亀と獣
真夜中を大きく回った時刻。
タートルズの隠れ家の一角にあるマイキーの部屋は、テレビゲームの画面から放たれるネオンカラーの光と、そこかしこに転がるスケートボードやコミック本で、いかにも「秘密基地」といった賑やかな空気に包まれていた。
「あー! 惜しかったぁ! 今のは絶対ゆきちゃんのミスだって!」
「えっ、私悪くないもん! マイキーのジャンプのタイミングがおかしかったんだよ!」
「えへへ、バレた?」
ソファに並んで座り、コントローラーを握りしめてキャッキャと騒いでいた二人だったが、やがて激しいアクションゲームのしすぎでバッテリーが切れたように、パタッと動きを止めた。
「……ふあぁぁ……ねむ……」
ゆきが小さく欠伸をしながら、くたくたになった身体をソファの背もたれに預ける。
人間の頃とは違う猫のミュータントとしての身体は、夜更かしをするとダイレクトに疲労が押し寄せてくる。トロトロとまどろみ始めたゆきの頭を、マイキーが優しくポンポンと叩いた。
「おや、もう限界のご様子ですねぇ。お疲れゆきちゃん!」
「うん……もう動けない……。自分の部屋に戻るの、めちゃくちゃ遠いよぉ……」
ゆきの部屋は廊下の少し離れた場所にある。今から布団に入るまでの移動すら、今のゆきにとっては途方もない冒険のように感じられた。
トロンとした目でマイキーを見上げ、ゆきは思い切って提案したねだるように言った。
「ねえ、マイキー……。もう歩けないから、今日この部屋で一緒に寝てもいい……?」
それを聞いたマイキーは、ぱぁっと顔を輝かせた。
「えっ! ほんとに!? やったぁ! 一緒に寝よう寝よう!」
マイキーは大歓迎とばかりに両手を広げ、自分のベッドをポンポンと叩いた。寂しがり屋で甘えっ子気質な彼にとって、可愛い妹分が「一緒に寝たい」と言ってくれるのはこの上なく嬉しいことだった。
「わぁ、やった……おやすみ、マイキー……」
安心したゆきは、ふにゃふにゃと緩んだ足取りでマイキーのベッドにもぐり込み、ふかふかの毛布に体を潜り込ませた。
――しかし。
いざ横に並んでみると、マイキーはモゾモゾと落ち着かない様子で体勢を何度も変えた。
(……あれ? なんか、思ったより……可愛いぞ?)
すぅすぅと規則正しい寝息を立て始め、すっかり無防備な寝顔で隣に丸まっているゆき。頭の上では黒い猫耳がピクピクと動き、背中ではふさふさの尻尾がパタパタと緩く揺れている。
そのあまりの守ってあげたくなる可愛さに、マイキーの「お兄ちゃんスイッチ」が盛大にカチリと音を立てて入ってしまった。
「……ずるいなぁ、もう」
マイキーはふっと柔らかく微笑むと、自分のベッドから逃げ出さないように(そして何より、自分がこの愛らしさを独り占めしたくて)、ゆきの体をそっと自分の胸元へと引き寄せた。
「うにゃ……?」
寝ぼけた声を出すゆきを包み込むように、マイキーは自分の腕の中で彼女をしっかりと、力強く抱き締める。
亀の甲羅の硬さはあるものの、マイキーの腕や体温は驚くほど優しく、日向ぼっこをしたあとのような心地よい温もりに満ちていた。
「おやすみ、ゆきちゃん。いい夢見てね」
マイキーはゆきの頭にそっとあごを乗せ、彼女が安心して眠れるように背中をトントンと優しくリズムカルに叩いた。
温かい腕の中にすっぽりと収まったゆきは、心地よさのあまりにふにゃりと顔を緩め、マイキーの服の裾をぎゅっと握りしめながら、さらに深く穏やかな眠りへと落ちていく。
二人の静かな寝息だけが響く部屋で、マイキーは幸せを噛み締めるようにゆきをギュッと抱きしめ直しながら、一緒に夢の中へと旅立っていった。
タートルズの隠れ家の一角にあるマイキーの部屋は、テレビゲームの画面から放たれるネオンカラーの光と、そこかしこに転がるスケートボードやコミック本で、いかにも「秘密基地」といった賑やかな空気に包まれていた。
「あー! 惜しかったぁ! 今のは絶対ゆきちゃんのミスだって!」
「えっ、私悪くないもん! マイキーのジャンプのタイミングがおかしかったんだよ!」
「えへへ、バレた?」
ソファに並んで座り、コントローラーを握りしめてキャッキャと騒いでいた二人だったが、やがて激しいアクションゲームのしすぎでバッテリーが切れたように、パタッと動きを止めた。
「……ふあぁぁ……ねむ……」
ゆきが小さく欠伸をしながら、くたくたになった身体をソファの背もたれに預ける。
人間の頃とは違う猫のミュータントとしての身体は、夜更かしをするとダイレクトに疲労が押し寄せてくる。トロトロとまどろみ始めたゆきの頭を、マイキーが優しくポンポンと叩いた。
「おや、もう限界のご様子ですねぇ。お疲れゆきちゃん!」
「うん……もう動けない……。自分の部屋に戻るの、めちゃくちゃ遠いよぉ……」
ゆきの部屋は廊下の少し離れた場所にある。今から布団に入るまでの移動すら、今のゆきにとっては途方もない冒険のように感じられた。
トロンとした目でマイキーを見上げ、ゆきは思い切って提案したねだるように言った。
「ねえ、マイキー……。もう歩けないから、今日この部屋で一緒に寝てもいい……?」
それを聞いたマイキーは、ぱぁっと顔を輝かせた。
「えっ! ほんとに!? やったぁ! 一緒に寝よう寝よう!」
マイキーは大歓迎とばかりに両手を広げ、自分のベッドをポンポンと叩いた。寂しがり屋で甘えっ子気質な彼にとって、可愛い妹分が「一緒に寝たい」と言ってくれるのはこの上なく嬉しいことだった。
「わぁ、やった……おやすみ、マイキー……」
安心したゆきは、ふにゃふにゃと緩んだ足取りでマイキーのベッドにもぐり込み、ふかふかの毛布に体を潜り込ませた。
――しかし。
いざ横に並んでみると、マイキーはモゾモゾと落ち着かない様子で体勢を何度も変えた。
(……あれ? なんか、思ったより……可愛いぞ?)
すぅすぅと規則正しい寝息を立て始め、すっかり無防備な寝顔で隣に丸まっているゆき。頭の上では黒い猫耳がピクピクと動き、背中ではふさふさの尻尾がパタパタと緩く揺れている。
そのあまりの守ってあげたくなる可愛さに、マイキーの「お兄ちゃんスイッチ」が盛大にカチリと音を立てて入ってしまった。
「……ずるいなぁ、もう」
マイキーはふっと柔らかく微笑むと、自分のベッドから逃げ出さないように(そして何より、自分がこの愛らしさを独り占めしたくて)、ゆきの体をそっと自分の胸元へと引き寄せた。
「うにゃ……?」
寝ぼけた声を出すゆきを包み込むように、マイキーは自分の腕の中で彼女をしっかりと、力強く抱き締める。
亀の甲羅の硬さはあるものの、マイキーの腕や体温は驚くほど優しく、日向ぼっこをしたあとのような心地よい温もりに満ちていた。
「おやすみ、ゆきちゃん。いい夢見てね」
マイキーはゆきの頭にそっとあごを乗せ、彼女が安心して眠れるように背中をトントンと優しくリズムカルに叩いた。
温かい腕の中にすっぽりと収まったゆきは、心地よさのあまりにふにゃりと顔を緩め、マイキーの服の裾をぎゅっと握りしめながら、さらに深く穏やかな眠りへと落ちていく。
二人の静かな寝息だけが響く部屋で、マイキーは幸せを噛み締めるようにゆきをギュッと抱きしめ直しながら、一緒に夢の中へと旅立っていった。
