もう、しょうがないなあ!」
マイキーはゲーム機を放り出すと、ベッドから跳ね起きる。
「夜更かし大歓迎! 実は僕も全然眠れなかったんだよねー! ゆきちゃん、ナイスタイミング!」
「ほんと!? よかったぁ……!」
ほっと胸をなで下ろすゆきに、マイキーは「しーっ、あまり大きな声出すとラフィが起きて怒るからね」と、いたずらっぽく人差し指を口にあててニヤリと笑った。
(あの過保護すぎるラファエロに怒られたら一巻の終わりだ、とゆきも慌てて口にチャックをするように小さくうなずく)
「で、何して遊ぶ? 隠れ家でかくれんぼする?」
「ううん、夜だし、静かにできる遊びがいいな。例えば……絵しりとりとか!」
「おっ、それいいね! 頭使うの好きだよー!」
二人はマイキーの部屋のラグの上に、コソコソと忍者のように音を立てないようペタッと座り込んだ。
マイキーがすぐさま引き出しからスケッチブックと色鉛筆のセットを取り出す。
「じゃあ、僕からいくね!」
マイキーがスラスラと描き上げたのは、愛嬌のある丸っこい顔。
「これなーんだ?」
「えっと……スイカ?」
「ぶーっ! ピザでしたー!」
「あ、ピザの耳のとこか! じゃあ、『ざ』だから……『ざりがに』!」
ゆきは色鉛筆を走らせ、ハサミのついた赤い生き物を器用に描き上げる。
マイキーはそれを覗き込んで「おっ、うまいじゃん!」とひそひそ声で褒めてくれた。
「ええと、『に』だから……『忍者』!」
マイキーが描いたのは、頭にハチマキを巻いた、自分そっくりのめちゃくちゃ可愛い忍者の絵だった。
「ふふっ、似てる」
「でしょ? じゃあ次はゆきちゃんの番、『じゃ』だよ!」
夜の静寂に包まれた部屋の中で、スケッチブックを挟んでクスハラと小さく笑い合う二人。
マイキーは、夜中にわざわざ自分の部屋を訪ねてきて「一緒に遊びたい」と言ってくれたことが心底嬉しかった。普段はお世話されることの多いゆきが、自分を遊びに誘ってくれた特別感が、マイキーの胸をポカポカと温めていた。
お互いにペンを走らせ、珍妙な絵に小声でツッコミを入れ合いながら、静かな夜の時間はあっという間に過ぎていく。
やがて、頭を使ったせいか、ゆきの猫耳がパタパタと倒れ、小さくあくびが漏れ始めた。
「……ふぁあ……なんだか、眠くなってきた……」
「あはは、そろそろ限界かな? じゃあ、今日の絵しりとりはここまで!」
マイキーはスケッチブックをパタンと閉じると、自分のベッドからふわふわの毛布を一枚引っ張り出し、ゆきの肩に優しくかけてやった。
「夜更かしに付き合ってくれてありがとう、マイキー。すごく楽しかった」
「ううん、僕こそ! また眠れない夜があったらいつでもおいでよ。僕がいつでも相手してあげるからさ!」
マイキーの太陽のように温かい笑顔を見て、ゆきは安心感に包まれながら、心地よい眠気の中に沈んでいくのだった。
みんながそれぞれの部屋で眠りにつく中、ゆきは自分のベッドの中でどうしても目が冴えてしまっていた。
(なんだか全然眠れない……。そうだ、マイキーならまだ起きてるかも……?)
猫のミュータントになってから、夜行性の血が騒ぐのか、夜中に妙に元気が出てしまうことがたまにある。
ゆきはそっと布団から抜け出すと、忍者のように足音を消しながら、マイキーの部屋の前にやってきた。
トントン、と控えめにドアをノックする。
返事はないが、中の隙間からうっすらと明かりが漏れている。
「マイキー……? 起きてる?」
ドアを少しだけ開けて覗いてみると、ベッドの上でクッションを抱きしめたマイキーが、小さなゲーム機を片手にウトウトと舟を漕いでいた。
「ん……あ……? あれ、ゆきちゃん……?」
マイキーは目をこすりながら、ふにゃっと柔らかい笑顔を浮かべた。
「あのね、眠れなくって……。もしよかったら、少しだけ一緒に遊んでくれないかなって思って……ダメ……?」
申し訳なさそうに耳としっぽをぺこんと下げてお願いするゆきを見て、マイキーは一瞬パチパチとまばたきをした後、ぱっと顔を輝かせた。
「もう、しょうがないなあ!」
マイキーはゲーム機を放り出すと、ベッドから跳ね起きる。
「夜更かし大歓迎! 実は僕も全然眠れなかったんだよねー! ゆきちゃん、ナイスタイミング!」
「ほんと!? よかったぁ……!」
ほっと胸をなで下ろすゆきに、マイキーは「しーっ、あまり大きな声出すとラフィが起きて怒るからね」と、いたずらっぽく人差し指を口にあててニヤリと笑った。
(あの過保護すぎるラファエロに怒られたら一巻の終わりだ、とゆきも慌てて口にチャックをするように小さくうなずく)
「で、何して遊ぶ? 隠れ家でかくれんぼする?」
「ううん、夜だし、静かにできる遊びがいいな。例えば……絵しりとりとか!」
「おっ、それいいね! 頭使うの好きだよー!」
二人はマイキーの部屋のラグの上に、コソコソと忍者のように音を立てないようペタッと座り込んだ。
マイキーがすぐさま引き出しからスケッチブックと色鉛筆のセットを取り出す。
「じゃあ、僕からいくね!」
マイキーがスラスラと描き上げたのは、愛嬌のある丸っこい顔。
「これなーんだ?」
「えっと……スイカ?」
「ぶーっ! ピザでしたー!」
「あ、ピザの耳のとこか! じゃあ、『ざ』だから……『ざりがに』!」
ゆきは色鉛筆を走らせ、ハサミのついた赤い生き物を器用に描き上げる。
マイキーはそれを覗き込んで「おっ、うまいじゃん!」とひそひそ声で褒めてくれた。
「ええと、『に』だから……『忍者』!」
マイキーが描いたのは、頭にハチマキを巻いた、自分そっくりのめちゃくちゃ可愛い忍者の絵だった。
「ふふっ、似てる」
「でしょ? じゃあ次はゆきちゃんの番、『じゃ』だよ!」
夜の静寂に包まれた部屋の中で、スケッチブックを挟んでクスハラと小さく笑い合う二人。
マイキーは、夜中にわざわざ自分の部屋を訪ねてきて「一緒に遊びたい」と言ってくれたことが心底嬉しかった。普段はお世話されることの多いゆきが、自分を遊びに誘ってくれた特別感が、マイキーの胸をポカポカと温めていた。
お互いにペンを走らせ、珍妙な絵に小声でツッコミを入れ合いながら、静かな夜の時間はあっという間に過ぎていく。
やがて、頭を使ったせいか、ゆきの猫耳がパタパタと倒れ、小さくあくびが漏れ始めた。
「……ふぁあ……なんだか、眠くなってきた……」
「あはは、そろそろ限界かな? じゃあ、今日の絵しりとりはここまで!」
マイキーはスケッチブックをパタンと閉じると、自分のベッドからふわふわの毛布を一枚引っ張り出し、ゆきの肩に優しくかけてやった。
「夜更かしに付き合ってくれてありがとう、マイキー。すごく楽しかった」
「ううん、僕こそ! また眠れない夜があったらいつでもおいでよ。僕がいつでも相手してあげるからさ!」
マイキーの太陽のように温かい笑顔を見て、ゆきは安心感に包まれながら、心地よい眠気の中に沈んでいくのだった。
